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「寝たきり老人」がいない?スウェーデンの終末医療に大きな違い

世界の157ヶ国を対象とした「世界幸福度調査」という調査が、4年前から行われています。2016年度版では、1位のデンマークをはじめ、上位を北欧諸国が多く占めています。日本は53位です。

ここでは、10位にランクインしているスウェーデンの人たちが、どのように最期を迎えるのか見ていきましょう。

スウェーデンは幸福度が高く、寝たきり老人ゼロ

通常、高齢になると口から食事をすることが難しくなる時期を迎えるのですが、スウェーデンでは、経管栄養(鼻や腹部から胃に管を通して、高カロリーの栄養を摂取する方法)や点滴等の延命処置は一切行わず、高齢者が脱水や低栄養の状態になることも当たり前のこととして、そのまま自然な看取りにつないでいくとのことです。

少しでも口から食事ができるよう、食事介助には力を入れるそうで、嚥下(食べ物を飲み込むこと)訓練の専門職である言語療法士が関わることもあるそうです。

高齢者の施設でも寝たきりの人はいないそうで、自力でベッドから起き上がれない高齢者でも、スタッフの介助で車椅子に座り、他の入所者と共に食事を楽しんだりするそうです。また、病人のように終日パジャマで過ごすのでなく、好みの服に着替えて明るい雰囲気で暮らしているとのことです。

すべてにおいて高齢者本人の意思を尊重するため、たとえ危険を伴うような単独での散歩や飲酒等であっても、本人の自己責任で許可することもあるようです。

最期を迎えるまで、人生を楽しむことが大切にされているのです。

 

日本の終末医療では延命を行い、寝たきり老人が多い

一方、日本の終末医療では、多くの場合は経管栄養や点滴の処置をして、延命を行うことがほとんどです。肺炎を起こした高齢者には、治療のための抗生剤投与を積極的に行うことが多いようです。

さらに、経管栄養や点滴の管を自分で抜こうとする高齢者に対し、ベッドに腕を固定したり、職員の人数が少ない夜間は安定剤を投与して、一人で歩いて転倒しないような処置をすることもあるそうです。

これは、高齢者がどのような状態であっても生き続けることを優先し、施設側の責任も問われないための手段であるようです。

日本の医療技術は進歩していますから、ベッドの上で意識がない状態になっても、5年、10年と生き続ける高齢者も少なくありません。しかし、点滴で水分を摂取すれば痰も多くなり、苦痛を伴う吸引(鼻や喉に管を入れて痰を吸い取る処置)をしなければなりませんし、寝たきりの状態ではり床ずれもできて苦しむことになります。

誤嚥(ごえん:飲食物が食道でなく気道に入ること)を防ぐために胃に管を入れたものの、その管が原因で誤嚥性肺炎になるという矛盾も起きています。

現在の日本の終末医療の方法の多くは、スウェーデンとは正反対であると言えるようです。

 

スウェーデンの介護制度は在宅介護が基本

スウェーデンの終末医療でも、かつては日本のような方法が主流だったそうで、20年もかかって現在のような方法に変わったようです。

現在のスウェーデン人と日本人の平均寿命を比べると、スウェーデン人が81.7歳、日本人が83.1歳で、大差はありません。それでもスウェーデンの老人がほとんど寝たきりにならないのは、なぜなのでしょうか。

スウェーデンでは、誰もが自立して暮らすことを大切にする文化があるそうです。

高齢者は子供と共に暮らすのではなく、夫婦または一人で自立して暮らすのが普通であり、子供は義務教育を終えると、親元を離れて一人で暮らすそうです。そうすることで、高齢者は若者を頼らず自力で生活をし続けることになり、自立が維持できるようです。

体調が悪くなったりしても、自治体が介護サービスを提供するのが基本であり、家族が中心になって介護することはありません。成人した子が親を扶養する義務はなく、すべてコミューン(日本の市町村に該当する自治体)が責務を負うとのことです。

日本では、在宅と施設どちらかの介護サービスが選べますが、スウェーデンでは在宅介護が基本です。要介護状態であっても、終末期に入るまでは施設での介護は受けられないという制度になっているそうです。これは、自立を大切にするからだけでなく、介護の財源の問題でもあります。

