博物館が実践する認知症予防「地域回想法」
博物館が実践する認知症予防「地域回想法」
昨今、介護などの分野で自助か公助かの二者択一ではなく、共助(互助)も入れてバランスをとることが必要だという流れが強まっているようです。長寿の方が増えてきたことや家族構成が以前とは変化していることもあり、自助には限界が来つつある一方で、財政状況が悪いため公的な施策の拡充は望めない情勢だからだといいます。
したがって、自助と公助の間を取り持つため地域やコミュニティで高齢者を支える共助(互助)が重視される傾向にあるようなのです。 国もこれを後押しするように「地域包括ケアシステム」という施策を打ち出しています。 そんな共助(互助)の取り組みの一つで、博物館が介護施設と連携して実践している「地域回想法」があります。
認知症の改善には脳の活性化が有効
認知症というのは脳の神経がダメージを受けてしまい、正常に働かなくなることを主要なメカニズムとして起こっていると言われています。
残念ながらこの神経を復活させることはできませんが、使われていない脳神経を活性化させて、ダメージを受けてしまった脳神経の代替をさせることで機能がある程度回復するのではないか、と考えられています。(このような治療法を脳活性化リハビリテーションと呼びます)。
回想法で脳が活性化
脳を活性化すると言われている方法はいくつもあるようですが、そのひとつが回想法です。
回想法とは過去の記憶を呼び覚まして、話したり、実際に行動したりすることで脳を活性化させる方法です。もともとは1960年代にアメリカのバトラーという精神科医が提唱した方法で、自分の過去を振り返って人生の意味を自分で評価したりすることで、自分に対する満足感を上げてQOL(生活の質)を高める目的で行われてきたようです。
それが結果的に脳の活性化につながり、実際に認知機能の改善などの効果がみられているのだそうです。
富山の博物館が行っている地域回想法
博物館の目的は資料を収集、保存しながら、展示等を行うことで市民の教養向上に役立てたり、研究を行ったりすることです。同時にその目的のために、自然と高齢者が過去に見たり、扱ったりしてきたものがたくさん集まっているところにもなっています。
そのメリットを生かそうと富山県の氷見市立博物館が主体になって始めたのが、「地域回想法」です。「地域回想法」とは「回想法」を「地域」で行っていこうという新しい実践的な動きのことなのです。
具体的には、博物館に来てもらえるように介護施設を使っている高齢者の入館料を減免したり、収集・保存していたおひつやアルマイトのお弁当箱、わらじや湯たんぽなどをセットにした箱を施設に貸し出したりすることで回想法を実践してもらうことを行っているようです。
結果、普段はほとんど話さない高齢者が反応を示したりして介護職員を驚かせたり、いつもはお世話をされる側の高齢者が介護職員にエピソードやものの使い方を教えることで、生き生きとした時間を過ごすことが出来るなどの効果が上がっているそうです。