認知症本人の世界1
認知症本人の世界1
認知症の人の心の中はどのようなものなのか。本人の世界はどうなっているのか。あくまでも想像するしかないものですが、「認知症の人のつらい気持ちがわかる本」(杉山孝博氏著)から引用・参考にさせていただき、考えてみます。
忘れたことに気づいていない
- 同じことを何度も話す
- 今聞いたばかりの事を繰返し聞く
このような症状は、認知症の代表的な症状です。
今経験したばかりのことを忘れてしまう記憶障害などからきているもので、他人から何度説明されても記憶することが困難なのです。そして、頭に浮かんだことだけを繰り返して言うものだと思われます。
認知症では、忘れる範囲が「行為の一部ではなく全部である」という特徴があります。
例えば、さっき昼食で何を食べたか忘れてしまったというのは一部ですが、食べたこと自体を忘れてしまった(まだ食べていないと思う)ことは全部です。今日行ったデイサービスで何をしたかを忘れることは一部ですが、デイサービスなど行っていないと言えば全部忘れているということです。
老化と認知症の違い(物忘れ)
忘れたこと自体に気づいていないので、同じことを何度説明されても、本人にとってはいつも初めて聞くことなのです。
本人は今「いつ」に生きているのか
認知症では、新しいことは忘れ、昔のことほどよく覚えているという特徴があるようです。
新しい記憶から古い記憶にさかのぼって失っていくことを、逆行性喪失といいます。この現象により、本人が人生の「いつの時期に生きているか」変わってくることがあるようです。
例えば、現在から40代までの記憶を失っていたとしたら、認知症の人本人は今、40代を生きていることになります。
- 当時の仕事のまねごとをしている
- 40代の頃のように自分の子供がまだ未成年だと思っている
これらは、周りから見ると昔にタイムスリップしているような状態です。もっと遡って自分の子供時代に戻っている場合、以下のようなこともあるようです。
- 自分の娘を自分の母親だと思って甘えようとする
- 自分の妻は本人にとっては知らない女の人
いずれも、周りから見ると本人の思い込みであり、過去の時代の記憶ですが、当の本人にとっては現実の今なのだと思われます。