施設ですべての高齢者を介護するのは、財源の問題からも困難であり、よりコストがかからない在宅介護が基本となるのです。

 

社会保障や福祉制度の日本との違い

スウェーデンの手厚い福祉制度は、世界的にも有名です。

介護費用は、少額の自己負担以外はすべて税金で賄われるそうです。教育に関しては、大学までの教育費がすべて無料です。そうなると、国民が納める税金の負担も大きくなり、軽減税率が導入されているものの、消費税は25%です。

国民が所得全体で税金や社会保障費を負担する割合は、スウェーデンは58.9%、日本は43.4%とのことです。

スウェーデンの財務省によると、納めた税金や社会保障費の45%は年内に、38%は生涯を終えるまでに納税者にサービスとして還元され、残り18%は国民全体へ配分されるようになっているそうで、国民はこのことに納得しているようです。このような点も、国民の幸福度につながっていると思われます。

日本のように、増税しても国民には何が良くなったのかわかりにくかったり、国民が優先的に必要だと思われないことに多くの税金が使われていたり、預けていたはずの巨額の年金が紛失したり、老後には自力で暮らしをまかなえないほどの貧困の恐怖が待ち受けているのでは、体制に信頼がおけなくなるのは無理もないことでしょう。

また、スウェーデンでは相続税は2004年に廃止されています。節税を考えて海外へ資産を移す富裕層のことを考えて廃止したそうですが、国民からの批判もないそうで、2015年から相続税が増税された日本は、税制に関してもスウェーデンとは逆の方向へ進んでいることになります。

 

スウェーデンと日本の死生観の違い

かつては、現在の日本と同様に経管栄養等の延命治療を行っていたスウェーデンでは、死に対する意識が徐々に変化してきたそうです。無用な延命をして苦しみながら生かされ続けるよりも、穏やかで自然な尊厳ある最期を迎えることの意義が、死生観として生まれてきたのでしょう。

終末期になれば、口から食事ができなくなるのは当たり前なので、経管栄養等で人工的に延命することは非倫理的であると、国民は認識しているようです。経管栄養等の処置は、高齢者への虐待であるという考え方もあるそうです。

日本でも、昔は延命治療など行う術もなく、食べられなくなった高齢者は、自分の家で静かに亡くなっていたようです。しかし、医療技術の進歩で延命が可能となり、死生観も変化したのかもしれません。

「医は仁術」として、人命には無闇に手を下してはならないという倫理観を持つ医師が、日本には多いようでもあります。点滴ひとつにしても、「何もしてくれないと心が痛む」という家族の意向に沿うため、情緒的ケアとして行う場合もあるようです。

日本では、先祖を崇拝して個人のお墓を大切に守っていくという考え方を持つ人が多いのですが、スウェーデンでは異なり、死んでしまえばおしまいと考えるのが一般的であるようです。

スウェーデンの首都であるストックホルムの郊外に、世界遺産にもなっている「森の墓地」という共同墓地があります。自然と一体となった緑が溢れる美しい墓地で、誰でも死んだら森に還っていくものであるという考えのもと、墓地の中に共同で散骨をするそうです。既に、12万人もの人がここで眠っているそうです。

 

終末医療や介護も含めて、日本の制度全体の見直しが必要

スウェーデンの終末医療の方法をそっくりそのまま日本で行うことには、もちろん問題があるでしょう。

日本では、自然な形で看取りを行う施設は限られていて、容態が悪化すると施設から病院へ搬送されて、延命処置へとつながってしまうことがほとんどです。まるで、自然に任せて何も積極的な治療を施さないことがタブー視されているかのようです。

しかし、延命処置を行うことがかえって高齢者を苦しめる場合があることに、国全体が気づくことが必要なのではないでしょうか。

今後、団塊の世代の人たちが後期高齢者となり、延命処置がさらに増加する可能性があることは、既に存続が危ぶまれている健康保険制度を大きく揺るがすことになるかもしれません。その一方で、病院の経営面の理由から延命処置を行うような場合も少なくないと聞きます。日本では、経管栄養等の延命処置を行えば、病院が受け取る診療報酬がアップする仕組みになっているようです。

もはや、人の尊厳はもとより、国全体で様々な制度の見直しを進めて行かないと、日本の介護や医療の制度が立ち行かなくなってしまう段階がくるように思われます。

 

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