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人生は折り返して元の姿に戻る(MGさん/50代女性)

母が季節がわからなくなってきた頃、自宅のモミジが紅くならなくなった

初めて聞いた母の歌

デイサービスでは、季節ごとのイベントが、たくさん開催されます。

季節を感じる

それは、私たちにとっては、当たり前のことですが、高齢者の皆さんにとっては、とても大切なことだと思います。デイサービスを通じて私が意識したことのひとつです。

正直、デイサービスで、ここまでのイベントを開催いただけるというのは、私の想像をはるかに超えていました。

当時、82歳の母が体験した代表的な秋のイベントは、「敬老の日」「運動会」「コスモス見学」でした。

「本日は敬老会があり、ハーモニカ演奏と歌がありました。歌がお好きですので、大きな声が出て、とても生き生きされていました。」これは、デイサービスの連絡帳に書いてあった内容です。

私は、ここでも母の以外な一面を知ることになります。

じつは、母の歌を一度も聞いたことがないのです。鼻歌さえも記憶にありません。その母が“大きな声で歌った”それは、信じられないことでした。

そこで私は「今日、ハーモニカの演奏や歌があったの?」と母に聞いてみました。ハーモニカは記憶が薄かったようですが、歌については強く反応しました。

「うん。懐かしい曲を歌っていた。」と言う母に「どんな歌だった?」と聞くと、突然、母が、鼻歌を口ずさんだのです。それは、私が生まれてはじめて、母の歌を聞いた瞬間でした。

そのメロディは、何となく聞いたことがありましたが、曲名まではわかりませんでした。おそらく、母の青春時代の歌だったと思います。

“歌が下手だから歌わないのかな”と勝手に思っていた私でしたが、その鼻歌は音程もしっかりしていて、とても上手でした。

 

ものまねでおしゃべりするぬいぐるみを母にプレゼント

敬老の日のプレゼントとしてぬいぐるみを準備しました。話した言葉を、動きながら、そのままオウム返しするぬいぐるみです。

ポコポコ動きながら話すので私は“ポコちゃん”と名付けたのですが、母はなぜか“ミーコ”と呼びます。

過去小鳥を飼っていたことがあります。母に言わせると、小鳥はすべて「ピーコ」ネコはすべて「ミーコ」なのです。

ポコちゃんは、一応ワンちゃんなのですが、母には、ネコに見えたのでしょうか。ネコバージョンもあったので、それならネコの方が良かったかな?と思った私です。でも、結果的には、ネコでもイヌでも可愛いから関係ないようでした。

受け取ってすぐは、母が何かを話すと、そのまま言い返すので、かなり驚いていました。しくみがわからず“どうなっているのか?なぜ同じことをしゃべるのか?”母の頭の中で小さなパニックがおきていました。

それでも、気にいったらしく、いろいろとたくさん話しかけ「上手ね~」と言いながら目を細める母がいました。

お話ができるのなら、歌も歌えるかもしれないと思い、近くで流してみました。すると、ポコちゃんは、少しだけ遅れながら、とても上手に歌いだしたのです。

とくに、演歌を流した時のポコちゃんは、コブシ回しがとても上手で、それがおかしくて母と大笑いしたことがあります。

ポコちゃんとの会話を楽しみにしていた母。ある日、デイサービスから帰宅した時、ポコちゃんを見て「ミーコただいま!」と元気よく言いました。当然、ポコちゃんは「ミーコただいま!」と返します。

すると母は「ただいまじゃないでしょう。お帰りでしょう。」と言うのです。そのままポコちゃんが返すと、「そうそう、帰ってきたら、ただいまじゃなくて、お帰りだよ」と母がまた言います。

それからも、母とポコちゃんの会話は、しばらく止まりませんでした。

そんなポコちゃんは、話すぎたのか、電池のフタが壊れて、おしゃべりができなくなりました。テープでフタを止めてみましたが、やはり話をしてくれません。それでも母は、しゃべらないポコちゃんにいつも話しかけていたのです。

