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在宅介護か施設介護か

在宅介護か施設介護か

老後をいかに暮らすか

長い老後をどこでどのように暮らすかということは、長寿社会を生きていく上で、誰もが考えなくてはならないことです。

介護サービスを利用すれば自宅で暮らせる場合もあるでしょうし、認知症の状態になってしまう場合もあります。また、家族と同居する場合もあれば、別居する場合もあるでしょう。

いろいろな場合を想定すると、次の4つの暮らし方を選択肢として挙げることができます。

1.
ずっと在宅介護で(自宅で介護保険の在宅サービス等を利用し)、施設に移ることなく最期を迎える。
この場合は、家族と同居していることが前提で、家族が最後まで介護を続けることが必要です。そして、家族だけでなく近隣に頼れる親類や知人がいて、何かあれば往診が可能な主治医を持つことが望ましいでしょう。自宅の環境が高齢者に適した安全性を備え、生活至便な立地であれば、なおいいでしょう。介護保険のサービスだけでなく、いろいろなサービスを組み合わせて利用することも必要です。
2.
介護保険の在宅サービス等を利用して、できる限り自宅で暮らし、
状況により介護が受けられる施設へ住み替える。
最期を迎えるまで自宅で暮らす場合と共通した部分がありますが、施設へ住み替えるタイミングを見極めて、本人や家族にできるだけ負担が掛からないようにすることが大切です。住み替えが必要になってから施設を探すのではなく、予め情報を収集して、入居先を検討しておく必要があります。
急な入居の場合は、本人の意向よりも施設側の空床(ベッドに空きがあり、定員に余裕があること)の有無が優先され、家族が決めてしまう場合が多くなります。
3.
自立して生活できている場合でも、介護が必要になった時のことを考えて、
介護も受けられる施設へ早めに住み替える。
本人が元気なうちに、自分で施設の情報を収集して検討できるため、ある程度納得して決めることができるようです。子どもがいない場合や、子どもがいても頼らない場合は、早めに住み替えると安心できますし、新しい環境になじめば、生活を楽しむこともできます。介護も受けられる施設なら、再度の住み替えを考える必要もありません。健康面や身の回りのことが不安な場合も、安心して暮らせるようです。
4.
まだ介護は不要で生活は自立しているが、より安心して暮らせるよう、見守りが可能な高齢者住宅へ住み替えて、介護が必要になった段階で、介護が受けられる施設へ改めて住み替える。
自立して生活できる間は問題ありませんが、上記の3の場合と違って、介護が必要になってから再度の住み替えとなるので、やはり最終的に入居する施設を早期に検討しておく必要があります。

在宅介護の問題点

在宅介護にしても施設介護にしても、利点もあれば難点もあります。このサイトの「同居介護か別居介護か」のページにもあるように、たとえ親子や家族であっても、互いの思いを受け容れ合って良好な関係を築いていくのは、困難なことが少なくありません。

「家族といっしょに暮らすことが当然であり、最も幸せであるはずだ」とか、「施設に入れるのは世間体が悪い」という考え方が、日本ではまだまだ根強く残っていますが、そんなきれい事をいっていられない現実があります。

在宅介護の場合、中心になって介護を担う人が心身ともに健康であり、家族の協力が得られ、介護や医療機関の支援も受けられるかどうかが大切です。自宅と施設のどちらの選択が正しいかということではなく、どちらが本人と家族にとって最善であるか、もっと言えばどちらが継続可能な方法なのか、ということです。

特に、認知症の人の介護の場合、意思の疎通が難しくなってきたり、徘徊などの周辺症状が現れて片時も目が離せなくなったりするなど、認知症の進行に伴って、介護者が対応しきれなくなる可能性があります。異常行動や言動などによって介護者の負担が限界に来て、もはや在宅介護は不可能な状態に追い込まれるケースは少なくありません。

家族の方にも、例えば転勤や病気、子どもの受験等が重なって、介護自体が困難な場合もあるでしょう。認知症の人がたどっていく経過について医師からも説明を受けて、家族や親戚で納得がいくまで話し合い、介護の中心となる人をみんなで支えていくことが必要です。

施設介護の問題点

老後を過ごす施設には色々な種類があり、入所できる基準も異なります。

このサイトでも主な施設の内容について触れていますが、入所先の候補を具体的に絞り込む段階になれば、施設ごとに個別に情報収集する必要があります。施設を探す手段として、市区町村の介護保険の窓口や新聞・雑誌の広告、インターネット、施設の協会や財団等があります。忘れてはならないのは、費用の支払いが続けられるように、資金の準備や負担について家族で話し合い、周到な準備をしておくことです。

ところで、たとえ入所を希望しても、要介護度で制限があったり費用の面で困難であったり、どうしても色々と制約があるものです。また、医療面のケアが必要である人(例えば、点滴、人口呼吸器、栄養補給のため胃にチューブを入れる“胃ろう”や、人口肛門・膀胱などをつけている人)や、感染症に罹っている人、認知症の人等は、受け入れが可能かどうか、事前にしっかり確認しておく必要があります。実際に見学や体験入居もして、居室や設備等を目で見て確かめることも大切です。

費用の面でまず気になるのが、入居一時金が必要な場合です。百万円単位でかかる施設も多く、中には億がつく金額が提示されている施設もあるようです。もちろん、入居一時金が不要な施設もあります。何かの事情で退去した場合、支払ったお金の一部が返還されるかどうかでトラブルになることも少なくないようです。入居一時金の他に、介護一時金が必要な施設もあります。施設を経営する事業者が破綻する場合もあるので、可能であれば、事前に経営状況等の情報も収集できれば安心です。

そして、実際に入所すると月々の支払いが発生するわけですが、その内訳や金額等も事前に確認しておく必要があります。介護保険の適用になる部分と自己負担の部分があり、わかりづらい面がありますから、納得できるまで説明を受けましょう。また、上乗せで介護費用の請求があったり、説明を受けた通りのサービスが受けられなかったりというトラブルもあるようです。

施設には相談窓口が設けられている場合がありますから、気になることは相談するといいでしょう。公的な機関では、トラブルの相談窓口は国民生活センターと各地にある消費生活センターです。

 

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