認知症の治療:薬1(概要、アルツハイマー型)

認知症の治療:薬1(概要、アルツハイマー型)

医療現場でも扱いが難しいとされる認知症の薬

現在、認知症の進行を遅らせたり改善したりすることは、薬を使うことで可能と言われています。 現在使われている薬には、抗認知症薬、抗精神病薬、抗パーキンソン薬、抗不安薬、脳循環・代謝改善薬のなどがあり、さらに周辺症状を改善する効果が注目されている漢方薬もあります。

抗認知症薬については、昨今問題となっている副作用についてだけでなく、医師向けの講演会などで「抗認知症薬の投与は、いつやめればいいのでしょうか?」という趣旨の質問が必ず出るほどで、薬の扱いは医療現場でも大変難しいものとなっているようです。

こうした場合、薬の投与を単純に「やめる・やめない」の議論になりがちだそうですが、本当にやめなければならないのは「漫然とした投与」であり、時には薬を変更することも重要な治療の一部になりつつあるようです。

【ご注意】
当ページでは、基本的に医師に処方が認められている認知症の薬を紹介しています。しかしコウノメソッドでは、その薬の投与自体「正しいとは限らない」、そして用法・容量などは「間違えると大変危険なものになる」ことを警告しています。少しでも不安あるいは違和感があれば、かかりつけ医やコウノメソッド実践医に問合せることをお勧めします。

また、当サイトは進化を続ける認知症研究を学習しながら執筆しておりますため、サイト内で内容に矛盾が生じる場合もあります。その点ご容赦いただくとともに、疑問が出たら医師に相談してください。

家族や介護者が救われるために

認知症治療では、本人だけでなく、家族や介護する人たちも安定した人生を送れるようにすることを考える必要があります。

そのために、従来進行を遅らせることを主眼に置いてきた認知症治療は、周辺症状を抑える投薬や減薬も重視するようになり、介護者と連携し、介護者の負担を少しでも減らしながら続けていく治療も考慮されています。
コウノメソッド参照

医師を疑う、薬を疑う、医師と家族が連携する

日本では、原因や症状を的確に見分けて診断できるような信頼できる認知症の専門医が少ないようです。認知症はその原因となる病気によって治療法が変わってくるため、誤って違う治療法を行うと、症状が悪化するケースもあるのです。

家族としては、「良い診断ができる医師」を見つけられるかどうかが鍵となってきます。また、介護しながらでは大変困難ではありますが、医師や出された薬をそのまま信用せず、おかしいと思ったら正直に疑問をぶつけてみたり、ときには医師を変えたりすることも必要なようです。

認知症にはまだ完全に確立された治療方法がなく、現在の症状が認知症の病状進行なのか、薬の副作用なのかを判断するのは医師にとっても非常に難しいそうです。ですので、家族や介護者が質問したり近況を話したりすることによって医師と連携することが、認知症と向き合う人たち全体がよりよい状態に進める鍵となるのではないでしょうか。

アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる薬

アルツハイマー型認知症の薬には作用の仕方で分けると、2種類の系統があります。

  1. 神経伝達物質であるアセチルコリンを増加させることで意欲を向上させるコリンエステラーゼ阻害剤=中核症状を対象とします
    ドネペジル(商品名:アリセプト)・ガランタミン(商品名レミニール)・リバスチグミン(商品名:イクセロン、リバスタッチ)
  2. 過剰な神経興奮を抑えるNMDA受容体拮抗剤=周辺症状を対象とします
    メマンチン(商品名:メマリー)
商品名 アリセプト レミニール イクセロン、リバスタッチ メマリー
薬品名 塩酸ドネぺジル ガランタミン リバスチグミン メマンチン
対象とする症状 中核症状 中核症状 中核症状 周辺症状
概要 アルツハイマー病の進行を7~8か月から1年くらい遅らせることができるとされています。 アリセプトやイクセロン・リバスタッチと同等の効果ですが、薬に対する耐性が生じにくいので、症状によっては長期間にわたる投薬が可能です。 患者さんの手が届かないところに貼ることができるため、飲み薬をいやがる患者さんに有効です。 アリセプト他の中核症状対象の薬と併用することで、感情の不安定さ、落ち着きのなさなどの認知症の周辺症状に効果があるというデータがあります。
適応程度 軽度~高度 軽度~中等度 軽度~中等度 中等度~高度
剤形 錠剤、口腔内崩壊錠、細流剤、ゼリー剤、ドライシロップ剤 錠剤、口腔内崩壊剤、内用液 貼付剤 錠剤
用法・用量 1日1回、軽度~中等度5mg、高度10mg 1日2回、16mg 1日2回、18mg 1日1回、20mg
※現在の一般的な薬の処方および増量規定については、コウノメソッドの河野先生が重要な警告を唱えています。現在の処方の規定では、人や状態によっては、症状が悪化する可能性もあるようです。
主な副作用 食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢 悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、食欲減退 食欲不振、悪心、嘔吐、接触性皮膚炎、適用部位紅斑、適用部そう痒感 めまい、便秘、体重減少、頭痛
重大な副作用 QT延長、心室頸拍、心室細動、洞不全症候群、洞停止、高度徐脈、心ブロック、湿疹、心筋梗塞、心不全、消化性潰瘍、十二指腸潰瘍穿孔、消化管出血、肝炎、肝機能障害、黄疸、脳性発作、脳出血、脳血管障害、錐体外路障害、悪性症候群、横紋筋融解症、呼吸困難、急性膵炎、旧姓腎不全、原因不明の突然死、血小板減少など QT延長、徐脈、心ブロック、失神、急性汎発性発疹性、肝炎 洞不全症候群、徐脈、心筋梗塞、狭心症、脳血管発作、けいれん発作、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃腸出血、食道破裂を伴う重度の嘔吐、肝炎、失神、幻覚、激越、せん妄、錯乱、脱水 失神、意識消失、けいれん、精神症状、肝機能障害、黄疸など

