認知症時計の絵描画テスト(CDT:clock drawing test)
認知症時計の絵描画テスト(CDT:clock drawing test)
認知症や軽度認知障害(MCI)の可能性を調べる検査に「時計描画試験(時計描画テスト)(CDT:Clock Drawing Test)」があります。白い紙に10時10分を指す時計を描くだけで、とても簡単な方法です。
認知症が進んでいる場合、円がいびつな形になったり、数字の順番や場所が違ってくるようです。この結果によってどんなことがわかるのか、検査のやり方と合わせてご紹介します。
認知症を早期発見する「時計描画試験(時計描画テスト)」
時計描画試験(Clock Drawing Test)というのは、丸時計の絵を描いて前頭葉・側頭葉・頭頂葉の衰えの状態を知るテストで、「CDテスト」「クロッキーテスト」とも呼ばれます。以前より神経心理学では、簡易的な精神機能評価検査として、時計の文字盤を使ってきたそうです。
時計の絵を描くだけなので、検査を受ける本人にとっても簡単で教養にも左右されず、拒否されにくいという利点があるため、多くの病院・施設なので取り入れられています。
病院で行う「時計描画試験(時計描画テスト)」
まず、病院などで行われている時計描画試験の方法についてご説明します。
以下のB5サイズの紙を準備します。
A:白紙
B:直径8センチの円が描かれたもの
C:直径8センチの円に数字(文字盤)が描かれたもの
※これらの図はイメージです。実際には指示に沿って図を作成してください。
- Aの紙を渡して「時計の絵を描いてください」と伝えます。
この時に「1から12までの数字を」などのように、“ヒント”になる言葉を言わないよう気をつけます。 - Bの紙を渡して「この円の中に数字を書き入れてください」と伝えます。
- Cの紙を渡して「10時10分の針を描いてください」と伝えます。
これらの3枚の時計を正確に描くことができているかどうかで、認知症の可能性または認知症の進み具合を判断します。A、B、Cともに時間は無制限です。
認知症の場合に現れる検査結果
病院で行う時計描画試験には細かい採点基準があり、その採点をするには専門知識が必要となりますので、その具体的な基準については省略します。ここでは、認知症が進んでいた場合に現れる検査結果の一例を紹介します。
<認知症初期から中期に出やすい結果の例>
- 数字が円の中に納まりきらない
- 円が小さすぎる、いびつな形になっている
- 「10時10分」が「10時45分」になるなど、正しく描けない
- 数字の11・12を描き忘れる
<アルツハイマー型認知症の場合に出やすい結果の例>
- 針を描けない
- 12以上の数字も過剰に描いてある
- 数字の配列が乱れている(上部に集中している等)
- 数字が逆回りに描かれている
※これらの絵は参考画像を筆者が模写したもので、イメージです。
ちなみに、「パーキンソン病」「老人性うつ病」の場合は、時計を描くことができるそうです。この検査結果が、それらの病気との違いを判断する材料にもなるようです。
家庭でできる、簡易版「時計描画試験(時計描画テスト)」
家で行う場合は、もっと簡単に行っても問題ありません。白い紙に、「10時10分を指す時計」を描いてもらうだけです。注意点は以下のとおりです。
- 数字のヒントを出さないこと
- 周りに時計を置いておかないこと
(時計を盗み見する時は認知症の疑いがあると言われています)
家庭での判定では、下記のように感覚的に違和感がなければ「問題なし」とします。
- 1~12の数字が円周の内側あたりに、だいたい均等にならんでいる
- およそ10時10分を指す針が、中央から伸びている
もし描けなかった場合、本人も「何かおかしい」と感じることができるため、診察を受けるきっかけになるかも知れません。そういう場合には、できるだけ早く認知症外来などで受診しましょう。
「時計描画試験」は家庭で簡単にでき、異常を発見しやすいわかりやすさから、「最近もの忘れが多いな」などと感じた時には是非おすすめしたい検査です。より気楽に取り組んでもらうために、家族が一緒に行うのも効果的ですね。