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若年性認知症1(概要、症状)

若年性認知症1(概要、症状)

若年性認知症とは

65歳未満で発症する認知症のことを、若年性認知症といいます。

「若年性」というと、せいぜい30代くらいまでの若い年齢層が発症するのではないかと思うかもしれませんが、推定発症年齢は51.3プラスマイナス9.8歳とされていて、40代で発症することもあります。発症のピークは、男女ともに50代と言われています。

厚生労働省の調査によると、わが国では37,800人が若年性認知症であると推定されているようです。しかし、中には受診しない人もありますし、たとえ受診しても若年性認知症は診断が難しいことを考えると、実際の患者数はもっと多いのではないかと考える専門家もいるようです。

女性よりも男性に多い

若年性認知症は女性よりも男性に多いのですが、その理由のひとつとして、若年性認知症の一番の原因が脳血管の疾患であることが考えられます(若年性認知症の原因のうち、脳血管の疾患は約40%)。脳の血管が詰まったり破れたりすることで起きる脳血管性の疾患は、女性よりも男性に多いからです。

また、専業主婦の女性の場合等は、周りの人が変化に気づきにくいとも言えます。毎日決まった家事を行う、あまり変化のない生活環境で過ごしているため、認知症になっても最初は目立った支障が出ない場合が多いからです。しかし、職場で働いている人の場合は、少しでも本人に変調があると、仕事のミスや効率の低下につながりますから、職場の人が気づく場合が少なくないのです。

若年性認知症の原因で2番目に多いのはアルツハイマー病で約25%、3番目は頭部外傷で7.7%という報告があります。これらの原因の他には、前頭側頭葉変性症(ピック病)、長期にわたるアルコールの過剰な摂取、脳腫瘍等もあります。

若年性認知症の症状

若年性認知症の場合も、高齢者の認知症とほぼ同じ症状が現れます。

もの忘れ
まず、初期症状として最も多いのがもの忘れで、50%の人に見られるという報告があります。
物の置き場所を忘れたり、予定していた用事を忘れたりすること等に加え、例えば会社員である場合、会社に出勤することを忘れたり、たとえ自宅を出発しても会社に到着できず、徘徊してしまうということも起きるようです。
主婦の場合であれば、買い物に出かけても何を買うのかわからなくなったり、おつりの貰い忘れや荷物の置き忘れをしたり、同じ物を大量に買い込んでしまったりすることがよくあります。
行動の変化
そして、その次に多いのが行動の変化で、28%の人に現れると報告されています。
周りへの配慮ができなくなったり、礼儀を欠くような行動をとるようになったり、おしゃれに気を配っていた人が無頓着になったり、いろいろな変化が出てきます。
性格の変化
また、12%くらいの人には性格の変化も起きるようです。穏やかだった人が怒りっぽくなって、暴言や暴力等の症状が出てきたり、几帳面だった人が大雑把になったり、人によって現れ方も異なります。
言語の能力低下
言語の能力も低下する人が10%くらいあり、周りとの言葉でのやりとりが困難になって、コミュニケーションに支障が出てくることがあります。

以上のような症状が出てきても、初期の段階で医師が若年性認知症と診断することは難しい場合が多く、うつ病や統合失調症、女性の場合は更年期障害と間違われることも少なくありません。認知症が進行していくうちに、幻覚や妄想、抑うつ等の症状が出てきて、診断がはっきりすることも多いのです。