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認知症の診察・検査の内容

認知症の診察・検査の内容

認知症(旧痴呆症)の検査では、まず原因となっている病気の確定が重要です。それにより、治療方法も緊急性も変わってくるからです。

ここでは、実際に医師のもとで行うと思われる認知症の診察の流れと検査の種類を紹介します。なお、検査において下記の項目のうちどれが行われるかは、状況や医師の判断などによるものと思われます。

1.問診

はじめに問診をするのですが、そこで医師は本人と家族から、診断のための重要な情報を得ることになります。

ここで、本人が診察を受けることを拒むことも少なくないと思います。拒否する本人にいかに受診してもらうかは、家族にとっては大きな心理的負担だと思います。本人に対しては、できる限り無理強いをせず、受診しないと病気の治療ができないこと(これは病気だと伝えた場合ですが)、家族が大変心配していること、などを話してみましょう。

それでも無理な場合には、家族だけ先に受診して医師に様子を伝え、どうしたら受診してもらえるか医師と相談する手もあると思います。

また、病院へ行くことを拒否する本人に対する対応も、参考にしてみて下さい。

(1)家族との面談

まず医師は、家族の方だけから話を聞くことが多いようです。本人と同席しては話しづらいことがあったり、後から本人と面談するときに比較するための質問事項や答えを得ることが目的です。家族は、事前に本人について以下のようなメモを用意しておくとよいようです。

  • 生年月日
  • 略歴・生活
    (出生地、最終学歴、職歴、結婚歴、家族構成、過去に経験した大きな出来事)
  • 病歴
    (これまでに経験した病気、手術、事故、現在治療中の病気、服用している薬など)
  • 生活習慣
    (酒、タバコ、食事の傾向、運動など)
  • いつからどんな症状があるか
    (例えば、半年前から物忘れが出てきた、2か月ぐらいからものの名前が出てこなくなったなどの、家族から見た兆候・症状)
  • 進行状況・最近の症状
    (例えば昨年に比べて性格が変わった、もの忘れがさらに強くなった、など、経緯としてみられる症状など)

(川崎幸クリニック 杉山院長による)

(2)本人との面談

家族との面談の後、本人と面談します。そのさい、家族の同席の場合もあるようです。「生年月日」「今朝食べたもの」「出身地や職歴」などについて本人に質問しながら、家族から聞いた情報をもとにして、本人の状態を観察していきます。主に医師が見るのは、本人の目の動き、答え方、表情、声の調子などのようです。それによって、症状が単なる老化からきているものなのか認知症なのかが、大体見当がつくようです。

2.知能検査

知能検査として一般によく使われるのが、「改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」です。聖マリアンナ医科大学の長谷川和夫名誉教授が考案したもので、記憶や計算に関する簡単な質問です。30点満点で、20点以下の場合には認知症が疑われます。短時間でできるという特徴があり、補助診断として用いられるものです。

その他にはアメリカで開発された「ミニメンタルステート検査(MMSE)」があり、これも補助診断ツールとして使われ、さらに「ウェクスラー成人用知能検査(WAIS-R)」などがありますが、これは検査に時間がかかるため、場合によって用いられるようです。

3.画像検査

X線CT検査

X線CTとは、X線コンピュータ断層装置で、X線で人体を輪切りにした断面を撮影する検査です。

費用は安く、短時間でできるものです。アルツハイマー型認知症でのが委縮するとそこに脳脊髄液が流れ込むので黒く見えるのですが、高齢になると人は脳の萎縮があるので、初期のアルツハイマーー型認知症は判断が難しいようです。CT検査によって、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、ラクナ梗塞などを発見することもできます。

MRI検査

MRIとは、核磁気共鳴コンピュータ断層装置で、磁気を利用して人体を縦、横、斜めと自在に断面図を撮影することができる方法です。

X線の被ばくもなく、CT検査よりも鮮明に映し出すことができます。ただし、心臓ペースメーカーや人工関節、取り外せない入れ歯などをしている場合には、検査ができないこともあります。また、CT検査よりも検査時間が長いとか、騒音があったりするなどの欠点もあるようです。

PET

PETとは、ポジトロン断層撮影で、ブドウ糖に似たFDGという物質を注射して全身にいきわたったところで撮影し、FDGの集積状態によって病気を見つける方法です。

これによって、脳細胞の破壊されている部位や脳機能が低下している部位がわかり初期のアルツハイマー型認知症の発見に有効とされています。FDGを注入すると全身が熱くなって放射線を発しますが、体への害は少ないと考えられています。

SPECT

SPECTとは、脳血流シンチグラフィで、微量のラジオアイソトープ(放射性同位元素)を注射しながら、あるいは注射後に、その分布状態を調べる方法です。

初期のアルツハイマー型認知症や脳血管疾患を発見することができます。ラジオアイソトープの被ばくはごく微量で、人体への影響は少ないとされています。