レビー小体型認知症を知る
レビー小体型認知症を知る
認知症を「治す」ための治療法(薬物療法)に、「コウノメソッド」があります。すでに多くの認知症の人やその家族がこの療法に救われているようです。河野先生の書籍の内容などを元に、その要点を紹介します。
認知症にはアルツハイマー型に次いでレビー小体型が多い
これまでは、認知症といえばアルツハイマー型認知症か脳血管性認知症が圧倒的に多いと考えていた人が多かったのではないか、と河野先生は言います。
ところが、実際の河野先生の外来では、アルツハイマー型認知症の次にレビー小体型認知症が多いと言います。種類別に分けると次のような割合です。
- アルツハイマー型認知症(60%)
- レビー小体型認知症(12%)
- 混合型認知症(10%)
- 脳血管性認知症(8%)
- ピック病(5%)
- その他(5%)
※「混合型認知症」とは、アルツハイマー型に脳血管性認知症を併発した場合なので、これもアルツハイマー型に分類されるかもしれません。そうするとアルツハイマー型は全体の7割にもなります。
レビー小体型を見逃すことが、患者や家族を苦しめる
レビー小体型認知症は以前からあったにもかかわらず、これまでアルツハイマー型やうつ病、パーキンソン病という診断の陰に隠れて、気付かれにくかったといいます。河野先生はこれを「隠れレビー」と呼びます。
隠れレビーのために、本来レビー小体型に施される薬ではなくアルツハイマー型用の薬を与えられたりすることで、つまり投薬ミスをして、改善するどころか、患者の症状を悪化させたり命を危険にさらし、ひいては家族に不安や苦しみを味あわせているケースが多い、というのです。
今アルツハイマー型だと思っている患者さんは実はレビー小体型かも知れず、また認知症のタイプは変わっていくこともありえるので、将来レビー小体型になる可能性もあるのです。それなのに詳しく診断をせず、例えばアルツハイマー型と断定して治療を続けることは危険だと、河野先生は警告します。
早期のうちにこの隠れレビーを見つけて、患者さんと家族を救うことが重要なようです。
レビー小体認知症の特徴
「認知症の種類」でレビー小体型認知症を紹介していますが、河野先生の観点から改めてその特徴を記載します。
レビー小体型認知症は、パーキンソン病やアルツハイマーと関連性があるといいます。いずれの病気も脳内の神経伝達物質が低下するのですが、三者は以下のような関係のようです。
- パーキンソン病はドーパミンが不足する病気
- アルツハイマーはアセチルコリン不足する病気
- レビー小体型認知症はドーパミンとアセチルコリン両方が低下する病気
パーキンソン病は、脳幹にレビー小体という特殊な物質が出現してドーパミンが不足するために起こるようですが、レビー小体認知症はレビー小体が大脳皮質出現するため、認知症になるとのことです。レビー小体認知症の症状・特徴は以下のとおりです。
- 幻視がある
※幻視・・・実際にそこに無いもの、例えば虫・小動物・人・子供などが見える幻覚の一種 - 薬剤過敏性(薬が効きすぎる性質)がある
- 腕を振らずに、ゆっくりと小きざみ歩行(すり足歩行)をする
- 上半身がやや前に傾いている。左右に傾いていることもある
- 両腕が固まっていて、体の(真横ではなく)前側に位置している
- ひじの関節が硬く曲がっている
- 手の指を握っている
- 指の変形が見られる(たまふれあいクリニック・小関先生)
- 無表情で元気がない
- 話す相手を見ないことがある
- すぐに寝てしまう(診察の最中にも寝てしまう)
- 夜中に寝言で叫びだす
- 食後に長く座っていると、意識を5分程度失うことがある
- 寝ていたかと思うと、突然歩き出す
- (改訂長谷川式簡易知能評価スケール)などの知能テストは高得点で、認知症と思えないこともある
- 75歳前後の痩せた男性に多く見られる
認知症、幻視、パーキンソン症状の各症状が見られれば、レビー小体型認知症であるといえるようです。
レビーの多くの場合は坂を転げ落ちるぐらい進行が早く、「歩行障害」→「嚥下障害」→「寝たきり」と一気に進行する場合があるので、一刻も早い対応が必要だということです。
レビー小体型認知症はまじめな男性に多い
アルツハイマー型認知症が男性に比べて女性に多いのに対して(患者比率として女性3:男性1)、レビー小体型認知症は男性が女性の2倍といわれているようです(患者比率として女性1:男性2)。ゆえに、男性の認知症にはアルツハイマー型よりまずレビー小体型を疑う必要がある、と河野先生は唱えます。認知症が多いアメリカでも、同様の見解が多いようです。
さらに、まじめな男性がレビー小体型認知症にかかるケースが多いのだそうです。職業でいうと目立って教師が多いのだとか。
河野先生の診てきたレビー小体型の患者さんの実に95%がまじめな性格の人だったそうで、勤勉で高学歴で知的な職業についている人が多いとのこと。それで教師が多いということでしょうか。
「認知症になりやすい性格」「認知症になりやすい職業」でも紹介している通り、もちろん傾向があるといってもそういった人が必ず認知症になるというわけではありません。
ただ、なる確率が高くなるということから、「趣味もないようなまじめさ」を持った人は要注意ということのようです。