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音楽と動作学習で認知症を改善する研究

音楽と動作学習で認知症を改善する研究

認知症の予防や改善のため、音楽が使われることがよくあるようです。どんな効果が期待できるのか、研究結果等も挙げて見ていきましょう。

イギリスでは、音楽により脳の「弓状束」が変化することが明らかに

好きな音楽を聴いて、楽しい気分になったり癒されたりすることはよくありますが、音楽を聴いて脳そのものにも変化が現れることが明らかになりました。

イギリスのムーア博士ら(エジンバラ大学)が2017年に発表した研究では、音楽が動作学習に与える影響を調べました。

この研究で対象とされたのは、認知症の人ではなく18歳から30歳までの健常な人で、手の指に番号をつけて、指示された番号の指を正確に速く動かすという動作学習が課されました。

「動作学習に音楽を使うグループ」と「使わないグループ」に分けて行い、1ヵ月の訓練期間の後、両者の脳の画像解析も行われました。

その結果、音楽を使って動作学習を行ったグループにのみ、明らかな脳の変化が認められたということです。

脳の中には、前後にある言語中枢を結ぶ「弓状束」という部分がありますが、音楽を使って動作学習を行ったグループではこの部分が密になっていて、脳の神経細胞のネットワークが活性化したことが明らかになったのです。

 

音楽体操が認知症の進行を予防

また、三重大学大学院の佐藤准教授らが行った、認知症の人を対象とした研究結果も報告されています。

この研究では、三重県内の2つの町に住んでいる軽度から中等度の認知症である62人(平均年齢87.2歳)のうち半数の31人が、半年にわたって音楽に合わせて行う体操に参加し、あとの31人は脳トレ(携帯ゲームやドリル等)だけに参加しました。

体操に使用された音楽はヤマハ音楽振興会が制作したポップス調のもので、参加者は音楽に合わせて屈伸や足踏み等の体操を行ったそうです。

その結果、日常生活で必要な動作(食事・入浴・着替え等)が半年後も維持できていたのは、音楽体操を行った31人のグループの方で、脳トレのグループでは低下が見られたとのことです。

佐藤准教授は、ただ体を動かすのではなく音楽に合わせるという複雑な動作が、認知症の進行を予防し改善に効果を示したのではないかと見ているそうです。

佐藤准教授は三重大学病院で認知症の人の音楽療法も行っていて、合唱と音楽の鑑賞をとり入れています。合唱は、自分ひとりで歌うのとは異なり、伴奏や他者の声に合わせることが必要である上、曲のリズムやテンポも考える必要があるため、高度な知的活動として認知症の改善に有効ではないかと佐藤准教授は話しています。

 

 

音楽を楽しみながら脳を活性化させる

音楽を聴くと、音の高さやリズム、メロディーが脳の色々な部分から取り込まれるそうです。

歌ったり楽器を演奏したりする場合は、脳から喉や舌、手を動かす命令を伝える必要がありますから、音楽によって脳が活性化するのは自然なことと考えられます。

脳の神経細胞は、その多くが手の指先につながっているそうですから、歌う時には、両手の指先を合わせてリズムをとったり、カスタネットやタンバリン等の手軽な打楽器をたたいたりすると、脳がより活性化するそうです。

歌うことで声を出すので、呼吸機能も強くなって誤嚥性肺炎が予防できるとも言われています。

軽度の認知症である80代の女性が歌や楽器の演奏を継続して行ったところ、脳の前頭葉と後頭葉の糖代謝が改善したことが画像で明らかになったという報告もあります(東京都健康長寿医療センター 金丸和富氏)。

また、リハビリや体操を行う時に音楽を流している施設や医療機関もあるようですが、ただ黙々と単調な動作を繰り返すよりも、気持ちよく楽しく取り組めるようです。

認知症の人は、記憶することには問題があっても、楽しさやうれしさを感じる感情は失うことなく持ち続けています。周りの人とのコミュニケーションが取りにくい状態になっていても、音楽が流れると反応する人もあるそうです。

色々な場面に音楽があれば、穏やかで楽しい時間を過ごすことができるのではないでしょうか。

 

なじみの音楽や歌で記憶が蘇り、周辺症状が改善

認知症の人には遠い昔の記憶が残っていることがよく知られています。懐かしい音楽に触れることで昔の記憶が呼び起こされて、脳の記憶を司る部分が活性化する効果も期待できるのです。

じみがある音楽を聴いたり歌を歌ったりしたところ、表情が乏しくなっていた認知症の人に笑顔が戻ったり、口数が少なくなっていた人が会話をするようになったりした例も、多くあるようです。

若かった頃の自分の姿や楽しかったことを思い出し、自分自身を取り戻すことで安心感が持てるのではないかとも言われています。

これは、認知症の音楽療法として、iPodで好きな歌(パーソナルソング)を聞く試みを行った動画です。

脳が活性化して気持ちも落ち着くせいかもしれませんが、音楽により、認知症で問題になる周辺症状(徘徊、暴力、興奮、せん妄、不眠、うつ、幻覚等)が改善し、介護者の負担が軽減されることもあるとのことです。

認知症の人の生活の場では、音楽をごく身近なものと考えて、本人も介護者もごく自然に楽しめるような工夫ができればいいですね。

色々な場面でさり気なく音楽を流してみたり、なじみの歌を口ずさんでみたりすることで、ただ楽しむだけではなく認知症の進行の予防や改善の効果も期待できそうです。

 

 

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