ユマニチュードとは
ユマニチュードとは
ユマニチュード(Humanitude®)とは何か
ユマニチュード(Humanitude®)とは、認知症の人のケアをするためのフランスのイヴ・ジネスト氏によって開発された方法です。2014年にNHKクローズアップ現代でも特集されました。
この方法は、認知症の人に魔法をかけたように効果があると言われることがあるようです。(日本でも、名称はつけなくとも、これまでこのようなケアを実践されている人は多くいるでしょう)
ユマニチュードは、見る、話しかける、触れる、立つという4つの方法が柱となっていて、全部で約150もの技術があります。
- 見る
- 認知症の人の正面で、目の高さを同じにして、近い距離から長い時間見つめます。斜めや横から視線を注ぐのではなくまっすぐに見つめ合うことで、お互いの存在を確認することができます。
- 目の高さを同じにすることで、見下ろされているような威圧感を与えず、対等な関係であることを感じてもらいます。近くから見つめると、視野が狭くなりがちな認知症の人を驚かすことなく接することができます。
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話しかける
- 優しく、前向きな言葉を使って、繰り返し話しかけます。介助をするために体に触れる場合も、いきなり触れるのではなく、触る部分を先に言葉で伝えて安心感を与えてあげます。
- 例えば、洗髪を行う場合に「とてもきれいな髪ですね。これから、髪に温かいお湯をかけますね。気持ちがいいですよ」などと話しかけます。しかも、できる限り目と目を合わせながら行うようにするといいようです。
- 触れる
- 認知症の人の体に触れて、スキンシップをはかります。決して腕を上からつかむような感じではなく、やさしく背中をさすったり、歩くときにそっと手を添えてあげる等、認知症の人が安心できるように工夫します。
- 立つ
- 認知症の人が寝たきりにならないよう、自力で立つことを大切にします。歯磨きや体を拭くような時でも、座ったままではなくできるだけ立ってもらいます。立つことで筋力の低下を少しでも防ぐことができますし、座ったり寝たりしている時よりも視界が広くなって、頭に入る情報量を増やすことができます。
「ユマニチュード入門 / 本田美和子です。
ユマニチュードについてさらに詳しく知りたい方はお読み下さい。
ユマニチュード入門 [ 本田美和子 ]
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<書籍データ>
発売日:2014年06月
著者:本田 美和子/イヴ・ジネスト/ロゼット・マレスコッティ
出版社:医学書院
サイズ:単行本 A5
ページ数:148ページ
SBN978-4-260-02028-2
認知症ケアの矛盾
認知症の人が病気で入院したり施設に入所したりする場合、生活環境が変わり、本人に入院や入所の理由が理解できないために混乱することが多く、抵抗して暴れたり治療を拒否することも少なくありません。
そのため、病院や施設は、やむを得ず認知症の人を拘束したり鎮静剤を使ったりすることもあるようです。
しかし、そのような方法で認知症の人が体を動かせなくなると、全身の機能が低下して、治療しているのに全身状態が悪くなるという矛盾を招くことになります。
これでは、認知症の人だけでなくケアをする職員も心が折れてしまいそうです。
ユマニチュードの効果
フランスの病院では、ユマニチュードを導入した結果、薬の使用を減らせたり、職員の負担が減って退職者が減る等の効果も出ているそうです。
治療を拒否していた人が素直に治療を受けるようになり、職員に対して言葉を荒げていた人が、「ありがとう」と言うようになったという報告もあるようです。
ユマニチュードは時間がかかる方法のようにも見えますので、業務に追われて忙しい職員が実際にこの方法を使えるのだろうかと疑問を感じるかもしれません。しかし、ユマニチュードにより認知症の人と良好なコミュニケーションを取り、人格を大切にしてケアすることで効果が現れると、認知症の人も職員も負担が軽くなるようです。
ケアの方法を変えることで認知症の人も職員も共に変われるとは、願ってもないことではないでしょうか。