認知症の中核症状3(高次中枢機能障害/実行機能障害)
認知症の中核症状3(高次中枢機能障害/実行機能障害)
高次中枢機能障害
高次中枢機能障害には、失語・失行・失認があります。
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失語(言語障害)
読み書きや、話したり聞いたりする能力が障害されることを、失語といいます。通常、言語の能力を担っている領域は、脳の中の、利き手と反対側の前頭・側頭・頭頂葉にあり、この部分が障害されると失語の症状が現れます。相手の言うことが理解できなかったり、人や物の名前が思い出せなかったり、思い出せても言い間違ったりします。言い間違うと、わけのわからないおかしな言葉になったりすることもあります。言葉は日常のコミュニケーションに欠かせない大切なものですから、失語により、日常生活に大きな支障が出てしまいます。
- 失行(行為障害)
失行とは、運動面の問題がないのに、正常に動作ができないことをいいます。ほとんどの場合、右頭頂葉の障害により起こるようです。失行は、次の4つに分けられます。- 観念失行:
道具を使用する一連の動作ができないことです。一連の動作とは例えば、マッチをすって何かに火をつけるようなことです。 - 観念運動失行:
自発的な運動はできますが、指示を受けたり模倣したりして行う運動や動作ができなくなります。例えば、「ありがとうとお辞儀をして下さい」と指示されたり、「顔を洗うまねをして下さい」と言われても、それを実行できません。 - 構成失行:
空間を認識して行う課題(積み木や、図形を書き写すなど)ができません。目で見て、それを運動や動作に結びつけることができないようです。 - 着衣失行:
衣類の着脱ができなくなります。
- 観念失行:
- 失認(認識障害)
目や耳、鼻などに問題はないのに、それらを通して得た情報が脳に伝わらず、認知できないことです。失認は、視覚失認・聴覚失認・触覚失認の3つに分けられます。
- 視覚失認:
後頭葉の損傷が原因になるもので、さらに3つに分かれています。- 物体失認(物を見ても何かわかりませんが、触ればわかることがあります)
- 相貌失認(人の顔や、どんな表情をしているかがわかりません)
- 視空間失認(空間の中で、自分や物がどの位置にあるかわかりません。迷子になるのも、この状態です)
- 聴覚失認:
音楽や人の声、何かの物音が聞こえるのに、それが何の音かわからない状態です。側頭葉の損傷が原因であることが多く、失語の症状と同時に現れることも少なくありません。 - 触覚失認:
手で触れたものが何なのかわからない状態です。頭頂葉の損傷が原因であるとされています。
- 視覚失認:
実行機能障害
実行機能障害は、前頭葉の機能が障害されて起きることが多いとされています。実行機能障害が起きると、目標を決めて計画的に何かを行うことができなくなります。日常生活の中で、仕事や家事ができなくなります。
例えば料理をする場合、メニューを決め(目標を決める)、手順を考えて(計画を立てる)、実際に料理することになりますが、実行機能障害が現れると、料理の手順がわからなくなって最後まで作れなくなったり、たとえ作れても、変な味付けのものができ上がったりします。
実行機能障害は、いろいろな認知機能障害が関連して起きるもので、記憶障害や失語、失認、失行、判断力の低下などが複雑に絡み合っています。認知症の進行とともに、実行機能障害も進行していきます。