瞑想が海馬を大きくしてアルツハイマー病などを改善させる?
瞑想が海馬を大きくしてアルツハイマー病などを改善させる?
NHK総合テレビの「ためしてガッテン」で、認知症にも効果があると言われている「瞑想」について紹介しました。なぜ効果があるのか、番組の内容も参照しながら見ていきましょう。
NHKの「ためしてガッテン」で取り上げられた「瞑想」とは
瞑想と言えば禅や仏教を連想して、日常生活とかけ離れたものではないかと思う人も少なくないでしょう。
確かに禅や仏教に関係のある場面で取り入れられていることもあるようですが、最近では、世界でも有名な企業や医療機関でも瞑想を取り入れているそうです。
最初に瞑想の効果に気づいたのは、ブッダであると言われています。ブッダは、瞑想により人々が苦しみから開放されるのではないかと考えて、多くの人に勧めて広めたそうです。
マインドフルネス瞑想は著名人も実践
瞑想にもいくつかの種類がありますが、ためしてガッテンでは、マインドフルネス瞑想について取り上げていました。
マインドフルネス瞑想も禅や仏教の考え方が基になっていましたが、1979年頃からは、宗教的な要素に関係なく取り入れられているそうです。
今は亡きアップル社のスティーブ・ジョブズ氏が瞑想を実践していたそうですが、グーグルやインテル等、世界的に有名な企業でも取り入れているそうです。
マインドフルネス瞑想は「心の筋トレ」と呼ばれることもあり、気持ちをコントロールしたり物事に集中したりする力を高めて、脳が持っている力を最大限に引き出すことができると言われています。
通常、人は一日に187,000ものことを考えながら生きているそうですが、そのほとんどは後悔や不安な気持ちを抱く内容であるため、ストレスの原因となることが多いようです。
マインドフルネス瞑想のやり方
ここでは、毎日手軽に行える3分間のマインドフルネス瞑想のやり方をご紹介しましょう。
瞑想のやり方
- できるだけ静かであまり明るくない部屋で、椅子に座ったり、あぐらをかいたりして行います。背筋はまっすぐ伸ばしますが、無理のない楽な状態で、手はそっと膝の上に置きます。
- 軽く目を閉じます。薄目を開けた状態でも可能です。完全に閉じると眠ってしまうことがあるので、注意しましょう
- 軽く口を閉じて舌は動かさず、上あごの歯茎の裏側に舌先をつけます。
- 体の力を抜いて鼻だけで静かに呼吸をし、呼吸そのものに注意を集中します。息を吸うことと吐くことすべてを意識し、注意を向けます。
マインドフルネス瞑想で海馬が活性化して大きくなる
上記の方法でマインドフルネス瞑想を行うと、脳はどのように変化するのでしょうか。
2010年にハーバード大学が発表した研究では、8週間にわたって毎日約20分ずつ瞑想を行ったところ、脳の海馬が活性化して体積が5%増えたとされています。
海馬は記憶をつかさどる重要な部分であり、認知症に関して大きなカギを握る部分であると言えます。瞑想を行うと、海馬だけでなく脳幹や小脳等も大きくなるそうで、MRI検査によって明らかにされているようです。
反対に、ストレスが溜まると海馬はやせてしまって、認知症も進行してしまうようです。
脳からシータ波が出て、海馬が活性化する
東海大学湘南キャンパスの、脳と情報処理を専門とする高雄教授が、ヨガ教室を営む男性の脳を調べた研究があります。この研究では、瞑想を行っているときに脳波を調べた結果、シータ波が多く出ていることがわかったそうです。シータ波が出ることで、海馬は大きくなるとのことです。
シータ波は、夢を見ている時(つまり、眠っている時)に出るのが普通なのですが、瞑想をしながら夢を見ている状態になっているという、とても不思議な結果です。
睡眠中、脳の前頭前野は眠っているのに海馬は起きて活動していて、記憶するものとしないものを選び分けているのではないかとも言われていますが、まだすべては解明されていません。
カナダやアメリカでも、アルツハイマー病や認知症への瞑想の効果が明らかに
カナダの研究チームでは、記憶力の低下を自覚する14人と自覚していない22人を対象に、マインドフルネス瞑想の効果を調べたそうです。そのさい、マインドフルネス瞑想ではなく心理療法を使った人達と比較すると、記憶力の低下の有無にかかわらず、マインドフルネス瞑想を行った人達の方が脳の密度が増えたとのことです。
記憶力の低下はアルツハイマー病と診断されるより前に現れることが多いのですが、診断される前でもマインドフルネス瞑想は効果があると言えるようです。
また、アメリカのメディカル・デイリー紙では、これまで効果が注目されていた脳トレゲームやパズルよりも、瞑想やヨガの方がアルツハイマー病や認知症の予防に効果的であると報じています。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のヘレン・ラブレスキー教授(精神科)は、記憶力に問題を抱える55歳の人達25人を2つのグループに分けて、瞑想やヨガと記憶力トレーニングのうちどちらが効果的であるかを調べました。その結果、どちらのグループも記憶力は同様に改善したそうですが、不安感やうつ状態が軽減し、物事に対処してストレスにも耐える力が向上したのは、瞑想やヨガを行ったグループであったそうです。
どの研究も対象とした人数が少ないので、今後は、さらに人数の多い研究で詳しく解明されていくものと思われます。
他の瞑想方法や、趣味・娯楽に没頭することでも効果あるか
ためしてガッテンでは、マインドフルネス瞑想以外にも効果が期待できる方法が紹介されていました。
ちょっと変わった方法では、おにぎりを30分かけて食べる瞑想というのもあるそうです。おにぎりを視覚、触覚、味覚、嗅覚というあらゆる感覚を使って味わい、胃の中におさまる感覚までを感じ取るのだそうです。
また、ダーツや模型製作等も、脳からシータ波が多く出ると言われているようです。趣味や娯楽に時間を忘れるほど没頭することで、瞑想を行っているのとよく似た状態になれるとのことです(参考:認知症になりにくい条件)。
日々の生活に瞑想を取り入れることに加えて、脳からシータ波が多く出るような楽しみを多く持つことも、認知症の予防に結びつくと言えるでしょう。