認知症の人の排泄ケア1(失禁)
認知症の人の排泄ケア1(失禁)
認知症が進んでくると、多くの人に「失禁(おもらし)」という症状が出てきます。このような排泄問題は、介護者にとって大きな負担となります。つい大騒ぎしてしまったり、叱ったりすることもありますが、本人が誰よりもショックを受けていると思います。本人をできるだけ尊重し、介護者の負担も軽くする排泄ケアについて考えていきましょう。
見当識障害が原因で「失禁」「トイレ以外の場所で排泄」
認知症の中核症状の1つである見当識障害が原因となり、「失禁」または「トイレ以外の場所で排泄」してしまうケースがあります。
見当識障害というのは、年月日や季節、曜日、時刻、自分がいる場所、人と自分の関係などがわからなくなる症状です。自分のいる場所がわからないために、家の中でも迷子になってしまいます。例えば、以下のケースがあるようです。
- トイレの場所がわからなくて間に合わず失禁してしまうケース
- 違う場所をトイレと勘違いして排泄してしまうケース
排泄障害が原因の「失禁」
脳卒中・脳梗塞の後遺症の1つとして、排泄障害があります。排泄障害というのは、脳卒中などによって排尿をコントロールしている脳の部分が損傷すると起こることがあるようです。
その症状として、尿が出る間隔が短く、すぐに尿意を感じて回数が多くなる「頻尿」があります。頻尿になることでトイレまで間に合わず、「失禁」に繋がるようです。その他には、尿意を感じない、尿が出ない、などのような症状もあります。このように後遺症の可能性がある場合は、まずは脳の主治医に相談しましょう。
おむつは最後の手段に
認知症の人は、麻痺などがなく立つことができれば、自力でトイレで排泄することができます。しかしおむつをすることによって、排泄に関する感覚は薄くなってしまうことがあります。おむつは最後の手段とし、できる限りトイレに誘導し、自分で排泄をできるような対応をしましょう。
トイレに誘導する具体的な方法
- トイレに行きたいサインを見つける
- うろうろし始める、ズボンを脱ぎ始める、などのように失禁する前の行動を、トイレに行きたいサインとして見つけましょう。うまく見つけると、トイレに誘導しやすくなります。
- トイレの場所をはっきり表示する
- トイレの場所がわからない場合は、寝室からトイレまで誘導するような張り紙をする、入口には大きく「トイレ」と張り紙をする、常に明るくしておくなどが有効なようです。本人が間違えずに行けるようになるまで、表示を見せながら一緒にトイレまで行くことも大切です。
- 脱ぎ着しやすい服装にする
- いつも同じ位置にチャックなどがある、少ない力で(片手でも)下げられるなど、本人が簡単に準備ができる服装に替えましょう。
- 1日の排泄時間・回数を記録する
- 大体何時に排泄があったかを記録し、パターン化することによって、決まった時間にトイレへ誘導しやすくなります。
- ポータブルトイレを利用する
- 頻尿でどうしても間に合わない場合や、手すりなどがなく使いにくい場合は、ポータブルトイレを使うのもおすすめです。ベッドから楽に移動できたり、椅子の足を調節できるものなど、機能的なものが多くあるようです。このような介護用品は、ケアマネージャーなどに相談すると専門家などを教えてもらえます。
トイレの介助拒否をされる場合
尿失禁の量によっては、尿とりパッドや吸水下着などを使用した方が良い場合もあります。その場合、適宜パッド交換をして清潔に保つ必要があるのですが、これらを自分自身でできない場合、介助が必要となります。ただ、デリケートなことですから「介助拒否」をする人は多く見られるようです。
対策としては、なるべく手早くする、他の人から見えないようにする、などの他に、医師・看護師からの指示であることを言うと、介助させてくれる場合もあるようです。
例えば、「看護師さんから褥瘡(じょくそう)がないか確認するように言われたので、確認させてね。ついでにパッドも交換しましょうね。」などのように、言われたことのついでに交換してしまうのが受け入れられやすいようです。