認知症の治療:薬2(その他、症状の軽減)

認知症の治療:薬2(その他、症状の軽減)

レビー小体型認知症の症状を軽減する薬

アリセプト(塩酸ドネぺジル)

【概要】

2014年に、せん妄などの精神症状を軽減する効果が承認されました。

しかし、コウノメソッドでは、レビー小体型認知症に対するアリセプトの処方は、「パーキンソニズムの悪化」「歩けなくなる」「幻視の悪化」「食欲低下」「徐脈(心停止)」などの症状を招く可能性があると警告しています。危険が叫ばれている限り、現時点では、レビー小体型認知症に対するアリセプトの紹介は割愛いたします。

症状軽減に使用される抗精神病薬

リスパダール、ジプレキサ(リスペリドン、オランザピン)など【周辺症状】

【概要】

認知症の周辺症状である、幻覚や妄想、興奮を抑える効果があるとされています。このような症状は、ドーパミンという神経伝達物質が多過ぎると起こります。抗精神病薬はドーパミンの働きを抑えることができるようです。

【副作用】

向精神薬は、ふらつきや筋肉のこわばり(パーキンソン症状)、無意識に口や眼球等が動いてしまう(ジスキネジア)等の副作用が出る場合もあるので、慎重に使うことが大切です。又、血糖値の変動による昏睡や意識障害の報告もあるので、血糖値の高い人などは注意が必要です。

【禁忌】

リスパダール アドレナリンとの併用 ジプレキサ 糖尿病患者。

パーロデル(ブロモクリプチンメシル酸塩)【副作用抑制】

【概要】

抗精神病薬の副作用であるパーキンソン症状に効果があるとされています。パーキンソン症状は、脳内のドーパミン量が減少し、D2受容体と呼ばれる器官への刺激が少なくなった結果起こります。ドーパミンと同等にD2受容体を刺激し、パーキンソン症状を緩和するとのことです。

【副作用】

比較的強い薬で、処方量が多いと、吐き気や嘔吐、食欲不振、胃の不快感、便秘などの胃腸症状などの副作用が起きる場合があるようです。

【禁忌】

心臓弁膜の病変が確認された患者 妊娠高血圧症候群の患者 産褥期高血圧の患者

症状軽減に使用される抗不安薬

リーゼ(クロチアゼパム)

【概要】

不安や不眠、緊張などの症状を抑えて精神を安定させる効果がある薬で、抗不安剤の中では穏やかに作用する薬です。 気分をリラックスさせ、寝つきをよくするとされています。

レビー小体型認知症の初期症状として、抑うつ症状や不定愁訴が多いことなどから、うつ病に間違われる事が非常に多く、抗不安剤を処方されることがあります。

うつ病はセロトニンという神経伝達物質の減少からおこりますが、レビーの場合は逆にセロトニン過剰になっていたり、その他の神経伝達物質のバランスが崩れていることが症状に影響を与えるようです。

そのため、リーゼなどの抗不安薬によって、神経伝達物質のバランスの乱れを改善する事も期待できますが、同時に乱用するとそのバランスを崩すことにもつながるので注意が必要です。

【副作用】

副作用は少ないとされていますが、眠気やふらつき、倦怠感、脱力感が見られることがあります。お酒を飲むと薬の効果が強くなるので要注意です。

さらに、リーゼに限らず抗不安薬は「依存形成」をおこす可能性があり、服用をやめたり減らしたりした時に「イライラ・頭痛・吐き気・ふるえ」などの「離脱症状」が出ることがあります。長期的な服用は、医師からの指示を守るようにしてください。

【禁忌】

急性狭隅角緑内障の患者 重症筋無力症の患者

症状軽減に使用される脳循環代謝改善薬

サアミオン(ニセルゴリン)

【概要】

脳循環代謝改善薬と呼ばれる種類の薬で、脳の血流を良くし、脳の活動を高めたり神経伝達物質の調整効果があります。また、脳細胞破壊の結果としておきる意欲低下に対しても効果を発揮します。即効性はなく、ゆっくりと効果が出る薬です。

【副作用】

副作用は少ない薬ですが、眠気やふらつき、吐き気、食欲不振などの症状が出ることがあります。また、過剰摂取により怒りやすくなったり興奮したりといった症状が出る可能性もあるため、用量には注意が必要です。

【禁忌】

脳卒中で頭蓋内出血後、止血が完成していないと考えられる患者

症状軽減に使用される漢方薬

漢方薬「抑肝散(よくかんさん)」【周辺症状】

【概要】

抗精神病薬と比べて副作用が少ないのですが、周辺症状(徘徊や暴言など)に効果があるとして注目されています。脳内で興奮性の神経伝達物質として知られるグルタミン酸を抑えることで、認知症の場合は、幻覚、興奮、攻撃性を抑制する効果が高いと言われています。徘徊や抑うつ、不眠などにも有効とされています。

アリセプトといっしょに使うことで、より効果的だという報告もありますし、精神症状が出やすいレビー小体型認知症にも、効果があると言われています。

【副作用】

発疹、発赤、かゆみ、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢など。

胃腸に何らかの副作用が出たり、低カリウム血症、過鎮静などの副作用が出ることがあると言われています。低カリウム血症とは、血液の成分のひとつであるカリウムが異常に減少し、脱力感や不整脈が起きる状態のことです。副作用の有無を確認しながら抑肝散の使用量を調整していくことが大切です。

【禁忌】

消化器が非常に弱い患者には、慎重に用いること。

認知症治療薬周辺の動向

認知症治療薬周辺の動向

2015年7月に「意味性認知症」が国の難病に指定されました。しかし、認知症の原因については未だ解明されていない部分が多く、「原因は真菌感染」などのニュースも見かけます。

一方で、現在最も有力視されているアルツハイマー型認知症の原因は、脳での異常なたんぱく質の蓄積。これまで神経細胞ごとに異常なたんぱく質ができるプロセスがあると考えられていましたが、少数の細胞でできた異常なたんぱく質が、ほかの多くの細胞の正常なたんぱく質を次々と異常型に変えることで病変が拡大する、という考え方が2015年後半には登場しました。

アルツハイマー病のほか、異常なたんぱく質がたまるパーキンソン病など多くの脳の病気を統一的に説明できる可能性が出てきました。

また、漢方薬「抑肝散」の細胞保護作用などが学会でも発表され、こうした研究が進む中、新しい治療薬の開発にも期待がかかっています。