認知症の中核症状1(記憶障害)
認知症の中核症状1(記憶障害)
認知症(旧痴呆症)の症状は、大きく2つに分けることができます。認知症の人すべてに現れる「中核症状」と、現れるかどうかには個人差がある「周辺症状」です。
中核症状は脳に病変があるために現れるものですが、周辺症状は、中核症状によって不安になったり混乱したりするために出てくる症状で、認知症の進行の段階によって症状も変化します。
まず、ここでは中核症状についてご紹介します。中核症状は、脳の神経細胞が破壊されることにより、その細胞が担っていた機能が低下して起こるもので、いくつもの症状が互いに関連して起こります。そして、認知症の人すべてにほぼ例外なく現れます。中核症状のそれぞれをみていきましょう。
- 記憶障害(物忘れ)
- 見当識障害
- 理解力・判断力の障害
- 性格変化(人格変化)
- 高次中枢機能障害
- 実行機能障害
記憶をすべて失ってしまうのかもご覧下さい。
記憶障害
記憶は、以下の3つの段階で成り立っています。
- 記銘・・・新しい経験を受け入れ、それを覚え込むこと
- 把持(はじ)・貯蔵・・・一度記憶したことが潜在的に残っていること・保存しておくこと
- 再生・想起・・・経験内容を再現すること・情報を思い出すこと
認知症の記憶障害ではすべての段階が障害され、特に記銘の段階が大きく障害されます。認知症の記憶障害には4つの特徴があります。
- 新しいことほど、覚えられない
記銘する力が最も大きく障害されるので、新しいことは覚えられなくなります。たった今起きたことも即座に忘れますから、同じことを何度でも繰り返し聞いたり言ったりすることがあります。 - 経験したことを、そっくりそのまま忘れる
例えば、誰にでも前日の食事の内容を思い出せない場合はありますが、認知症の人は、食事をしたことそのものを忘れてしまいます。ですから、食事をしたにもかかわらず「食べさせてくれない」などと言って家族を困惑させたりすることがあるのです。 - 過去の記憶に基づいて生きている
認知症の人は、現在の新しいことから忘れていき、だんだんと過去に遡ります。現在から数年から数十年前までの間のことを、すっかり忘れてしまうこともあります。忘れずに残っている記憶の時点が「現在の自分」ということになり、例えば実際には80歳の人でも、自分で30歳だと言ったりすることもあります。仕事を引退して何年も過ぎているのに出勤しようとするような場合は、引退する前まで記憶が遡っているということになります。 - 体で覚えた技能は、よく覚えている
体で覚えた技能など、無意識に覚えて潜在的に残っている記憶という意味で「潜在記憶」と呼ぶことがあります。例えば縫物、自転車の運転、楽器の演奏などです。これに対し、頭で覚えた記憶のことを「顕在記憶」や「陳述記憶」と呼ぶことがあります。認知症の人は、頭で覚えたことは忘れていても、自転車には乗れたり、上手に楽器の演奏ができることがあります。