軽度認知障害(MCI)1

軽度認知障害(MCI)1

MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)は認知症の前段階と言われ、健常者と認知症の中間の段階(グレーゾーン)と考えられています。

MCIの人は認知症に移行する可能性が高いようですが、しかし全ての人が移行するわけではなく、早期に適切な対応をとれば、現状を維持あるいは改善までするケースもあるようです。

MCI(軽度認知障害)は、まだ認知症ではない

MCIの状態になると、同じことを何度も繰り返して言ったり、ついこの前会ったばかりの人に「久しぶりですね」と声を掛けたり、同じものをたくさん買い込んでしまったり、物の置き場所がわからなくなったりします。

認知症の症状とほぼ同じ症状のようですが、病院で記憶の検査や認知症の検査をすると、認知症ではなくMCI(軽度認知障害)であるという診断がおりる状態です。

MCIの場合、物忘れは目立つものの、会話は普通にできて日常生活には支障がなく認知症の場合とは異なります

 

MCIのタイプ(健忘型と非健忘型)

MCIには、まず大きく「健忘型(記憶障害があるタイプ)」と「非健忘型(記憶障害がないタイプ)」の2つの型があります。

「健忘型」にはさらに以下の2種類に分けられます。

  • 健忘型MCI・単領域障害(アルツハイマー型認知症になる可能性が高い)
  • 健忘型MCI・多領域障害(アルツハイマー型認知症、脳血管性型認知症になる可能性が高い)

「非健忘型」にはさらに以下の2種類に分けられます。

  • 非健忘型MCI・単領域障害(前頭側頭型認知症になる可能性が高い)
  • 非健忘型MCI・多領域障害(レビー小体型認知症、脳血管性型認知症になる可能性が高い)

記憶障害があるかどうかの違いがありますが、MCIの多くは健忘型のようです。非健忘型では、記憶障害ではなく失語や失行などの症状が多く見られるようです。

健忘型MCIは進行するとアルツハイマー病になることが多く、非健忘型MCIは前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症に進行することが多いと言われています。しかし、どちらの型も、全てが認知症に進行するとは限らないようです。

いくつかの調査によると、そのまま治療を受けなくても、半数は認知症にならないようです。しかし半数は、年に12%から15%の割合で、MCIからアルツハイマー型認知症に移行するという研究報告があります。

このことから、MCIは認知症の発症予備軍として注目されています。

診断や告知によるショックの問題

少しでも早く認知症を発見して治療することが大切であるとされている現在、あまり症状が重くない状態で受診して、MCIの診断が出るケースがあります。しかし、MCIの診断や告知を受けたことで、本人や家族がショックを受けてしまい、さまざまな問題が出てきることがあります。

物忘れはあっても、ほぼ支障なく日常生活を送っていた人が、MCIの診断を受けたことでふさぎ込んだり、気が滅入って意欲が低下したりすると、うつ状態になることもあるようです。本人だけでなく、家族もうつ状態になる場合があるようです。

 

MCIの全ての人が認知症になるわけではない、改善もありえる

しかし、前述の通りMCIと診断された全ての人が認知症になるわけではないことと、早期に対応することで現状を維持したり、改善さえするケースもあります

もしもMCIと診断されたら、「認知症の予防・改善」グループの各ページにあるように、食事等の生活習慣を見直したり、人との会話などのコミュニケーションを積極的に行なったり、脳をよく使う、適度な運動を行う、サプリメントを利用してみるなど、いろいろな角度から維持・改善を目指す余地があるのです。

 

本人への告知と心のケア

一般に、治せない病気の場合、本人に告知するかどうかがよく問題になりますが、MCIの場合も配慮が必要であると言えます。

記憶の検査や認知症の検査を受ける段階で、既に本人は自分の「頭」をテストされていることがわかり、どんな結果が出るか大きな不安を抱くはずです。そして、MCIの診断が下されるとその不安に追い打ちをかけてしまうことも考えられます。

自分は認知症になることを予告された」と感じるかもしれません。

もちろん、早期の対応で現状を維持したり、進行を遅らせたり症状を改善させることも可能な場合はあります。しかし一方で、本人と家族の心のケアが行われないままで、MCIであることを告知するのが良いかどうかは、よく考える必要があるようです。

診断を行うのは医学の役割ですが、心のケアまでは充分行われていないのが実情であるようです。本人や家族が診断を冷静に受け止めて、たとえ治療が難しくても、少しでも良い状態で過ごしていけるように共に考えていく心のケアが求められていると言えます。

関連ページ

 

 

  • 認知症のサプリメント
  • 筆者のTwitter
  • 筆者のFacebook