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歯のケア・口腔ケアが認知症予防に

歯のケア・口腔ケアが認知症予防に

「歯」は「認知症」にとても深い関わりがあることをご存知でしょうか。

さまざまな研究の結果、「歯」を失うことによって良く噛んで食べることができなくなり、それが脳への刺激を減らすことがわかりました。この咀嚼による刺激は、中枢神経の活性化や記憶力の向上に効果があるそうです。

また、歯を失った人でも、その人に合った入れ歯などの義歯を使用することで、脳の刺激を維持できることもわかってきています。

歯を失うことの影響、歯のケアと認知症予防などについてご紹介します。

認知症の疑いがある人の方が「歯が少ない」

東北大学の医学部と歯学部が共同で行った調査では、70歳以上の高齢者の中で「健康」とされたグループは平均で14.9本の歯が残っているのに対して、「認知症の疑いがある」とされたグループは9.4本しか残っていない、という結果が出たそうです。

さらに、脳のMRI検査では、歯の数が少ない人の方が、記憶を司る脳の海馬付近と計算・思考などに関連する前頭葉などの容積が減っていることがわかりました。

この結果から、「歯が少なくなる」ということが脳の働きに影響を及ぼしていることがわかってきたようです。

「入れ歯」によって認知症の発症率は抑えられる

神奈川歯科大の調査によると、「65歳以上で自分の歯が少なく、入れ歯を使っていない人」が認知症になる確率は、「歯が20本以上残っている人」に比べて約1.9倍高かったそうです。

また、「食べ物をあまり噛めない」と答えた人は、「何でも噛める」と答えた人よりも、認知症になる確率が1.5倍であるという結果が出たそうです。

これらの結果から、たとえ自分の歯が少なくなったとしても、適切に処置をして「自分に合った」入れ歯などを使用することで、認知症の発症率を抑える効果が期待できると思われます。

「噛む」ことが脳活動を活発にし、アルツハイマー型認知症予防につながる

岐阜大学医学部の小野塚実氏らの研究では、チューインガムを噛んでいる時の高齢者の脳の活動状況を、MRIで解析しました。その結果、咀嚼による刺激で、運動野・小脳などの神経活動が活発になっていることがわかったそうです。

また、近時記憶の向上が見られたということです。「噛む」という行為が、認知症予防に重要な役割を持っていると言えるのではないでしょうか。

介護の現場で注目される「口腔ケア」

口腔ケア」というのは、口腔疾病の予防・健康保持、リハビリによってQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を目指した技術です。より人間らしい、充実した生活につながる技術ということです。

例えば「口腔ケア」には歯石の除去などの清掃、入れ歯の手入れなどがあります。

自分ではきちんとしているつもりでも、入れ歯の手入れなどが適切にできない場合があります。その指導を受けることは、「自分で噛んで食べる」健康な口腔状態を維持することにつながります。また、だんだん合わなくなってくる入れ歯のサイズなどにいち早く気付くこともできます。

「口腔ケア」で咀嚼機能を回復、認知症予防に

「口腔ケア」には、歯肉・頬部のマッサージもあります。これらのマッサージには、咀嚼機能を回復させ、唾液の分泌を促す効果があります。嚥下のリハビリにもなるそうです。

自分で噛むことができる状態を維持していくためにも、「口腔ケア」を行っていくことは重要なのではないでしょうか。

このように、「歯」のケアが認知症予防につながるということが科学的にわかってきました。「噛む」ということは脳にとって重要なのですが、何より「自分で噛んで食べられる」ということは人間にとって大きな喜びではないでしょうか。

家族や友達と一緒に楽しく食事することが生活意欲につながり、ひいては認知症予防につながるように思います。

 

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