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若年性認知症2(治療、問題点、制度、施設)

若年性認知症2(治療、問題点、制度、施設)

若年性認知症の治療

高齢者の認知症の場合と同様、完治させることは不可能で、進行を遅らせる程度の治療となります。処方される薬も、高齢者の場合と同じものです。

ただ、高齢者の場合とは異なり、若年性認知症では初期の段階で本人が病識(自分は病気であるという認識)を持っていて、大きな不安を抱くことが多いようです。そのため、カウンセリング等を行う等、本人の不安を軽減させるメンタルな治療も重要です。

また、脳に刺激を与えるリハビリも有効であるとされています。在宅での介護が中心である若年性認知症の人が手近でできるリハビリに、「咀嚼(そしゃく;物をかむこと)」があります。
食事の時だけでなく、おやつにガムをかむこと等でも脳に刺激が伝わります。

そして、手足を使う軽い作業運動、音楽や歌もリハビリとしての効果があるようです。料理や編み物、お手玉、楽器の演奏、大きな声で歌う、絵を描く等、本人が楽しんで続けられることを探してみるといいでしょう。

高齢者の認知症にはない問題点

若年性認知症に対する社会の認識が不足している

最近、高齢者の認知症に対する社会での認識は向上し、まだ充分でないとは言え、ある程度の理解が示されることが多くなりました。

しかし、若年性認知症の場合は、発症する人の数が高齢者の認知症と比較して少ないこともありますが、年齢が若いせいもあって、怠けているのではないか、一時的な疲れで甘えているのではないかなどと、誤解や偏見を持たれてしまうことがあります。

最も本人を理解する必要がある家族でさえ、病気であることに気づかず、受診もさせずに放置したり、本人に無理を強いるような間違った対応を行ってしまうことが少なくないようです。

働き盛りの人が発症するため、経済的に困窮してしまう

若年性認知症の発症年齢の世代は、まさに働き盛りであり、子どもがまだ自立していない場合も多いはずです。また、まだ若い時に発症すると、介護が必要な期間も必然的に長くなり、経済的な問題はさらに大きくなってしまいます。

働き盛りの男性が発症すると失業することが非常に多く、家族の生活費はもちろん、子どもの教育費や本人の治療費等をどうするかという大きな問題が出てきます。

介護は配偶者が担うことが多いので、妻が働きながら介護をすることになり、極度の疲労で共倒れになる可能性もあります。一方、妻が認知症を発症すると、夫は仕事を続けることが困難になって退職に追い込まれたり、家事や子どもの世話にまで手が届かず、家庭生活が崩壊してしまう危険性も出てきます。

医療や福祉のサービスが、まだ充分ではない

現在の介護保険制度は高齢の人を対象にすることが基本ですから、若年性認知症の人の場合は、通所や入所施設でのサービスを受けようとしても、サービスの内容が高齢者向けであることや、若くて体力があり、動きが激しい等の理由で利用を断られることもあるようです。そうなると、ますます介護者や家族の負担が重くなってしまいます。

そして、それより以前に、介護保険が適用されるかどうかについても確認が必要になります。介護保険が適用されるのは、認知症の人が40歳以上である場合でも、老化が原因で発症した場合に限られます。

ですから、事故等で頭部に外傷を負った後遺症やアルコールの摂取が原因で発症した認知症は、適用外となってしまいます。

若年性認知症の人が利用できる制度や施設

介護保険の適用外となった場合等に利用できる医療や年金の制度について、紹介します。どの制度もすべての場合に利用できるとは限らないので、受付窓口(市区町村や社会保険事務所)への確認が必要です。

  1. 医療制度
    精神科デイケア、重度認知症者デイケア、訪問介護、ショートステイ、グループホーム、精神科一般病棟・認知症病棟への入院等。
  2. 自立支援医療制度
    通院医療費の90%について、公的な補助が受けられる制度です。
    精神科の外来への通院と、デイケアの費用の支払いに適用されます。
  3. 障害年金
    病気やけがが原因の一定の障害がある状態が認定されると、本人が年金に加入している場合は、年金の種類により障害基礎年金や障害厚生年金が支給されることがあります。
  4. 特別障害者手当
    複数の障害があり、精神または身体に重度の障害がある20歳以上の人で、日常の介護を必要とする場合に支給が受けられる手当です。
  5. 精神障害保健福祉手帳
    所得税や自動車税等の納税面で優遇されたり、交通機関を利用する際、運賃の割引が受けられる等の福祉サービスが受けられますが、自治体によりサービスの内容は異なります。

また、厚生労働省では調査結果をもとに、若年性認知症の人や家族への支援を行うための「若年性認知症コールセンター」を設けて電話相談を受け付けたりする等、徐々に支援体制を整えようとする動きがあります。

今後、若年性認知症への社会の認識が向上し、若年性認知症の人を対象とした介護施設等が充実していくことが期待されています。

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