認知症の人の食事介助

認知症の人の食事介助

認知症が進んでくるにつれて、「食事を拒否」あるいは逆に「食べ過ぎる」ことがあります。認知症の場合は特別な食事制限はないようです。食べるという行為は脳全体を活性化させ、表情が良くなったり元気が出て、認知症の症状が緩和することもあるようです。「食べない」あるいは「食べ過ぎる」理由を考え、工夫をしていきましょう。

食べない理由

食べない理由には、例えば以下のようなことがあるようです。

  • 口内炎・入れ歯が合わなくなってきた、という口腔内トラブル
  • 便秘、下痢など胃腸の病気
  • 施設に行くことになった、変わった、などの環境変化からのストレス
  • 毒が入っているという妄想
  • 箸などが上手に持てなくなった→食べさせられるのは嫌
  • 施設の食事の味が合わない

このように様々な理由が考えられるのですが、本人がはっきりと理由を言うことは少ないと思われます。ある日突然食べなくなった、もしくは徐々に食べなくなってきた、これがどちらであるのかはその後の対処の重要なヒントとなるため、よく見ておくことが大切なようです。口腔内トラブルや胃腸の病気が考えられる場合は、早めに受診しましょう。

機能低下に合わせ、食べやすい工夫をする

箸などが上手く使えない

スプーンやフォークなどを代わりに用意するのはもちろんですが、「食べないよりは手づかみでもいい」と割り切ることも大切のようです。小さなおにぎりやコロッケなどがお勧めです。季節に合わせて、手まり寿司などを小さく作るのも良いかもしれません。何よりも本人が食事を楽しめることが優先と言われています。

食べるのが遅くなった

今までと同じおかずなどの硬さ、大きさが、本人と合わなくなってくることもあります。徐々に柔らかくしたり、小さくするという工夫をしていくことも必要なようです。また、液体を飲みこむのに1秒以上かかるようになったら、筋力の低下などによる「嚥下障害」が起きている可能性があります。このような場合は食品にとろみをつけたり、ゼリー状にすると食べやすくなるようです。いろいろな種類の介護食がスーパーなどでも販売されるようになっていますので、上手に利用していきましょう。

イスに座って食べる姿勢が安定しない

以前のようにイスに座ることが困難になっていても、いくつかの工夫で安定させることができるようです。

  • 足を床にしっかりつけるように足台などで高さ調節をする
  • 深く座ってやや前傾姿勢になるように、背もたれとの間にクッションなどをあてる

少し前かがみにすることによって、食べ物を上手く飲み込みやすくなり、気道に入るのを防ぐそうです。

一緒に食べ、声掛け・介助によって食事量低下を防ぐ

ストレスや、毒が入っているというような妄想によって食事を拒否している場合、介護者が一緒に食事をすることも効果的なようです。「あなたの体の為に食べてください」というよりは、「これ、おいしいですよ。一緒に食べましょう」という誘導の方がスムーズなようです。「冷たくてさっぱりしますね」「いい匂いがしますよ」といった声掛けで、食事に興味がでてきます。また、一緒に食べる場合は、隣に座るほうが本人は自分のペースで食べられるようです。必要に応じて介助をしてあげながら、食事量の低下にも気をつける必要があるようです。

ここまで「食べない」ということについて述べてきましたが、認知症には逆に「食べ過ぎる」という症状もあります。認知症発症から5~6年の軽度~中度期によく見られる「過食」です。

食べ過ぎる理由

食べ過ぎる理由には、例えば以下のようなことがあるようです。

  • 満腹中枢への刺激が阻害されて、食欲のコントロールができなくなっている
  • 記憶障害によって、食べたことを忘れてしまう

どちらか一方のみが理由になるわけではなく、このどちらも作用しているようです。

ただし、過食の時期は長く続かないようです。過食の時期というのは、それだけエネルギーも消費しているので、好きに食べたとしても問題はない、という杉山孝博医師の見解もあります。数カ月で、本人の動きに合った食事に変化していくそうです。上手に工夫しながら乗り切っていきましょう。

気持ちを理解して、叱らない

食べてもお腹がすいている気がする不満、(食べたことを覚えていないから)このまま食べさせてもらえない不安、そういった場合があるようです。「さっき食べましたよ」と諌めるのも「そんなに食べてはダメ」と叱ったりすることも、本人には効果がないことが多いようです。

他のことに興味を持つように仕向ける

「食べたい」という本人に対しては「今用意していますよ」とまずは肯定し、例えば以下のように食事以外に興味を向けられるような声掛けが効果的なようです。

  • 「できるまで、お菓子を食べて待っていてくださいね」とお菓子や果物などを用意する
  • 「もう少しでできますから、それまで散歩にいきましょう」と他のことをする

手が届かないように片づける、管理する

目に着くと食べたくなってしまうので、食べ物はなるべく片づけておきましょう。冷蔵庫も鍵を付けた方が良いようです。ただし、食べたいという欲求はありますから、探し回らなくてもよいように、食卓には食べても問題のないものを少し置いておくことも必要とのことです。

1回分の食事の量を減らし、回数を増やす

どうしても3食と同じような食事に執着があり強く求める場合や、体重が増えてきた場合は、1回あたりの食事量を減らして、食事の回数を増やすことも有効なようです。手間は増えますが、本人は満足してくれることがあるようです。

 

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