さみしそうにしている母を見て、私はもうひとつ購入しました。おなじ物だから、そっと入れ替えたら母にはわからないだろうと思っていたのです。

二代目ポコちゃんがやってきました。すると、驚いたことに、初代ポコちゃんが急に話しだしたのです。初代ポコちゃんも、母といっしょにいたかったのでしょうか。

仕方なく、母に2つのポコちゃんを見せました。それを見て母は「あらー!ミーコは双子だったね」と言ったのです。

この後、介護施設への入所や入院を繰り返す母ですが、母がどこにいても、双子のポコちゃんはついていきます。母も、自宅、介護施設、病院と短期間で環境が変わる中、ポコちゃんが見えると安心するようです。現在も入院中の母を双子のポコちゃんが見守っています。

 

利用者の方たちのために考えられた、デイサービスの運動会

デイサービスで運動会が開催されると聞いた時は“高齢者だけなのに、運動会なんてできるのだろうか・・どんな競技があるのだろう・・”私の頭で疑問がいっぱいでした。

まず、運動会の準備として、“旗”なども母たちが作ったようです。

「本日は、月行事の運動会に向けての旗作りに参加して頂いています。熱心に取り組んで頂きました。笑顔多く、たくさん笑って過ごされていました。」これは、デイサービス連絡帳の内容です。

このように毎回、細かく伝えていただけるので、母の様子がよくわかり、とても安心です。

運動会当日、残念ながら私は参加できなかったのですが、後日、スタッフの方に運動会の様子を直接お聞きました。チームのハチマキをつけ、準備体操もして、さまざまな競技に参加したようでした。

(たま入れ競争)
高齢者の競技ですので、上を向いてボールを投げることは危険です。また、落ちてくるボールも危ないです。そのためデイサービスでは、ダンボールの箱が通路をゆっくり通過し、通路の両側にスタンバイする母たちが、いっせいにその箱を目掛けてボールを入れるという方法でチームごとに競争するそうです。

(風船わり)
この競技も、風船が割れる音を怖がるのではないかと思ったのですが、以外にも皆さん楽しんでいらっしゃったそうです。母たちが風船を持って座っている車椅子を、スタッフの方が先で待っている別のスタッフのところまで押していきます。風船を受け取ったスタッフは椅子に座り、お尻で風船を割ります。割れたら次の人へバトンタッチと言う競技だそうです。

(障害物競争)
どんな障害物競争なのか、とても興味がありました。空き缶→ダンボール→空き缶→ダンボールと積み重ねてあり、その中からそっと空き缶をとると言う競技だそうです。緊張しながらも、皆さんとても楽しんでいらっしゃったそうです。

(くす玉わり)
この競技も高いところを目掛けてボールを投げるので、難しいのではないかと思ったのですが、手が届くくらいの低い位置にくす玉があるらしく、特に母は、必死になってボールを投げていたそうです。

(魚釣り競争)
デイサービススタッフの皆さんが、竿と魚を手作りされたそうです。両方に磁石がついていて、母も夢中になって釣っていたそうです。

(輪投げ)
これは普通に、立ったままの人や車椅子に座った方も、皆さん楽しんで、どんどん投げていらっしゃったそうです。なんと踊りもあったそうです。走る競技はないにしても、それ以外は、ほぼ本当の運動会と同じでした。

どの競技も、利用者の方たちのために、安全第一に、そして皆さんが楽しまれるように考えられていました

“どんな競技ができるのか”まったく想像できなかった私は、この話を聞いて、頭が下がる思いでした。“高齢者だから難しいだろう“と思い込むのは、いけないことだと悟りました。

次回は、必ず私も参加して写真もたくさん撮りたいと思っていたのですが、母の現在の状態では、今後、運動会に参加することは難しいかもしれません。

 

遠足気分のコスモス見学

コスモス見学に連れて行ってくれました。事前にデイサービスから連絡があり、「当日は帰りにショッピングモールに寄る予定なので、現金を少し持参してください」とのことでした。

