認知症の徘徊・行方不明対策「大牟田モデル」2
「大牟田モデル」とはどんなものなのか
福岡県大牟田市は、65歳人口の割合を示す高齢化率が2014年4月1日現在で32.4%に達する高齢化率の高い自治体です。市は「高齢者等SOSネットワーク」を構築するだけでなく「模擬訓練」も実施しており、地域ぐるみの取り組みが全国の自治体の「お手本」として注目されています。
具体的には、警察に捜索願が出ると地元の郵便局・駅・タクシー協会・ガス会社など協力団体に連絡がゆき、さらに郵便局員・タクシー運転手・従業員に情報が流れます。また、民生委員を経由して校区内の公民館・学校・PTA・商店など市民にもその情報が伝えられます。こうして地域ぐるみで行方不明者を捜す体制を取ることで早期保護を目指しています。
「模擬訓練」では「認知症による徘徊でお年寄りの行方が分からなくなっている」との想定で、高齢者が「行方不明者」に扮し、地元の人たちが市内を巡回しながら該当者と思われる人に声をかけるなどして保護を試みるもの。
最初はたった1校区から始まったこの取り組みは、2013年には全校区が参加するに至り、参加人数は2000人近くに上ります。訓練で学ぶ重要なポイントは徘徊者への「声掛け」で、市はホームページ上で細かなコツを公開しています。
浸透するまでには自治体や当事者の努力があった
とはいえ、この大牟田市でも最初からうまくいったわけではありませんでした。
2002年に行った実態調査では「地域で認知症の人を支える仕組みは必要ですか」という質問に「必要ない」「行政や病院に任せればよい」と答えた人も多かったのです。けれども一方では「高齢化に伴う切実な問題をそのままにしておくことはできない」と多くの人がと答えました。
こうして自治体では「認知症サポーター養成講座」や「徘徊者への話しかけ方の講座」、さらには子どもの頃から認知症を学ぶための「絵本教室」などを開催することで、市民に認知症への認識を広めています。
最近では、社会貢献を目的に事業所や行政機関が自主的に協力を申し出てくるといいます。その成果として、夜間でも休日でも4千か所以上に徘徊情報が届くようになりました。
「認知症、知っててあたりまえのまちをつくろう!」などをスローガンに、10年間まちづくりに取り組んでいる大牟田市。自治体によればまだ到達度は40点くらいとのことですが、着実に成果が出てきていると言えるのではないでしょうか。
大牟田モデルが機能するためには地域ぐるみの注意が必要
国内の認知症とその予備軍の高齢者は合わせて860万人余り、高齢者の4人に1人に上ります。私たちのご近所に認知症のお年寄りがいておかしくありません。
全国の「お手本」となった大牟田モデルが他の地域でも機能するためには、普段から身の回りの高齢者に気を配り、関心をもつことによって、地域ぐるみで徘徊のサインを見逃さないことが欠かせない要素となりそうです。