認知症初期の接し方2(具体例)
認知症初期の接し方2(具体例)
認知症初期の接し方の具体例を見ていってみましょう。
(フレディ松川先生の研究・書籍を参考にしています)
接し方の具体例
■ 同じ話を何度も話す
同じ話を何度も話す症状は認知症初期の頃に大変よく見られ、単なる老化による物忘れと見分けられないことも多いようです。
こんなときの周囲の対応として、話を聞かない、相手にしない、さらにはうるさがったりうっとうしがったりすると、本人は傷つき、疎外感を感じ、やがて認知症が進行する可能性があるといいます。
【接し方】
本人の話を聞いてあげるのがよいと言われていても、同じ話の繰り返しで家族のほうも疲れてしまうため、あまり真に受けず、全般に穏やかに対応することが大切なようです。
体験談[同じことを何度も言う]
症例[同じことを何度も言う]
■ 「物を盗られた、あんたがやったのだろう」などと言う
「物を盗られた、あんたがやったのだろう」などと、いわれのないことを訴えられることがありますが、これを「物盗られ妄想」と言います。
特に本人の世話を見たり介護する人や一番近い人が、本人にありもしない疑いをかけられて文句を言われることが多いようです。
本人が人間的付き合いも認識も狭くなっていることもあり、ごく身近な家族に対して言うことが多いようですが、言われた方はやりきれない症状です。身近な人間だから本人が気を許してそうしてしまう、とも言われています。
日頃細かいことまで介助している家族にとっては、いったいなんのために助けているのかわからなくなって、怒りがこみ上げてくることがあるでしょう。しかし、真に受けて怒ったり否定したりして感情を刺激すると、さらに悪化するケースがほとんどのようです。
【接し方】
推奨される対処法としては、「それは大変、後で一緒に探しましょう」などといったん同調しておく方法です。とにかくそうして本人の気持ちを落ち着かせれば、そのうち聞いたこと自体を忘れてしまい、忘れればおおよそ一緒に探す必要は無いことが多いようです。
いわばとぼけて嘘をつくと言えばそうですが、そもそも本人の訴えが現実とは異なることが多いので、家族もいい意味で狸になってうまく対応することも必要なようです。結果的に本人の気持ちも尊重するのですから。
■ ご飯をこぼしたり部屋を散らかしっぱなしにする
それまでとは性格や身なり、生活の様子が変わってきたら、認知症の始まりかもしれないという疑いがあるようです。
例えば、おしゃれだった人が身なりに無頓着になる、几帳面に片付けていた人が散らかしっぱなしにする、などがその例です。
そんなときに頭ごなしに叱ったり怒ったりすると、本人は自尊心や自信を失い、落ち込んでいくことになります。
まじめな人ほどプライドがあると思われるので、プライドを傷つけて落ち込ませないようにすることが大切だと言われています。
【接し方】
怒らない、教えない、命令しない、ということを肝に銘じて接することが、それ以上悪化させないことにつながるといいます。もちろん、片付けられなかったり散らかすことは直らないかもしれませんが、それに対して怒ることで、より状況を悪化させることは避けたほうがよいようです。
失敗して一番「まずい」と思っているのは、おそらく本人です。その時にさらに他人に責められると、「怒られた」「責められた」という気持ちだけが残ってしまうことが多いようです。
■ 夕方になると「家に帰る」と言う
そこに住んでいるのに、夕方になると「家に帰る」と言いだす症状があります。「夕暮れ症候群」とも呼ばれているようです。心理的要因としては「その場所にいづらい」「以前の自分の場所に帰りたい」などという気持ちがベースにあるのではないかと言われています。
こんなとき、「勝手に出て行っては危ない」と思って、玄関に鍵をかけて出られなくするのはよくないと言われています。本人は、閉じ込められたと思ってさらに恐怖心を抱き、追い込まれかねないためです。
【接し方】
対処法の例としては、「じゃあ一緒に行こう」といっていったん出かけるふりをして、一回りして帰ってくる方法です。本人はただ同じ場所に戻ったということを忘れていて、そのまま素直に家に帰ることが多いようです。
ただし、そういった対応をする人手や余裕がないこともあり、また目を放した隙に徘徊して危険な場所に立ち入ったり行方不明になる可能性もあるので、ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談して対策を練る必要があると思われます。
ちなみに、どこかに行こうとする場合には本人なりの理由があり、ただ呆然とさまよう「徘徊」とは違う場合もあるようです。その「本人にとっての理由」が何なのか、それを打ち明けてもらって共感するなどの方法がとれたら、危険防止の糸口が見つかるかもしれませんね。
■ 本人が一人では心配だからと、むやみに家族が引き取る
認知症の疑いがあったら、認知症の症状が出始めてきたら、息子(娘)などの家族は心配して、自分たちの下に引き取ろうとすることがあります。もちろん本人が心配でそうするのですが、実はこれをむやみにこれを行なうことは危険なようです。
というのも、引っ越したことによる環境の変化で、それまで馴染んでいた知友人と会えなくなったり、今まで気軽に出かけていた先がなくなり部屋にこもりがちになったり、これまでの慣れ親しんだ環境でのリラックスした自由な生活が奪われると、ストレスを呼び、孤独にさいなまれ、認知症が進行したり悪化することがよくあるようです。
若い頃よりも対応力が落ちてきて、体力・精神力ともに衰えてくる高齢者に対して、生活環境に大きな変化を与えることは、危険な場合があるのです。
【接し方】
本人の生活に一部ヘルパーさんなどの介助を入れたりして、これまでどおりの本人の生活ペースをできるだけ継続できる形を模索したり、大きな環境の変化が起こらないようにすることも大事なようです。