認知症の周辺症状1(妄想/抑うつ/抵抗)
認知症の周辺症状1(妄想/抑うつ/抵抗)
認知症(旧痴呆症)の症状は、大きく2つに分けることができます。認知症の人すべてに現れる「中核症状」と、現れるかどうかには個人差がある「周辺症状」です。
認知症の周辺症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)は、脳の病変が直接の原因ではなく、脳の病変によって現れたいろいろな中核症状が原因で起きるものです。中核症状が現れると、認知症の人は混乱することが多くなり、いろいろな周辺症状が出てくるとされています。
周辺症状は、認知症の人の性格や経験してきたこと、生活している環境や人間関係にも大きく左右されるといわれており、中核症状と違って、人によって症状の出方がかなり異なります。
主な周辺症状として、以下のようなものがあります。
- 徘徊
- 不潔行動・弄便(ろうべん)
- 失禁
- 暴言・暴力
- 幻覚・錯覚
- 妄想
- 抑うつ
- 依存
- 性的な問題行動
- 睡眠障害
- 譫妄(せんもう)
- 食行動の異常
- 収集癖
- 介護への抵抗
妄想
妄想とは、実際にはないことをあると信じこむことです。妄想の内容には、被害妄想(自分が被害にあったという妄想)が多いようです。その多くは「物盗られ妄想」で、財布などの大切なもののしまい場所を忘れて、身近な人が盗ったと訴えたりします。
もの盗られ妄想の他に、「嫉妬妄想」が見られることもあります。これは、夫や妻が不貞を働いていると思い込んでしまう妄想です。
実際には無いのにあるように見える「幻視」という妄想もあります。虫や小動物、子供、人などの幻視が多いと言われています。何もいないのに「部屋の中で子供が遊んでいる」なとどいうものです。1ヶ月以上もの間言い続けることもあり、はっきり見えることもあるようです。「幻視」は、レビー小体型認知症の特徴的な症状の一つでもあります。
妄想の特徴には以下のようなものがあります。
- 記憶障害によるものが多い(しまい場所を忘れるなど)。
- 身近な人から被害を受けたという妄想が多い。
- 実際に無いものがあるように見える幻視がある。
- 場当たり的な妄想が多く、しばらくすると妄想自体を忘れてしまうことが多い。
抑うつ
意欲が低下して元気がなくなってふさぎ込む、うつ病と似た症状です。睡眠障害や食欲の低下なども、同時に現れることがあります。
認知症の場合、30~40%に抑うつの症状が現れると言われていますが、うつ病ほど症状は重くならないようです。しかし、まれに、認知症の症状よりも抑うつの症状が先に現れることもあり、うつ病なのか認知症なのか区別が難しい場合があります。うつ病であるのに認知症と似た症状が出る場合は、「うつ病性仮性認知症」といいますが、専門医でないと区別がつかないようです。
逆に認知症であるのに医師によってうつ病と診断されてしまう場合には、危険を伴うことがあるようです。認知症であるのに抗うつ剤を処方されると、認知症の症状が悪化することがあるからです。
高齢者で表情の暗い人は、うつ病より認知症を疑うべきだという見解もあります。
介護への抵抗
だんだんと自分でいろいろなことができなくなったり、要求が受け入れられなかったりすると、不満や不安が高じて、介護者からの働きかけを拒否し、抵抗することがあります。薬をのむことを拒否することも、よく見られるようです。
特に、プライドを傷つけられるようなことがあると、介護者への信頼をなくしてしまい、このような症状が現れることが多いようです。その一方で、何かをする意欲が低下しているために、抵抗しているわけではないのに、そのように見えてしまう場合もあるとのことです。