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79歳でも新しい脳細胞は生まれる?高齢でも脳を成長させる生活習慣

79歳でも新しい脳細胞は生まれる?高齢でも脳を成長させる生活習慣

人の脳細胞は、高齢者でも新しく生成されて増えるのでしょうか。最近報告された研究結果や、脳細胞を増やす生活習慣について見ていきましょう。

79歳になっても脳細胞が増える?

「高齢者の脳細胞は減る一方で増えることはない」と考えられていましたが、2018年4月5日、アメリカの科学誌「Cell Sterm Cell」に、それとは正反対の研究結果が掲載されました。

研究結果を発表したのは、神経生物学が専門であるモーラ・ボルドリーニ准教授(米コロンビア大学)です。

ボルドリーニ准教授の研究チームが、突然死亡した28名の人(14~79歳)の海馬を詳しく調べたところ、79歳の人にも若い人と同様に新しい脳細胞を生成できる可能性があることがわかったそうです。 まだ未熟な脳細胞や、脳細胞になる前の段階である前駆細胞が、年齢に関係なく見つかったようなのです。

28名の人はいずれも生前は健康で、認知症や精神・神経疾患の診断を受けたことがない人ばかりでした。高齢者では海馬の量が少ないということもなく、年齢による違いは見られなかったとのことです。 これは、認知症の発症を阻止するための手がかりとも言える発見で、研究者の注目を浴びています。

高齢になっても海馬の脳細胞が増えるのであれば、認知機能を維持し続けることも可能かもしれません。 ただ、年齢が高くなると血管の老化は避けられないため、脳細胞が成熟したり互いに連携したりすることは、若い人よりも難しいようです。

 

人の脳は、高齢でも新しい脳細胞を生み出せる?

実は、上記の研究結果が発表されるわずか1カ月前に、イギリスの科学誌「Nature]には、「成人になると海馬で脳細胞は増えなくなる」という研究結果が発表されたばかりでした。

しかし、これまで、サルやマウスを使った基礎的な研究では、高齢になったら新しい脳細胞を生成できなくなるという結果が出ていますが、人の脳は違うそうです。 (米ウェイル・コーネル医科大学のコーネル氏は、健康な高齢者と認知症の高齢者の脳を比較して研究を行うことに関心を寄せていて、ボルドリーニ准教授も同じ考えだそうです。)

前述のボルドリーニ准教授によると、アルツハイマー病で亡くなった人の海馬では脳細胞が減少していますが、それは脳細胞が生成されなくなったせいなのか、脳細胞が死滅したせいなのかわかっていないそうです。

今後、健康な高齢者と認知症の高齢者の脳を比較する研究が行われたら、高齢でも認知機能が維持できる理由が明らかになり、新しい認知症治療につながる可能性があるかもしれません。

脳細胞を増やすための生活習慣

キングス・カレッジ・ロンドンの神経科学者であるサンドリーヌ・チュレ氏が述べている、脳細胞の生成を促進する生活習慣について見てましょう。 チュレ氏は、今回のボルドリーニ准教授らの研究結果が発表される前から、成人でも脳細胞が新しく生成されると考えていました。

脳細胞が増えると、記憶力の向上や気分の改善等、色々なメリットがあると言われています。 しかし、老化はもとより、ストレスや睡眠不足が脳細胞の生成を妨げる要因となり、病気の治療に使用する薬でさえ、脳細胞の生成を止めてしまうことがあるそうです。

例えば、がん細胞の増殖を抑える抗がん剤は、同時に脳細胞の生成までも抑制してしまうため、がん患者の中にはうつ状態になってしまう人がいるそうです。 抗がん剤を処方する立場である医師の中にも、成人したら脳細胞は増えなくなると考えている人が少なくない、という事実もあるようです。

チュレ氏によれば、脳細胞の生成は、学習、セックス、ランニング(有酸素運動)により促進されることに加え、食習慣も大きな影響を持つとしています。

有効とされている食習慣は、次の通りです。

  1. 柔らかい食事ではなく、しっかり噛む必要がある固い食物を摂取する
  2. カロリーを制限する(2~3割減)
  3. 食事を取る間隔を充分に開ける
  4. フラボノイドを摂取する(ブルーベリーや、カカオの含有量が多いチョコレートに多く含まれる)
  5. オメガ3脂肪酸を摂取する(サーモンの他、脂分の多い魚に多く含まれる)

 

脳に悪い習慣・良い習慣

胎児から100歳の高齢者に至るまで延べ数万人ものMRI脳画像の分析を行ってきた、株式会社「脳の学校」代表の加藤俊徳氏(医師)が提唱する、脳を活性化させる生活習慣についても見てみましょう。

加藤氏によると、脳の老化が始まる40~50歳代になっても日々の生活習慣次第では脳は成長するそうで、認知症を発症しやすくなる70代に先駆けて、40~50歳代から良い生活習慣を身につけることが重要であるそうです。

色々な生活習慣や要因の中で、脳に悪いものと良いものとして、加藤氏は次のものを挙げています。

脳に悪い習慣や要因
運動不足、肥満、喫煙、過度の飲酒、糖尿病、うつ病、睡眠障害(脳に老化物質がたまる)
脳に良い習慣や要因
運動、良質の睡眠・食事、禁煙、脳への刺激

脳を刺激する方法として、次のようなことがお勧めであるそうです。

  1. 右利きの人は敢えて左手を使う
  2. 習慣的に覚えているラジオ体操を逆の順番でやってみる
  3. 同じ道ばかりを通らずに、違う道を通ってみる
  4. 買い物をする店内を回る順番を逆にする

どの方法も一瞬考えてから行動することになり、脳への刺激となるそうです。いつもと違うことを行えば、脳は新鮮さを感じて刺激を受けて成長するそうです。

このような習慣を心がけることで、3ヵ月から6カ月程度で違いを感じることが多く、行動が早くなったり、自分の考えを他者に適切に説明できたりする等の変化が現れるという例もあるようです。

日常生活の中でちょっとした変化をつけることで脳が成長するわけですから、やってみる価値はありそうです。脳が遊んでいることなくしっかり働くように刺激する方法は他にもありそうですから、自分自身で工夫してやってみるのもよいようです。

 

 

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