認知症の人の排泄ケア2(弄便)
認知症の人の排泄ケア2(弄便)
「弄便(ろうべん)」とは
便を手にとって丸めたり、壁や床に塗りつけたりすることを「弄便(ろうべん)」といいます。この行為に初めて遭遇する家族は、大変なショックを受けると思われます。よりによって便を、という受け入れられない気持ちは無理もないことです。
失禁と同様に、叱るべきではなく、認知症が進むと本人は何について叱られているのかはわからない状態も多いようです。
弄便の原因
弄便の直接的な原因と考えられるのは、「おむつの中に便がある」ということが多いようです。おむつに便があるのをなんとかしようとして、手を入れてしまったり、またはおむつを外してしまうこともあります。
それによって手に便が付き、便だと認識していないために、壁や布団、ベッドなどに塗りつけて隠そうとするようです。逆にトイレで排泄できた場合、弄便はそれほど多くはないようです。
弄便を見つけた時の対処
弄便は、本人は便だと認識していず、どうしてよいのかわからずに困っていることが多いようです。決して失敗を叱ることをせず、「どうしたの?」と状況を聞いてあげることが大切のようです。そして、「大変だったね」と共感し、「一緒に手をきれいにしましょうか。」と誘導するなどがよいようです。
弄便をさせないようにするためには
できるだけおむつでの排便をしないようにすることが、目標となるようです。失禁の対処の時と同様に、おおまかな毎日の排便パターンを把握して、トイレに誘導しましょう。時間を見計らって水分補給をすることも、トイレへの誘導には効果的なようです。
一手だけ先手を打つ
失禁されないよう、弄便されないよう、うまく誘導できることばかりではありません。ずっと付きっきりで見ていられるわけでもありませんから、どうしても失敗が起きることもあります。それは、介護者にとってみれば片づける手間がかかるだけではなく、精神的にもストレスとなります。
本人もうまく伝えられないだけで、申し訳ない気持ちがあるようです。
お互いのストレスを軽減するための「一手だけ先手を打つ」というのは、掃除を簡単にする工夫です。具体的には、畳の上には防水加工の敷物を敷く、臭い対策として換気扇をつける、ベッドやトイレには手袋・雑巾などを常備させておく、などです。
「すぐに片づけられるから大丈夫」という気持ちでいられれば、失敗に対してもストレスを減らすことができるかも知れません。本人は「大丈夫ですよ」と言ってもらうことによって、とても安心するようです。