車の運転をやめさせる

車の運転をやめさせる

日常的に車の運転をする高齢の家族が¥認知症と診断されたら、どうしたら良いでしょうか。当然、車の運転をやめてもらいたいですが、どのように説得してやめさせればよいのか、悩む人は多いようです。

本人としては、「まだ運転はできる」「事故を起こしたことがないから」という気持ちや、「自由に出かけたい」「ドライブが生きがい」という気持ちがあることでしょう。いくら家族が事故の危険があるから、と注意しても聞き入れることが難しい場合もあるようです。

しかし、事故が起きてからでは遅いです。万が一他の人を巻き込んだりしたら取り返しがつきません。家族は一刻も早く対策をとりましょう。

認知症高齢者の自動車運転に関する法律

道路交通法では、運転者が「認知症」であると診断された場合、公安委員会が「運転免許を取り消す」又は「免許の効力を停止する」ことができると定めています。

具体的には、75歳以上の免許所有者に対して、3年に1度の免許更新時にペーパーテスト形式の「認知機能検査」を義務付けています。結果によって記憶力・判断力が低いと「1分類」、少し低ければ「2分類」、問題がなければ「3分類」に分けられます。そのうちの「1分類」で交通違反をした人には医師の診断を義務付けています。

さらに、2015年度の改正道路交通法案では、検査と医師の診断の機会を増やすようになりました。検査は、これまでの免許更新時だけではなく、新たに政令で定める特定の交通違反をしたときにも受けなければなりません。そして、「1分類」と判定された場合には、交通違反の有無にかかわらず、全ての人が医師の診断を受けるよう義務付けられることになりました。

家族の説得を受け入れられない人であっても、

  • 医師の診断が義務付けられている
  • 免許の取り消しが法律で決められている

などと言われれば、納得力は強まり、説得せざるを得なくなるでしょう。

認知症が進んで、やむをえず家族が「車の鍵を隠す」という手段もあるようですが、できるだけ本人も納得できるように進められる方が、お互いの信頼関係を壊さないように思われます。

まだ認知症の診断を受けるほどではなくても、認知症が原因で起きる高齢者の運転事故などが増えていることを家族で話題にして、早いうちから運転免許の自主返納を考えておくことも大切ですね。

運転をやめた後の移動手段や気持ちの問題

運転をやめることに納得してくれたといって安心しても、日常的な問題が残ることがあります。なぜこれまで運転をしていたか、ということを振り返ってみましょう。

運転が日常の移動手段だった場合、代わりの移動手段を見つけてあげる必要があるようです。

家族・友人で代わりに運転をしてくれる人を探したり、公共交通機関や高齢者向けの移動サービスなどを確認しておくとよいでしょう。地域のコミュニティバス、デマンドタクシー(予約制乗合タクシー)、介護タクシーなどもあります。また、病院や福祉施設で送迎バスを用意しているところもあります。

地域でどのようなサービスがあるか、自治体の窓口などで案内してもらえるようです。

運転することが趣味だった場合は、それ以外の楽しみになるような活動を探してみるとよいでしょう。老人クラブ、生涯学習など同じ趣味を持つ人が集まる場に参加したり、温泉施設への送迎サービスを利用するのもよいでしょう。こういったことも、自治体の広報誌や、生涯学習を担当する窓口などで情報を集められるようです。

どちらの場合も、運転をやめたからといって、行動範囲を狭くさせないことが大切なようです。

運転をやめたことで認知症を進行させないように

自分が「もう運転できない状態なのだ」ということを受け入れるのは、とてもつらいことであると思います。そのことによって家にこもりがちになったり、人と接しない状態になるのは、認知症を進行させてしまうかもしれません。

そうならないように、次の移動手段・次の生きがいを見つける手伝いをすることは、高齢の家族が運転の危険を回避して、なおかつ認知症の進行をくいとめ、生き生きと過ごしてくれるための一歩となるでしょう。