血液からアルツハイマー病を早期発見
2014年11月、愛知県の独立行政法人国立長寿医療研究センターなどのグループが、血液を調べることにより、アルツハイマー病の原因となる物質が脳の中に蓄積しているかどうか、判定できる技術を開発したと専門誌に発表しました。
アルツハイマー病で問題となる「アミロイドベータ(β)」
アルツハイマー病で問題となる物質は、「アミロイドベータ」というタンパク質だと言われてきました。脳内の老廃物というべき物質で、これが蓄積して大きくなることによって、神経に傷を付けて脳が萎縮して、物忘れなど認知症の症状が発生するとされてきたのです(現在異論があります)。このアミロイドベータは、アルツハイマー病を発症する15年以上前から脳内に蓄積し始めることが分かっています。
血液検査でわかる「アミロイドベータ」の蓄積量
研究では、高齢者男女62人のグループを対象にして、脳内のアミロイドベータの蓄積状態を検査しました。その結果、健常な人の血液と比べて、脳内にアミロイドベータが蓄積した人の血液は、「アミロイド前駆体タンパク質」という物質の量に変化があることがわかりました。
アルツハイマー病患者は、「アミロイドベータ」と「アミロイド前駆体タンパク質」の量が、健常者とは逆転しているという結果がでました。血液中の「アミロイドベータ」と「アミロイド前駆体タンパク質」の比率を調べることで、脳内のアミロイドベータの蓄積状態を判定することが可能になったそうです。
認知症を診断してきたこれまでの検査方法
これまで、脳内のアミロイドベータの状況を調べる検査として主だったものは、「PET検査」でした。がん検査の分野で注目されている方法で、体に薬剤を注射して反応を専用の機械で画像化する診断法です。
しかし、大規模な設備を導入している病院が少ない、検査費が高額であるなどの問題があり、認知症の早期発見を目的に検査を受ける人は少ないのが現状のようです。
アルツハイマー病を早期発見する「バイオマーカー」として期待
がん検査では、肝臓がんや大腸がんの診断に血中の「バイオマーカー」が既に利用されています。「バイオマーカー」というのは、血液や尿、または体の組織に含まれる物質で、体の状態を知るための基準となるものです。
例えば、健康診断などで肝臓の機能を調べる項目で「GOT」「GPT」というのを見たことがある方も多いと思います。血液中のこの数値を基に、自身の肝臓の「状態」を判断しています。これが「バイオマーカー」のひとつです。
血液を調べることで、認知症の症状が出る前に進行を発見する「バイオマーカー」として活用できるようになれば、健康診断などの身近な検査にプラスされることなども考えられます。そして、より多くの人の、認知症の早期発見につながるかもしれません。