花が好きな母は、とても楽しかったらしく、帰宅後「花が、とてもたくさん咲いていたよ!」と目を輝かせて話してくれました。

「何の花だった?」と一応聞いてみたのですが、コスモスと言うのは、わからなかったようです。

ショッピングセンターで、母はミカンを買ったようで、持ち帰り、パクパク食べていました。ソフトクリームも食べたそうです。血糖値が気になりましたが、ここでも多めにみました。

まるで、遠足に行ったような感じです。

 

母が支配人と呼ぶ男性スタッフの結婚

デイサービスの中で、母がいちばん好きなスタッフ(男性)がいらっしゃいます。母は、その方を支配人と呼びます(支配人と思いこんでいます)

毎月、自宅に来られるケアマネージャーから「支配人(ケアマネージャーも私もそう呼んでいます)が結婚されますよ!」と聞きました。

それを聞いて、母は「あら~おめでたいことですね」と言っていました。

そこで私はひらめいたのです。

デイサービスに行くようになってから、母の趣味は塗り絵になりました。私は、サイトで“ウエディングドレスを着た新婦と新婦に寄り添う新郎”の塗り絵用の紙面を探しました。そして「支配人が結婚されるなら、これをプレゼントしたら喜ばれると思うよ」と言って母に渡しました。

母は「そうだね!」とはりきり、孫がプレゼントしてくれた色エンピツで、すぐに塗り始めたのです。とても上手にできました。

翌日、デイサービスからお迎えに来てくれたドライバーさんに本人に渡していただくようお願いしました。

当日の夕方、支配人から直接電話がありました。私が思っていた以上に感動されているようでした。

その後、結婚式があり、新居に移られた支配人から、また連絡があったのです。結婚式ではウエルカムボードに母の塗り絵も飾られたそうです。新居では、玄関にその塗り絵が飾ってあるそうです。

母は、そのことを聞いて「喜んでもらえてよかったね」と素直に言っていました。ちょっとした思い付きでしたが、そこまで喜んでいただいたことに私が感動してしまいました。

 

素直にドリル(脳トレ)をする母

これも驚いたのですが、デイサービスにいる間、母は、ドリルの問題を解くことがあります

小学生が、テスト結果を親に見せるように、母が持ってかえってくる用紙には、点数までは書いてないものの、母の解答にスタッフの方がつけられた〇や花〇があります。“間違い探し”“計算問題”“漢字の読み書き”など、種類はたくさんあるようです。いずれも脳のトレーニングです。

それにしても、母がそのようなことを素直にするとは・・・。自宅では、まず難しいと思います。デイサービスだからできることなのかもしれません。

 

母の認知力の低下とともに、自宅のモミジが紅くならなくなった不思議

台所の窓からモミジが見えます。秋になると紅葉がとても鮮やかです。

この頃の母は、何かにつかまりながらゆっくり歩いていましたが、同じ位置に立ったままの状態であれば、食事の支度も何とか出来ました

モミジが紅く色づいてくると、母が台所に立つたびに「眺めがいいね。もう秋だね。」とよく言っていました。

モミジを1枚とってきて、「ほらきれいだよ」と母に見せたことがあります。母が「ほんとうね」と言いながら眺めているとき、イヌがモミジに興味をもってクンクンしたのです。

イヌの頭にモミジを置いて「ほら見てごらん。可愛いよ。」と言う母。本当に可愛くて思わず写真をとったことがあります。

母はだんだんと、曜日がわからなくなり、日にちがわからなくなり、月が、年が、季節が、そして現在は、何もわからなくなりました

今思えば、母が季節をわからなくなってきた頃から、モミジも紅くなることなく冬を迎えるようになりました。

モミジが「お母さん、もう秋を知らせなくてもいいよね」と言っているようです。

偶然かもしれませんが、あれから、モミジの紅葉を見ることはありません。とても不思議な出来事です。