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誰が面倒を見るのか

誰が面倒を見るのか

認知症(旧痴呆症)になった本人の面倒を、家族や親族の誰がみるのか、誰が世話をするのか、いつまでするのか、これは家族にのしかかってくる大きな問題です。

介護に多くの時間をとられた介護者は、どうやって生活していけばよいのでしょうか。

親の面倒を子供が見るのはあたりまえ、という考え方

大家族であっても核家族であっても、誰が介護者になるかについては、介護者のその後の人生を左右する可能性があり、大きな問題となりえます。

例えば以下のように、介護者本人の状況よりも観念を優先させたような古い短絡的な考え方では、現在既に対応が難しいでしょう。

  • 面倒は長男が看るもの
  • 長男の夫婦が看てあたりまえ
  • 親と同居している娘が看ればいい

もしこの考えを持っている人が、同じ親族の一員であるにもかかわらず介護者ではない人だとすれば、既にその人が介護を他人に押し付けているとも受け取れます。

 

人生を全て親の介護のために捧げる

核家族化、少子高齢化が進んでいる現代においては、例えば子育てにおいても、両親を頼らずして家族単位で自力で頑張っていく必要があり、家族内のやりくり、仕事などで心身ともにいっぱいいっぱいな状況でしょう。

そこにもってきて、別世帯である親の面倒を見れる財力・体力・精神力も、基本的には無いのではないかと思われます。

昨今では、無資産で認知症になった親の世話をこの先10年20年とすることがもはや不可能で、絶望的な気持ちになっているケースもよく耳にします。全ての費用・世話を子供世代が負担することになり、自身の仕事をやめたり結婚すら諦めて、親の介護にあたることもあります。人生を全て親の介護のために捧げるという状況です。

長男であろうが同居している子供であろうが、まず当人たちの人生があるわけですし、誰か一人(あるいは一世帯)に介護を押し付けることには、様々な問題が発生してくるのです。

介護者がシングルの場合

介護者がシングル(独身者)の場合、家族がいて独立している他の兄弟から最初からあてにされてしまうケースも多いようです。つまり、妻子(あるいは夫や子供)がいない分、介護しやすい(介護して当然)と思われているなどの場合です。

しかしシングルの場合には、昼間仕事に出ていることが多く、認知症の人(例えば親)と同居しているとしても、昼間は親は一人にさせてしまいます。親が次第に家事ができなくなってくることを考えると、不安な要素も多いです。そんなとき、兄弟がフォローしあうのは、大切なことです。

またシングルの人が男性の場合、比較的認知症の人の変化に気付かない傾向もあるようです。例えば食事がちゃんととれていなかったり、認知症の症状が進むなどがあっても、それに気付かず、そのままになってしまうようなことです。

職員が様子を尋ねてきても、大丈夫だと言って帰してしまう。職員はそれ以上立ち入れないため、家の中の実情が次第にわからなくなってきます。このことは、場合によっては危険を孕んでいます。

こういった状況を回避するには、以下のような対策が必要になります。

  • 早くから公的サービスや民間のサービスなどを利用したり
  • 兄弟間の助け合いを強化したり
  • 何よりも、シングルの人が全てかぶってしまうことで自分の人生を失ってしまわないような体制を作る



介護者が一人っ子の場合

現代の家族構成からして、一人っ子が介護者になるケースも少なくないでしょう。

一人っ子というのは、介護問題以前に、年齢と共に多くの孤独を感じる存在ではないでしょうか。というのは、兄弟のない一人っ子は、両親以外の親族といえば叔父・叔母、そしていとこたちだけです。年齢が上がるにつれ、その親族もそれぞれの生活に手一杯になるため、若い頃のような交流も減っていき、さらに時代は自分たちの子供の時代と移っていく。

そんな孤立した状態のときに見守りや介護者になるとすれば、まさに親と自分の一対一の世界になってしまうのではないでしょうか。

認知症になった親の代わりに、一人っ子の子供は以下のような雑務を全てひとりで担うのです。配偶者がいる場合には助けを借りるかもしれませんが、実の子とその配偶者とでは本人に対するアプローチが違うでしょうし、一人っ子の当人は配偶者に負担をかけたくないという思いもあるでしょう。

  • 日常の見守り・介護ケア(これは配偶者、福祉サービスと連携できるかもしれません)
  • あらゆる公的な手続き
  • 介護事業者とのやり取り
  • 親が健康を害したら病院への送り迎え
  • 入院の手続き・世話の全て
  • 車の運転を引退した後の外出の送り迎え
  • 相続問題の手続き
  • 家屋などの所有者問題の処理
  • 成年後見制度の手続き

このような雑務を一人で担うのです。手続きや親の送り迎えの時間的・精神的・体力的な問題をかかえることになります。通常は仕事を持っているでしょうから、平日しかできない公的手続きのために仕事を休んだり、入院等の場合には、病院の送り迎え・病室での待機などで数日の休みをとらなければならないこともありえます。

一人っ子の場合もやはり、早くから公的、民間問わずのサービスを最大限に活用し、なるべく叔父や叔母と関係を保っておくなど、可能な限り周囲や親族の助けを求められる状況を作っておくことが、どうしても必要になってきます。

 

介護離職しないで介護を続けるには

介護者も、仕事をして生計を立てていると思います。介護離職しないで介護を続けるには、介護サービスや施設などの助力が必要です。例えそうしていても、介護サービスでは全ての面倒を見きれず、自身も世話をしなければならなくなり、仕事をやめる人も多いのです。

とはいえ、できるだけ早めにサービス事業者や施設を調べ、実際に試していって、少しずつでも慣れていくことが重要です。仕事が多忙なときに介護休業をとって全てを一気に始めるのは、大きな負担となり、当然ながら仕事にも支障が出るでしょう。

もし介護離職することになったら、収入の基盤を失い、生活保護などで生活を保障する対策を立てる必要が出てくるかもしれません。