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認知症の人の住環境整備

認知症の人の住環境整備

認知症の家族の在宅ケアためには、どのように住環境を準備するとよいのでしょうか。介護する側、される側が少しでも暮らしやすいようにする工夫についてご紹介します。

以下の表にまとめた内容は、鹿児島県医師会/鹿児島県医師国民健康保険組合「一般臨床医のための認知症における精神症状と行動障害対応マニュアル」から引用させていただきました。

  日常生活の支援 介護の負担の軽減 安全性の確保 快適な環境の確保
トイレ 洋式化、洗浄装置、手すりの設置、段差の解消、寝室の近くへの設置 面積拡張、段差の解消、洋式化、手すりの設置、寝室の近くへの設置、 床や壁の材料の変更、汚物用シンクの設置 鍵を外から開けられるように、段差の解消、手すりの設置  
浴室 手すりの設置、浴槽をまたぎ易くする、段差の解消、床の滑り止め 面積拡張、シャワーチェア、手すりの設置 浴槽の温度設定ができるように、滑り止め、段差の解消 浴室~脱衣室の温度差をなくす
寝室   ベッドの導入、ポータブルトイレの使用、面積拡張 家具の角を丸くする、安全な暖房器具の設置 温度を一定に
居室内外 段差の解消、イスの使用、適切な照明の設置 スロープの設置、段差の解消、手すりの設置   居室~住居全体、自由に動ける広さを用意
玄関 段差の解消、手すりの設置   段差の解消  

本人の部屋を決めておく

本人の為のベッドを置いたり、1日をすごす部屋を決めておきましょう。トイレが近く、階段を使わなくても生活できる、家族が集まる場所から近い、というのが理想的です。

これまで本人が過ごしていた部屋とは違う場所になった場合や、認知症の症状が進んでいて場所を忘れてしまう場合、部屋からトイレまで床に目印を付けたり、壁に「トイレ→」といった表示を張るなど、スムーズに移動できる工夫も必要です。

トイレを使いやすくする工夫

認知症の人はマヒがある場合や終末期でないなら、自分でトイレに行くことができる場合があります。ただし、和式トイレについては使いづらくなってくると考えられるので、今後症状が進行することも考えて、洋式トイレにするのを勧められています。和式トイレの上に据置する形の洋式便座もあるようです。

また、部屋など使いやすい場所に「ポータブルトイレ」を設置する方法もあります。手すりもできれば設置をおすすめします。ただし、ケアマネージャーや福祉用具専門の相談員に相談して、適切な場所に設置するアドバイスを受けましょう。

<ポータブルトイレの例>

  • 安寿ポータブルトイレGX

  • ポータブルトイレFX-CPキャスター付き

電動の介護ベッドを利用するメリット

まだ寝たきりではない状態でも、電動の介護ベッドは便利です。ベッド全体の高さを調節することができるので、本人が乗り降りする時と家族が介護をする時によって変えられます。これは、お互いに体に負担をかけない介護につながります。

介護ベッドというと寝たきりを進めてしまうようなイメージもあるようですが、ベッドの頭や足の部分が上下することによって自分で立ち上がるサポートをする機能もあり、手すりも付いているので、本人の自立に役立つようです。

<介護ベッドの例>

浴室を使いやすくする工夫

浴室はできるだけ自分の力で入浴できるよう、便利で安全な工夫が必要になります。

まず、シャワー用チェアがおすすめです。体を洗う時はもちろん、浴槽に入る時の補助にも使えます。また、洗い場と浴槽の底には、滑り止めのマットを敷きましょう。シャワーは、手元でお湯を出す・止めるの切り替えができるヘッドに交換すると、本人も補助をする人も便利に使えます。

手すりについては、ケアマネージャーや福祉用具専門の相談員に相談して、適切な場所に設置するアドバイスを受けることをおすすめします。

<入浴用品の例>

  • ポータブルトイレ・FX-CP・キャスター付き

  • 吸着すべり止めマットC

  • 高さ調節付浴槽手すりUST-130

介護保険を利用して負担を少なくする

さまざまな準備をする必要があり、かなりの負担になる場合もあるのですが、介護保険を利用して、住宅改修費、福祉用具のレンタルや購入費の補助を受けることができます。介護保険でできる住宅改修は以下の6種類です。

  1. 手すりの取り付け
    玄関や玄関から道路までの通路、廊下、便所、浴室などに、転倒予防、移動、移乗動作のための手すりの設置
  2. 段差の解消
    玄関から道路までの通路の段差や居室、廊下、便所、浴室、玄関などの各空間の床の段差解消のための工事
  3. 滑りの防止、移動の円滑化などのための床や通路面の材料の変更
    滑りの防止、移動の円滑化などのための床や通路面の材料の変更
  4. 引き戸などへの扉の取り替え
    アコーディオンカーテンへの取り替え、開き戸を引き戸や折れ戸、ドアノブの変更、戸車の設置など
  5. 洋式便器などへの便器の取り替え
    洋式便器などへの便器の取り替え
  6. その他上記の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
    壁や柱の改修工事、便所の給排水設備工事、壁の下地補強、浴室の給排水設備工事、下地補強や根太の補強、床材の変更

介護保険でレンタル・購入できる福祉用具

介護保険でレンタル・購入できる福祉用具は以下の通りです。

<レンタル対象種目>
  • 車いす
  • 車いす付属品
  • 特殊寝台
  • 特殊寝台付属品
  • じょく瘡予防用具
  • 体位変換器
  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助つえ
  • 痴呆性老人徘徊感知器
  • 移動用リフト(つり具の部分を除く)
<購入の対象種目>
  • 腰かけ便座
  • 特殊尿器
  • 入浴補助用具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具の部分
 

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