人生は折り返して元の姿に戻る(MGさん/50代女性)

初めてのショートステイ泊での出来事、ついに始まった失禁

はじめてのショートステイ

母のデイサービスデビューは82才の時です。

知らない人とのコミュニケーションが上手くできるか心配しておりましたが、幸いなことに、母はデイサービスに行くことをとても楽しみにしていました。

それから、3か月後くらいに、ケアマネージャーから、「ご家族も体を休める必要があります。時には、ショートステイを利用してみてはいかがですか?」とすすめていただきました。

入院以外で、自宅ではないところに泊まるということがなかったため、心配ではありましたが、デイサービスの時も、私の心配はまったく必要なかったため、まずは週末の一泊でお願いすることにしました。

いつも通っているデイサービスとおなじ事業所のショートステイです。私としては、おなじ事業所ということが安心できるポイントではあったのですが、デイサービスとショートステイは建物もスタッフもすべて異なります。母にとっては、そのことが少し不安に感じたようでした。

母にショートステイの説明はしたのですが、理解はしていないようでした。当日、お迎えにきて頂いた時も、母は、デイサービスのスタッフの方と思って、ドアがあいた瞬間に、いつものように「おはよー!」と元気よく言ったのです。

デイサービスのスタッフの方には、すっかり慣れて、母はほぼ上から目線の話し方をしていました。でも、顔を見ると知らない人だったので、母の頭は “?状態” になっていたようでした。

「よろしくお願いします。行きましょうかね」とスタッフの方が、優しく手をとってくださったのを受けて、母が「ありがとうございます。」と急に敬語になったことを覚えています。

 

知らない人・場所での戸惑い、そして妄想

ショートステイの連絡帳に、「昼すぎ頃から、“娘から電話はあった?” “娘はまだ迎えに来ないだろうか” と帰る時間を心配されている様子でしたので、その都度、相談員(ショートステイの)が、“自宅まで送っていきますので大丈夫ですよ“ と伝えると、安心されていたようでした。」と書いてありました。

デイサービスは夕方には帰宅するため、いつまでも家に帰らないことに戸惑いがあったのだと思います。

どんな感じだったのか、ショートステイから帰宅した母に話を聞きました。「みんな、良くしてくれた」と言っていたのですが、急に、おどろくような話をしだしたのです。

「二人部屋だったけど、おなじ部屋の人が、急に体調が悪くなって、たぶん亡くなったと思う。その人の具合が悪くなる少し前まで私と話をしていた。その人が笑っていた顔が頭から離れない。

その人の娘だと思うけど、“タカコ、タカコ” と5~6回叫んだかと思ったら、いびきをかきだしたので、恐くなって人を呼んだ。たぶんそのまま亡くなったと思う。あんなふうに苦しまないで死ねるならいいね」と。母の話は、とても具体的でした。

一応、ショートステイスタッフの方に確認したのですが、そんな事実はありませんでした

母の妄想だったのでしょうか。妄想は、あんなに具体的なものなのでしょうか。今でも信じられません。母の妄想は、この時だけではありません。

デイサービスやショートステイには、仕事に行っていると思い込んでいました。「自分より年上の人がいて、流れ作業で仕事をしなければいけないのに、その人の手がうまく動かないから仕事が遅くなる」と言ったことがあります。

もちろん母より年上の方もいらっしゃいます。母は自分の老いた姿を理解していないので、もしかしたら全員が自分より年上に見えたかもしれません。流れ作業というのは、おそらく同じテーブルで手芸教室や陶芸教室などをしている状況が、その妄想になったのではないかと思います。

朝から、デイサービスのお迎えを待っている様子で、「今日は遅いね」 と言うので、「今日は行く日じゃないからお迎えには来ないよ」 と言うと、「私はフリーだから、あそこに行くとは限らない!」と言い返してきたこともあります。また、「泊まりで仕事する時はやっぱりきつい」 と言うこともありました。これは、ショートステイのことだと思います。

この頃の母は、まだまだプライドが高く、私に何か言われと必死に言い返していました。

デイサービスは、朝、お迎えに来て、当日の夕方16時頃に送ってくださいます。私は、日中仕事に集中することが可能です。ショートステイは、朝お迎えに来て、翌日の夕方送ってくださいます。ショートステイに母が行く日の当日の夜、翌日の朝、私は解放されました

一度利用した後は、「今日は、お泊りだよ」と言うと、母も理解して、抵抗もないようでしたので、主に週末に利用しました。とてもありがたく思います。

(参考:ショートステイ

 

はじめて母の尿失禁

デイサービスの連絡帳に「ズボンを1枚貸し出しています。最近、尿臭があり、本日は失禁がありました。ご本人様は”何かこぼした”と仰っています。ご自宅ではいかがですか?失礼のないようお声かけさせて頂いています。 」と書いてありました。

自宅では、尿失禁を目撃したことはなく、度々自分で下着やズボンを着替え、洗濯していたので、おそらくその時がそうだったのだと思います。この連絡を受けたことで、初めて母の尿失禁を自覚しました。

 

