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インフォーマルサービスを利用する

インフォーマルサービスを利用する

介護保険制度の問題点

2000年に介護保険制度が発足してから、介護を必要とする人への支援については一定の評価がされていますし、国際的な評価も高いようです。しかし、介護保険制度が要介護者(介護を必要とする人)本人だけを支援するものである以上、どうしても要介護者の家族への支援にまで手が届かないという問題があります。

そもそも介護保険制度は、主に介護者となるのは中年世代の女性(40~50代くらい)であり、仕事を持たない専業主婦であることを想定して作られています。要介護者の娘や、息子の妻が介護者となることが多いであろうと考えられていたのです。

未婚の男性や高齢の配偶者が介護の担い手となっている

しかし現実には、結婚して親元を離れるのでなく、未婚のままで親と同居を続ける人が増加し、高齢者だけの世帯も一層増加していますから、未婚の男性や高齢の配偶者が介護の担い手となるケースが増加しているのです。

同居している子どもは仕事を持っていて留守がちであることが多く、例えば、デイサービスやデイケアの送迎を受けるのに支障が出ることもあります。デイサービスやデイケアの送迎の際は、要介護者の家族が自宅で待機し、送迎担当の職員と互いに申し送りを行った後、利用者を送り出したり迎え入れたりする必要があるからです。

これらのサービスでは、通常、家族が勤務する一般的な職場の勤務開始時刻と同じ頃に利用者を迎えに行き、勤務がまだ終わらない夕刻には自宅へ送り届けることがほとんどなので、仕事を持つ人が自宅で待機することは難しい場合が多いのです。

インフォーマルサービスで不足を補う

公的なサービスである、介護保険内のサービスを「フォーマルサービス」と呼ぶことがあります。これに対して、介護保険外のサービスのことを「インフォーマルサービス」と言います。

介護保険は行政サービスのひとつですから、サービスの継続は確実でサービスの質が安定している上、責任の所在もはっきりしていて安心して利用できます。しかし、その反面、緊急時の対応に時間がかかり、柔軟性に欠けるという面が問題であるようです。

一方、インフォーマルサービスの場合は柔軟で多様性のあるサービスが期待できますが、サービスの継続性や責任の所在の面で不安が残る場合があるようです。それぞれのサービスでは充分でない部分を補うためには、両方のサービスを適切に組み合わせて利用することが必要です。

インフォーマルサービスの内容

ほんとうに支援が必要なのは、要介護者本人だけではありません。

家庭で介護を担う人の場合、仕事を持つ人なら、仕事に加えて家事や、場合によっては育児、そしてその上に慣れない介護も行うことになります。そのような負担の大きい状況で、例えば介護保険内で訪問介護を受けたとしても、ホームヘルパーに家族の食事は作ってもらえませんし、洗濯や掃除等も同様で、家族への支援はないわけです。

現在の介護保険制度ではカバーできないこのような問題を解決するために、制度をさらに整えることが急がれるわけですが、それまではとても待てない人が多いはずです。そのため、インフォーマルサービスが注目されるようになったのです。

インフォーマルサービスは、NPO(利益を目的としない非営利団体)、社会福祉協議会、生協、JA、ワーカーズコレクティブ(利益だけを目的とせず、地域貢献を優先する事業体)等が提供していることがほとんですが、地方自治体が提供している場合もあります。ボランティアとして無償で利用できる場合と、低額な費用で利用できる場合があるようです。

インフォーマルサービスの例

インフォーマルサービスにはどんなサービスがあるのか、主なものを紹介しておきます。

1.NPOが提供するサービス

NPOの中には、訪問介護事業所として介護保険内のサービスを行っている所もありますが、介護保険外のサービスを提供している所もあります。その内容は、家事援助や通院・外出の付き添いや送迎話し相手入院した時の身の回りの世話家庭での見守り(特に認知症の場合)等です。

日常生活の中のほんの小さなことでも支援してもらえるようです。高齢者と職員が一緒に過ごすことで家に引きこもることを防ぐ、サロンのような場を提供している所もあります。NPOは地域に根ざして活動している団体なので、それぞれの地域の情報も豊富で、地域に密着したサービスが受けられます。

2.社会福祉協議会(通称:社協)が提供するサービス

社会福祉協議会は、都道府県と政令指定都市、市町村それぞれに1ヵ所ずつあります。地域の福祉を推進し向上させる目的で作られました。それだけに、地域それぞれの事情に応じた活動が中心になっています。

サービスの内容は、家事援助デイサービス送迎安否の確認ゴミ出し給食声掛け生活福祉資金の貸付等があります。

また、社協はボランティアグループや介護者家族の会についても情報を持っています。特に、「認知症の人と家族の会」は全国的な組織で各地に支部がありますが、この会以外にも、地域ごとに介護者である家族が集まって自助グループ(何らかの問題や悩みを抱えた人が自発的に結びついた集団)を結成しているようです。介護の経験者から体験談を聞いたり、悩みを打ち明けたりすることは、ストレス解消につながるとても有効な方法です。

3.生協(生活協同組合)、JA、ワーカーズコレクティブが提供するサービス

NPOと同様、介護保険の事業所として介護保険内のサービスも行っている所が多くあります。地域に密着した活動をしているので、要介護者が住み慣れた地域でケアを受けることで安心して暮らせるようなサービスを提供しています。地域の民生委員や老人会、町内会との交流をはかりながら活動している所もあるようです。

サービスの内容は、主に家事援助外出の付き添い庭掃除などですが、宅老所(デイサービスと同じような、高齢者が過ごせる場所)を設けている所もあるようです。

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