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症例5[つきまとい・病院の診察を拒否]

症例5[つきまとい・病院の診察を拒否]

症例5:始終つきまとう。病院に連れて行こうとすると拒否する

症例

物忘れ、つきまとい、病院へ行くことを拒否する実例として、以下のケースを紹介します。

(ここから「認知症「不可解な行動」には理由がある」佐藤眞一氏著 より 抜粋して引用)

Fさん(77歳、女性)は、10年前に夫を亡くし、しばらく1人で暮らしていましたが、70歳になったのを機に長男一家と同居しました。現在は長男(53歳、不動産会社経営)とその妻(53歳、専業主婦)、孫(21歳、男性、大学生)の4人暮らしで、別の町に次男がいます。

Fさんの物忘れがひどくなったのは、3年ほど前からです。眼鏡がない、財布がない、鍵がないなどと言っては、しょっちゅう家の中を探しまわっていましたが、長男の妻がいっしょに探すと、たいていは箪笥の引き出しや台所、玄関の棚の上などにあり、「おばあちゃんも年だから」で、済んでいました。

ところが1年ほど前から、かかりつけの医院に行って道に迷い、帰ってこられなくなったり、孫を長男と間違えて話しかけたり、旅行に行って着替えやお土産を鞄の中に詰めることができなくなったりと、明らかにおかしな行動が目につくようになりました。

さらに、長男の妻の姿がちょっと見えないと探しまわったり、掃除や洗濯をする間中、後ろを付いてまわったりします。そこで妻が、「認知症じゃないかと思うから、病院に連れて行きたいんだけれど」と相談すると、長男は「まさか。病院に行くほどじゃないだろう」と、一旦は否定しました。が、日中の行動を詳しく説明すると、「じゃあ、念のため」と、やっと物忘れ外来に行くことを承諾しました。

ところが、Fさん本人に「この頃ちょっと物忘れが多いから、念のため一度診てもらいましょうよ」と言うと、「私は物忘れなんかしないよ。何を言ってるんだ!」と、いつもの温厚な態度からは想像できないような激しい口調で、言い返します。日を置いてもう一度言いましたが、頑として受け付けません。しかたがないので、これまで通り長男の妻が世話をしていますが、始終つきまとわれるので自分の用事ができず、イライラが募ってきてしまいました。

(ここまで「認知症「不可解な行動」には理由がある」佐藤眞一氏著 より 抜粋して引用)

原因

Tさんは記憶に障害があり、いろいろなものがないと言って探したこと自体も忘れますから、「物忘れが多い」と言われても、自覚がないはずです。ましてや「物忘れがひどくなってきた」という自覚もないので、なぜ病院へ行かなくてはならないのか理解できません。

どこも悪くなくて健康だと思っているのに、老人扱い病人扱いをされた気がして、プライドもあって激しい口調になったものと思われます。しかも、日頃掛かっている内科等ではなく物忘れ外来へ行くなどと言うと、余計に気を悪くして受診を拒否してしまうかもしれません。

また、長男の妻に始終つきまとう行動(シャドーイング)は、強い不安があるからだと思われます。認知機能の低下により何となく不安を感じ、自分一人が取り残されるのではないかと思って、一人になるのをこわがっているようです。

対応

家族の対応としては、以下のようなことが考えられます。

物忘れのことは口に出さず、健康診断の名目で病院へ連れて行くのも、ひとつの方法かもしれません。診察時に、本人の自覚のない症状を本人の前で医師に話すと、プライドが傷ついて検査等も拒否するかもしれませんから、症状をメモに書いて看護師さんから医師に伝えてもらうなど、予めできることがないか検討してみることも必要です。認知症が進行しつつある場合は、早めに要介護認定を受けて、いつでも介護保険のサービスを受けられるように準備を整えておく必要があります。

要介護認定を受けるためには医師の診断が必要ですから、必ず病院へ連れて行かなくてはなりません。でも、嫌がっているのに無理に連れて行くと、本人はいっそう不安になって、うつ傾向になることもありますし、(病気だという自覚がないので)深く傷ついてしまうこともあります。

どうしても病院へ連れて行くのが難しい時は、保健所地域包括支援センターなどで相談してみましょう。また、かかりつけの医師がいる場合は、力になってもらうことも考えましょう。家族の言うことは聞かなくても、日頃診てもらっている医師の言うことなら聞くことがあります。かかりつけ医から専門医の受診を勧めてもらえば、気持ちが動いて受診に応じる場合もあるようです。

 

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