認知症対策といわれるフェルラ酸
認知症対策といわれるフェルラ酸
認知症の予防や改善に効果的であるとされているフェルラ酸について、見ていきましょう。
米ぬかに多く含まれるフェルラ酸は、アルツハイマー型認知症に効果的
フェルラ酸とは、天然の化学物質であり、植物の細胞壁を形成し強い抗酸化作用を持つポリフェノールの一種です。
初めて発見されたのは1866年で、地中海に自生するオオウイキョウというセリ科の植物から発見されたため、その学名(Ferula communis)にちなんで、フェルラ酸と名づけられました。
通常、フェルラ酸は米や小麦等の穀物や種子に多く含まれていて、米ぬかから精製されたフェルラ酸がアルツハイマー型認知症の改善に効果的であるという研究結果が、これまでにいくつも発表されています。
その中でも、2008年に『老年医学』誌に発表された、広島大学の中村名誉教授らの研究がよく知られているようです。この研究では、9ヵ月間にわたって143人のアルツハイマー病患者にフェルラ酸が投与され、認知症が軽度である場合は認知機能が改善し、中度の場合はある程度認知機能の低下を抑制できたことが報告されました。
また、ヒトの神経芽腫細胞の神経突起が、フェルラ酸によって長く伸びることが報告された研究もあります(岡山大学農学部 高畑教授他)。
フェルラ酸は、認知症の他にも高血圧や糖尿病の予防・改善や肌を美しく白くする効果もあるとされていますし、食品や医薬品の添加物である酸化防止剤としても利用されています。紫外線を非常によく吸収することも知られています。
フェルラ酸により神経伝達物質が放出され海馬に働きかける
フェルラ酸が消化管に入って感覚神経を活性化させると、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という神経伝達物質の一種が放出されます。
CGRPの働きで脳に信号が伝達されると、脳の海馬の機能が回復し、認知機能の改善に結びつくとされています。
海馬にあるIGF-1(成長ホルモンの働きを促進する物質)が、血管を新しく作ったりニューロンの再生を促したりすることにより、海馬の機能を回復させると考えられています。
また、当サイトでは異論がありますが、アミロイドβという物質がアルツハイマー病の原因ではないかとも考えられていて、フェルラ酸がアミロイドβの脳への蓄積を抑制していると考える研究者もあるようです。