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認知症不明者の急増で警察犬の出動が増加するが、警察犬は減少傾向

認知症を患っている方の症状で、社会的に問題とされやすいのがいわゆる「徘徊」です。正確には、本人に目的がある場合には徘徊と言い切れない場合があるかもしれませんが、目的が間違っていたり、途中で道が分からなくなるケースが多く、行方不明になる場合も多いようです。

時間が長引けば、事故にあう危険も増し、命の危険も迫り、介護者の責任が問われる可能性もあります。

そんな方を探す際に大いに活躍しているのが警察犬です。しかし現在、その警察犬が減少傾向にあるのだそうです。

警察犬とは

警察犬とは、人間よりも遥かに鋭い犬の嗅覚を活かして、足跡を追わせたり、匂いで場所を特定したり、ものを選別することで捜査に加わる犬のことを指します。

警察犬には、警察が直接飼育・管理している「直轄警察犬」(以下「直轄犬」)と、民間人が飼育・管理している「嘱託警察犬」(以下「嘱託犬」)の二種類があり、現状では「嘱託犬」のほうが数が多いそうです(全警察犬のうち、嘱託犬で約90%)。都道府県によっては「直轄犬」はいない場合もあります。

認知症患者の徘徊増加で警察犬の需要も増加

ここ数年、警察犬の出動件数が増えています。2014年には9329件で、約10年前の2005年と比べると1.34倍です。

出動件数が増えた理由ですが、その主要な要因は高齢者の増加ではないかといわれています。高齢者の増加によって認知症患者も増え、それに比例して(徘徊も含めた)行方不明者も増えていると考えられているのです。

警察犬は犯罪捜査に加わることももちろんありますが、行方不明者の捜索にあたることも多く、徘徊による行方不明者の捜索を要請されるケースが増えているものと思われます。

活躍が期待されるも警察犬は不足

しかし、需要が増えているにも関わらず、警察犬の数は減少し、不足しているそうです。

2014年で1351頭ですが、これはここ10年では最低の数です。数が減っているのに出動件数が増えれば、一頭当たりにかかる負担が増してしまいます。必要度は上がっているのに、どうして警察犬が減少しているのでしょうか。

なぜ警察犬は減少しているのか

減少の大きな理由は、「嘱託犬」の減少です。「嘱託犬」は多くの場合、飼い主が指導手となり、犬を訓練する必要があります。もちろん飼い主自身が訓練できるとは限らないので、訓練業者に訓練を頼むこともあります。そうすると、通常の犬の世話代に加えて、訓練業者に払う費用が別途発生します。

さらに、仮に警察犬になれたとしても嘱託犬は一年ごとに審査をして選ばれるので、常時訓練を必要とします。そこでまた費用が発生してしまうのです。

一回の出動でもらえる報酬は約7000円ほどで、出動件数にも限度があるので、大きな収入にはならないようです。

こうなると、経済的に赤字であることが多く、事実上のボランティアになっているケースもあると言われています。さらに、出動を要請される時間は昼夜を問いません。別に仕事を持っていれば出られないこともありますし、深夜の出動は体力的に厳しいものがあると思われます。

このように経済的理由といつ出動を要請されるか分からないことから、警察犬を目指そうとする飼い主が減少し、結果的に「嘱託犬」も減少してしまっているようです。

海外の例

アメリカでは、「保護された犬を警察と非営利団体が連携して警察犬にするプロジェクト」があるそうです。

アメリカでも警察犬に多くのお金はつぎ込めず、寄付金などでまかなっているようです。そのため、犬を譲ってもらえて訓練費用も団体が負担してくれるので警察にも利点があり、保護された犬が活躍できる場所を提供できるので団体としても喜ばしいということなので、今後広がるかもしれません。

これから需要増が見込まれるので、日本でも海外の例を参考にしたり、補助を増やす、嘱託犬でも出動要請時間をあらかじめ決めておくことなどで、飼い主の負担を減らして、より多くの人や犬が警察犬に挑戦するようになっていくといいですね。

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