老化と認知症の違い(物忘れ)
老化と認知症の違い(物忘れ)
認知症のような症状だと思っても、それが単なる高齢によるものか認知症の症状であるかは、なかなか区別し辛いことが多いようです。「物忘れ」を例にして、老化と認知症の違いを見てみましょう。(元帝京大学名誉教授・安田和人先生の書籍を参考にしています)
物忘れにおける老化と認知症の違い
老化の場合 | 認知症の場合 | |
---|---|---|
物忘れの原因 | 加齢による状態。 脳の神経細胞の機能が低下することから。 |
脳の病気による状態。 広範囲で脳の神経細胞が死滅して数が少なくなり、脳が委縮することから。 |
記憶力の低下 | 記憶力が低下する | 記憶力の低下とともに、判断力や時間の感覚も低下する |
判断力の低下 | 判断力は低下しない | 判断力が低下する |
自覚しているか | 物忘れをしているという自覚がある | 物忘れをしているという自覚がない |
体験を忘れる | 体験したことの一部分を忘れる(部分記憶の障害) | 体験したこと全体を忘れる(全体記憶の障害) |
物忘れが進行するか | 進行しない | 進行する |
日常生活への影響 | 環境に変化がなければ特に支障はない | 日常生活に支障がある |
一般に、人の記憶力は20代をピークとして、その後年齢とともに低下していくようですが、例えば判断力など、記憶力以外の脳の能力はそれ以降も成長を続け、知能全体としては50歳ごろまで発展するといわれています。
その後、60歳ぐらいになると多くの人は記憶力・判断力・適応力などが衰えてくるようになり、脳の老化が始まると言われているようです。これは自然の老化現象で、認知症ではありません。
認知症は、脳の神経細胞が壊れることによって、記憶や認知能力が失われて(中核症状)、その結果日常生活に支障をきたす(周辺症状)ものです。
認知症の場合、早期に発見することで、原因によっては治療できる場合があること、また進行を遅らせることができる場合があることを考えると、気になったら、単なる「物忘れ」で済まさずに、できるだけ早く診察を受けることが望まれます。