尿失禁のごまかしから怒りへ

デイサービスから尿失禁の連絡を受け、帰宅した母に確認しようと部屋に行くと、既にパジャマのズボンに着替えており、借りたズボンは見当たりませんでした。

ここからは、その時の母と私の会話です。ごまかしから始まり、私に追求されたことで、感情が高ぶり、怒りへと変わっていきます。

私:「お茶をこぼしたからズボンを借りたの?」
母:「うん。お茶をこぼしたから」
私:「明日返さないといけないけど、どこにある?」
母:「黒のズボンだったけど、その辺にない?」
私:「ないよ。洗濯機かな?」
母:「お茶はこぼしたけど、拭いたからズボンは借りてないと思う」
私:「でもさっき黒のズボンって言ったよね?」
母:「借りたのかな・・いや、人の服を借りたりしてない!」
私:「連絡帳にズボンを貸し出しているから次回返却お願いしますって書いてあるよ」
母:「誰がそんなこと言ってるわけ?!」
私:「誰かはわからないけど、お茶をこぼしてズボンが濡れたから貸してくれたと思うよ」
母:「人のズボンを借りなくてもいいし、借りた記憶もない。そんなに私が人のズボンを借りたと言うなら、お金を払ってくる!人のズボンを盗んだりしない!」
私:「盗んだとか言わないの。誰もそんなこと言ってないでしょ」
母:「同じことでしょ!そんな記憶はまったくないのに、そこまで言うなら、ここにきて家中、探せばいい!」

私の話し方が、母を追い込んでしまった時の会話です。この時は、さすがに私も頭に来て、この会話を記録していました。

もともとは、母が、人のズボンをはいてきたと思い込み、それを隠そうとして、すぐに自分のパジャマに着替えたのだと思います。そして、私から人のズボンをはいてきたことを責められていると思い込み、怒り(逆切れ)になったのだと思います。

翌日には、そのことも忘れ、借りたズボンは部屋の隅に放置されていました。

 

着替えた記憶もない母

月1回の通院日。母が車に乗り、しばらくして尿臭を感じました。

母の尿失禁について、まだここまでひどくないと思っていたので、着替えも準備していませんでした。匂いが、かなりきつかったので、途中でズボンと下着を購入して、母をトイレに連れて行き、傷つけないように、「今から病院に行くけど、ズボンが汚れていたから、これに着替えようね」と声をかけました。

母も濡れて気持ちが悪かったのか、特に何も言わず素直に着替えていました。

病院で診察待ちをしている時、自分のズボンを見て、「これ、私のズボンじゃない」 と言い出しました。尿失禁はもとより、店のトイレで着替えたことも、まったく記憶していなかったのです。

 

便失禁を初めて目の当たりにしたとき

尿失禁はまだ良いほうでした。ついに、便失禁を目の当たりにすることになりました。

いつも、母をデイサービスに送り出したあと母の部屋の掃除をするのですが、その日も、部屋の隅に、パジャマや下着が放置してあったので、そのまま洗濯しました。洗濯が終わり、パジャマのズボンを干している時に、ズボンの中から、何かがポトンと落ちてきたのです。

私は瞬間的に叫びました。それは、便のかたまりだったのです。

トイレに間に合わないのか、トイレに行く意思がないのか、便失禁に気づかないのか、気づいているけど忘れてしまうのか、母がどんな感じなのか想像もできません。

失禁まではいかなくても、母がトイレで便をした時は、必ず汚れています。便座・トイレットペーパフォルダー・手拭きタオル・手洗い箇所。汚したということがわかっている時もあるようで、掃除した(ような)あとがありました。

おそらく、汚した箇所を掃除しようとして手が汚れ、その手で他の場所を触ることであちこちについていたのだと思います。その姿を想像すると可哀そうになります。どんな気持ちで掃除していたのだろう、と。

汚れているだけではなく、トイレの床やマットの上に便が落ちていることもありました。間に合わなかったのだと思います。そして、落ちていることにも気が付かなかったのだと思います。

母の部屋のテーブルの上も、便を拭いた後がありました。足を痛がっていた母は、着替える時にいつもテーブルに座っていました。その時もその状態で着替えていて、テーブルを汚してしまったのだと思います。

 

一番ショックだったできごと

その日は、嫌な予感がしていました。

洗濯しているのを忘れていたようで、洗濯機に母の服が入っていました。干そうと思い、取り出していた時、何とも言えない “むにゅっ” としたものをつかみました。

それは、たくさんの便のかたまりでした。

服や下着といっしょに、そのまま洗濯機に入れたようです。

以前、母の洗濯物を干している時、パジャマのズボンから便が落ちてきたことがあり、その時もかなりショックを受けましたが、今回は、それを直接握ってしまったことが更なるショックとなり、力が抜けてしまいました。

便と気付いたときの驚きと、握ってしまったショックと、こんなこともわからないようになってしまった母を可哀そうに思う気持ちと、いろいろな感情が入り乱れました。

可能な限り洗濯機を手で掃除して、洗濯機の洗浄機能も使って掃除しましたが、その日は、他の洗濯物を洗う気になれず、何度も空の状態で洗濯機を回しました。

 

母の羞恥心

デイサービス連絡帳に「排泄は自立されており、トイレの鍵を閉められるため確認できませんでした。」と書いてありました。デイサービスでは、利用者の方のトイレにはだいたい付き添われて、尿や便の状態を確認されているようです。

この頃の母には、まだ羞恥心があり、自分がトイレに入っている時に、人が立ち会うということを受け入れられなかったのだと思います。

 

ネコの粗相

我が家にはネコがいます。過去あまりなかったのですが、家の中でたまに粗相するようになりました。何が原因なのか悩んでいました。

もしかしたら、母の尿臭に反応していたのかもしれません。

母の部屋の掃除は、デイサービスの時は、掃除機をかけるくらいでしたが、ショートステイ(泊)の時は、消臭をメインに掃除していました。

ネコの様子を見ていると、母が、ショートステイに行っている時は、ほぼ粗相がないのです。

そんな状況で、一時期は、母の部屋の悪臭とネコの粗相で、家の中がとんでもない状態になった時がありました。

 

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