地中海ダイエット食が認知症対策と言われているのはなぜ

地中海ダイエット食が認知症対策と言われているのはなぜ

地中海ダイエット食は認知症の予防にもなるそうで、注目されるようになりました。なぜ認知症予防に効果があると言われているのでしょうか。

地中海ダイエット食の特徴

地中海ダイエット食の特徴は、以下のように言われています。

  • 緑黄色野菜を多く使うため、抗酸化作用の強いファイトケミカル(植物性食品に含まれる天然の化学物質)が摂取できます。
  • 豆類やキノコ類も多く使うため、食物繊維が豊富です。
  • あまり精製されていない全粒粉の穀物で作られたパスタを多く使うため、穀物の栄養分が摂取できます。
    (日本人がよく食べる柔らかいパンは、精製されて栄養が少なくなった小麦粉から作られています)
  • 魚介類(特に青魚)を多く使うため、不飽和脂肪酸が摂取できます。
  • 仔牛や仔羊の肉を多く使うため、牛肉や豚肉と違って飽和脂肪酸を多く摂取しなくて済みます。
  • ナッツ類には、オレイン酸が多く含まれています。
  • オレイン酸とポリフェノールが含まれているオリーブ油も多く使います。
  • 塩分は少なめですが、ハーブを使って風味を出しています。
  • 食事の際には、赤ワインを飲むことが多いようです。

日本料理も健康的であると言われていますが、地中海ダイエット食と違って塩分が多いこと、オリーブ油は使わないこと、そして精製された白米を食べることは問題であると言えそうです。

 

地中海ダイエットが認知症の予防に役立つ

地中海ダイエット食は、1975年にアメリカのアンセル・キーズ博士が南イタリア料理が優れていることを発表してから、健康維持に役立つ食事として注目されるようになりました。

地中海地方の食事は、肉類やバター等を多く摂取する北欧や北米等とは大きく異なります。

もともと地中海地方では心臓病やがんになる人が少ないそうですが、2013年に、地中海ダイエット食が認知症の予防にも効果があるとされる研究結果が報告されたそうです。

スペインにあるバルセロナ臨床病院のシンタ・バルス・ペドレット氏らによる研究では、地中海ダイエット食で多く使われるオリーブ油とナッツを高齢者の男女447人(平均年齢66.9歳)に多く摂取してもらい、認知機能に変化があるかどうかを調べました。

男女447人を次の3つのグループに分けて約4年間継続して調査し、最終的に334人からデータを得ることができたそうです。認知機能の検査には、MMSE(ミニメンタルエステート検査)CDT(時計描画テスト)という検査が使用されました。

  1. オリーブ油を1週間に1リットル摂取するグループ
  2. ミックスナッツ(半分はクルミで、ヘーゼルナッツとアーモンドが各4分の1含まれる)30グラムを毎日摂取するグループ
  3. 脂肪分が少ない食事を摂るグループ

調査終了後、334人のうち軽度認知障害(MCI)を発症した人はグループ1.で17人、グループ2.で8人、グループ3.で12人ありましたが、認知症を発症した人はいませんでした。

また、グループ1.では記憶力の改善は見られなかったものの、理性や思考をコントロールする前頭葉や認知機能全般が改善したそうです。

そして、グループ2.では逆に記憶力が改善し、前頭葉や認知機能全般は改善しなかったそうです。グループ3.では、いずれも低下してしまったそうです。

 

オリーブ油とナッツが認知症予防には効果的

上記の実験でも使われたオリーブ油とナッツに多く含まれるオレイン酸や抗酸化ポリフェノールには、細胞を活性酸素から守る作用があります。

そのため、オリーブ油やナッツを摂取することで心臓や血管の病気や脳の老化を防ぐことができて、脳の活性化を促して認知症を予防する効果もあるのではないかと考えられます。

また、オレイン酸にはインスリン(血糖値を下げるために膵臓から分泌されるホルモン)の分泌をよくする効果があるため、食事をしても血糖値が急激に上昇しないよう抑制する働きが期待できます。

脳は常に多くの糖を必要としますから、血糖値を左右するインスリンの働きはとても重要であると言えます。

オリーブ油とナッツにはいくつもの種類がありますが、認知症の予防に効果的なのは、化学的な処理を全くしていないエキストラバージンオイルであるとされています。ナッツでは、クルミやアーモンドが好まれることが多いようです。

 

地中海ダイエット食では、魚介類や野菜、オリーブ油をふんだんに使う

地中海ダイエット食の代表的な料理を、いくつかご紹介しておきます。

カポナータ
南イタリアの代表的な料理で、野菜をオリーブ油で炒めた料理です。なすやピーマン、トマト、ズッキーニ等をオリーブ油で炒めて、バジルやニンニク、少量の塩で味付けするものです。
魚介類のアクアパッツァ
イタリアでは、メインの料理としてよく作られるものです。魚介類を白ワイン、トマト、オリーブ油と共に煮込んだ料理です。
スパゲッティ・ボンゴレ
あさりとトマトを使った日本でもおなじみの料理ですが、地中海食では全粒粉のスパゲティを使います。バジルやオリーブ油もたっぷり使います。
ブイヤベース
やはり日本でもおなじみですが、魚介類や野菜をたっぷりのオリーブ油で炒めてから、トマトを加えて煮込みます。
ミネストローネ
イタリアの野菜スープです。具材はたっぷりの野菜とベーコン等で、トマトとオリーブ油を加えます。
ナッツと野菜を使ったサラダ
クルミやアーモンド等のナッツを入れることで、コクのあるサラダになるようです。オリーブ油を加えたドレッシングで和えます。
ナッツと野菜を使ったサラダ
クルミやアーモンド等のナッツを入れることで、コクのあるサラダになるようです。オリーブ油を加えたドレッシングで和えます。オリーブの実を入れることもあるようです。

 

地中海ダイエット食の食材を手に入れるには

地中海ダイエット食の食材のうち、野菜や魚介類、ナッツ等は手近な店でも入手できそうですが、全粒粉のスパゲティ、良質なオリーブ油は入手が難しいこともありそうです。

全粒粉のスパゲティは、スーパー等で市販されているものと違って、茶色っぽい色をしています。外国の食材を扱っている店やデパート、通信販売等なら入手できそうです。

オリーブ油は良質なものを見極めるのが難しいこともありますから、信頼できる店で購入したり、「JAS(日本農林規格)」のマークが表示されている商品を選んで購入したりする方が良いかもしれません。

JASとは、農林水産大臣から認可された日本油脂検査協会が審査して、一定の基準を満たしている認定工場で生産された商品に表示されているもので、安心できる商品のひとつの目安になるとのことです。

ナッツ類は油を使って加工してあることが多いので、油が酸化していない新しいものを選んで摂取することが大切です。また、ナッツ類は塩で味付けをしていることも多いので、無塩のものを選べば塩分の摂り過ぎを防ぐことができます。

まずは手に入りやすい食材を使って、地中海ダイエット食を試してみるといいでしょう。

 

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