介護者への性的逸脱行為
介護者への性的逸脱行為
認知症が進んでいくうちに、介護者等への性的逸脱行為が問題になることがあります。例えば、性器を見せる、卑猥なこと言う、性行為を迫るなどの行為です。
高齢者だからといって、性的欲求が消えるとは言えません。しかも認知症であるために、判断力が低下して羞恥心や遠慮がなくなり、問題行動として現れると言われています。ちなみに、女性の認知症でも同様の行動は現れることがあるようです。
全てが直接的な行為ではない
認知症高齢者の性的欲求は、全てが直接的な行為を求めているとは限らないようです。認知症になったことによって家族から疎まれている気がする、寂しい、不安、などの想いが原因となり、安心したい気持ちから、手を繋ぐなどのスキンシップを求めている場合もあるようです。
若い時代の自分を生きている
川崎幸クリニック院長・杉山孝博先生が説く「認知症をよく理解するための8大法則・1原則」の第1法則は、「記憶障害に関する法則」です。その中で「記憶の逆行性喪失」ということが説明されています。
これは、人生の記憶を現在から過去にさかのぼって忘れていくのが特徴です。
認知症の本人は、若い時代の自分を生きている可能性があるということです。このことから、例えば女性のヘルパーさんを妻だと思っている、などの場合も考えられます。
性的逸脱行為を上手に避ける方法
介護家族、とくに義理の父親を介護する立場の女性にとっては、認知症による性的逸脱行為は重大な問題となります。特に初期の頃などは、配偶者の親として尊敬し大切な存在だった人からの行為に、大きなショックを受けるのは無理もないことでしょう。
しかし、大きな声で叱ったり、怖がる姿を見せたり、嫌な顔をすることは逆効果のようです。
若い時代の自分になってしまっているために、叱られたり拒絶されることで混乱したり、暴力に発展することもありえます。具体的には、以下のような対応例があります。
- 両手をにぎってあげながら「いただいたお菓子を食べますか?」など他の話題に気をそらせる。
- デイサービスなどを利用して、散歩やリハビリなどのような体を動かす時間を増やしてもらう。
介護者が抱え込まずに相談すること
性的逸脱行為に関しては、それをされた側であっても、恥ずかしいと思う気持ちや、大げさにしていると思われたらどうしようという気持ちなどから、相談できない人も多いようです。しかし、家族でも施設の介護者であっても、そのストレスは甚大です。
決して1人で悩むのではなく、家族やケアマネージャー、看護師などに相談することは大切です。
症状が激しい場合は適切な薬で抑えることもありますし、できるだけ2人以上で対応するなどのように対処方法を変えていくこともあります。家族・介護者など、介護に関わる人同士が情報を共有することで、状況を少しでも改善できるようになり、介護者のストレスを減らす工夫をすることが大切です。