自治体や企業の認知症への理解を啓発する動き、見守る動き

認知症の人の増加に伴い、地域での見守りはますます重要になってきています。

全国の自治体の中には、住民に認知症への理解を啓発し、認知症の人が安心して暮らせる町づくりをめざす取り組みを始める所が多くなってきました。

また、地域の住民が利用する店や金融機関をはじめとする企業においても、同じような動きが出てきています。どのような取り組みがあるか、見ていきましょう。

東京都内では、「地域見守り名簿」やメールを活用しての見守り

東京都では2013年現在で、見守りや支援を必要とする認知症の高齢者が約27万人に達しているそうで、都内に住む65歳以上の人のうち1割に該当します。そして、2025年には約44万人に増加する見込みであり、地域での見守り体制の強化が求められています。

町会や自治会の活動が活発である江戸川区では、今年の5月より「地域見守り名簿」の配布を始め、見守りに活用しているそうです。

この名簿には、ひとり暮らしをしている75歳以上の人や認知症の人、肢体・視覚・聴覚のいずれかに重い障害がある人(約4万人)のうち、1万5千人の人が掲載されているとのことです。もちろん、個人情報の取り扱いの問題があるため、名簿は本人の同意のもとに作成され、江戸川区が名簿の配布先である町会と協定を結ぶことで、個人情報の提供を行っているそうです。

また、文京区ではメールを活用して見守りを行っているそうです。認知症の人が行方不明になったら、家族の依頼により、区が委託した業者が登録された企業や区民にメールを一斉送信し、受信した人が捜索に協力するという方法です。登録している企業と区民は460件余りで、この見守り方法により、これまで2人が無事に発見されたとのことです。

渋谷区では、慶應義塾大学、専修大学、青山学院大学と連携して、学生からの提案を求める取り組みを行っています。 学生たちが実際に認知症の人と接する機会を持ち、地域での生活を続けるための解決策等を調査し、考えていくというものです。

 

地方都市でも「大牟田モデル」をはじめ色々な取り組み

認知症の人は徘徊することが少なくありませんが、そのような人を救うための先進的なモデルとして、福岡県大牟田市の「大牟田モデル」があります。このサイトでも詳しく紹介していますが、全国平均よりもかなり高齢化率が高い大牟田市ならではの、他の自治体のお手本とも言うべき取り組みのようです。

大牟田市モデルでは「高齢者等SOSネットワーク」が構築されていて、まさに地域が一丸となった見守りが行われています。しかも、実際に捜索願が出された場合を想定した模擬訓練まで行って、迅速で確実な高齢者の保護をめざしているそうです。

大牟田モデルのように「人」を介した見守りだけでなく、自治体によっては、端末システムやスマートフォン等を活用した見守りを行っているところもあります。

兵庫県伊丹市は、阪急阪神ホールディングス株式会社と協定を結び、市内に「ビーコン受信器」という機械を設置し、「ビーコン発信器」を携帯する児童や高齢者の見守りを行っています。児童や高齢者の位置情報が家族のスマートフォン等に通知されるため、迅速な保護が可能であるとのことです。

大牟田市や伊丹市の他にも、北海道釧路市、福島県郡山市、山形県酒田市ほか多くの自治体で、認知症の人の見守りへの取り組みや、実施に先駆けた実験等が行われているようです。

 

金融機関では、高齢者や認知症の人の財産を守るための見守り

高齢者が金融機関を利用する場合、キャッシュカードの暗証番号を連続して間違えて預貯金を引き出せなくなったり、自分で引き出したことを忘れてしまって苦情を言ったりするトラブルが多いそうです。

さらに、最近特に問題になっているのは、高齢者をねらった振込詐欺です。高齢者や認知症の人の財産を守るための見守りも、非常に大切です。

東京スター銀行梅田支店では、「銀行員と共に学ぶ認知症サポーター養成講座」を関西では初めて開催したそうです。講座の中では、受講者である行員や取引先の顧客に対して認知症への理解を啓発し、来店時にはどのように対応することが大切であるかを中心に学んだとのことです。

また、全国各地にあり地域密着型の金融機関である信用金庫でも、認知症の人を地域で支援する取り組みとして、社員の認知症サポーター養成講座受講を促進し、認知症の人が利用することも多い「成年後見制度」に関する活動を行っています。

成年後見制度では、親族が後見人に選任されることが最も多いようですが、親族自身の高齢化や親族間の関係の希薄化という問題もあり、親族以外の後見人(第三者後見人)を確保することが重要な課題になってきているようです。

そこで、東京都内に店を持つ城南信用金庫等では、品川区在住の認知症の人の後見人となる法人「一般社団法人しんきん成年後見サポート」を2015年1月に設立し、信金退職者を第三者後見人に育成する講座も開いているとのことです。

 

コンビニや生協も、自治体と協定を結んで認知症の見守りを行う

コンビニエンスストア業界トップであるセブン-イレブンは、2016年3月の時点で、17都府県にある234もの自治体と高齢者見守りに関する協定を結んでいるそうです。

コンビニと言えば、高齢者よりも若者の来店者が多いと思われがちですが、セブン-イレブンは宅食サービスを行っているため、食事を届ける時の見守り活動の成果が協定に結び付いたのではないか、ということです。

協定には、「従業員が認知症サポーター養成講座を受講すること」や「宅食サービス等を通して、買い物が困難な買い物難民の支援を行い、見守り活動をすること」という高齢者に関する内容が盛り込まれています。

同様に、日常的に宅配を行っている各地の生協(生活協同組合)も、2015年末現在で約800もの自治体と見守りの協定を結んでいるそうです。配達を行う際には、新聞や郵便物がそのままになっていたり、声を掛けても出て来なかったり、何か異変がないか確認することになっています。

これまでにも、家の中で倒れていた高齢者の救助や、迷子になっている高齢者の保護等、配達先だけに限らず地域全体の見守りの役割を果たしてきたそうです。

多くの自治体や企業の見守りの輪が今後もますます拡がっていけば、認知症になっても安心して住み慣れた地域で暮らしていけそうですね。

 

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