アリセプト(塩酸ドネぺジル)

【概要】

アリセプトを使えば、アルツハイマー病の進行を7~8か月から1年くらい遅らせることができるとされています。主に、認知症の中核症状である記憶障害に効果がありますが、レビー小体型認知症の幻視や妄想にも効果が出る場合があります。

早期に使用を開始すれば、アルツハイマー病の進行を2~3年遅らせることも可能とされています。ただし、症状を軽減する対症療法薬なので、病気そのものの進行を遅らせることはできません。薬を飲むのをやめれば、飲まなかったときと同じレベルまで急速に悪化する可能性があるようです。

【用法・用量について】

1日1回3mgから開始し、副作用の有無を観察した上で、通常は1~2週間後に1日1回5mgに増量し継続する規定があります。
しかし、コウノメソッドによると、人や状態によっては症状が悪化する場合もあるとのことで、「用量」や「増量規定」については警告を唱えています。

脳の活性化を促す薬であるため、昼夜のリズムを作っていく目的で朝に処方されることも多いようですが、薬が体に留まる時間(半減期)が長いため、飲む時間による血中濃度への影響は少ないようです。主治医と相談の上、ご本人や介助者のライフスタイルを考慮し飲む時間を決めましょう。

飲み忘れたとき、前回飲んだ時間より12時間以上経っていた場合、重複して飲むことを避けるため、その日は飲むのを休みます。

【副作用】

興奮やイライラ感、落ち着きのなさなどが出現することがあります。これは脳内のアセチルコリンが増加することにより、神経細胞が刺激されて生じるものと考えられています。また、脳内のドパミンを減少させることで、せん妄などの意識障害を起こす事が知られています。

投与開始や増量に伴ってこれらの症状が生じた場合は、慣れてくるに従い自然に軽快することもあるようですが、介護者の負担が大きい場合にはアリセプトを減量・中止すべきこともあるようです。

コウノメソッド参照

レミニール(ガランタミン)

【概要】

認知症症状の抑制に対する効果はアリセプトやイクセロン・リバスタッチと同等以上でありながら、薬に対する耐性が生じにくいので、長期間にわたる投薬も期待できるようです。また休薬によって認知機能が悪化しても、再投与することで機能回復できるとされています。興奮・不安・脱抑制・異常行動などの周辺症状を抑制する効果が期待でき、睡眠障害も生じにくい薬とのことです。

認知症の薬のうち、同じアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に属するアリセプト、リバスタッチ・イクセロンパッチとの併用はできません。

【用法・用量について】

1日8mg(1回4mgを1日2回)から開始し、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量して服用します。なお、症状に応じて1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量できますが、増量する場合は変更前の用量で4週間以上服用した後に限ります。

【副作用】

副作用で一番多いのは、吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛など消化器症状のようです。重い副作用は少ないようですが、まれに脈拍が異常に遅くなるなど心臓に異常があらわれることがあるようですので、心臓病のある人はとくに注意が必要です。

イクセロン、リバスタッチ(リバスチグミン)

【概要】

アセチルコリンの減少を抑え、その量を増やす薬のため、他の薬同様に認知症そのものの「改善」ではなく、「進行を遅らせる」「症状を一時的に軽くする」薬です。

貼り付けるタイプの薬なので、飲み薬をいやがる患者さんに有効のようです。消化器に対する影響が少なく、他の薬剤との併用の影響も少ない治療剤です。

【用法・用量について】

1日1回4.5mgから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量し、維持量として1日1回18mgを貼付します。患者さんの状態に応じて、1日1回9mgを開始用量とし、原則として4週後に18mgに増量することもできます。背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替えます。

1日1回の貼付であるため投与が簡便で、かつ使用状況が視覚的に確認できるので、服薬管理が容易になるとこのとです。

【副作用】

副作用で一番多いのは、使用部位の皮膚症状のようです。赤くなったり、かゆくなることがよくあるようです。何度も同じ場所に貼ると副作用が出る可能性が高いため、毎回場所を変えて貼る必要があります。剥がしたところに保湿剤を塗ることも効果的です。もし皮膚症状があらわれても、ステロイド軟膏や抗ヒスタミン外用薬などで対処可能のようですので、医師とよく相談してください。

重い副作用は少ないようですが、まれに脈拍が異常に遅くなるなど心臓に異常があらわれることがあるようです。もともと心臓病のある人はとくに注意が必要です。

メマリー(メマンチン)

【概要】

アリセプト・レミニール・イクセロン・リバスタッチが神経伝達物質であるアセチルコリンを増加させるのに対して、メマリーは「グルタミン酸の過剰放出の抑制」=周辺症状に作用するため、同じ認知症の薬でありながら併用が可能です。アルツハイマー型認知症が中等度まで進行した頃からメマリーを投与する事で相乗効果が得られると言われています。

特にイライラや興奮、徘徊などの周辺症状(BPSD)のある方に対し、メマリーを併用することで効果があるというデータがあります。

【用法・用量について】

1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mgを経口服用します。

【副作用】

とくに飲み始めに眩暈(めまい)が多くみられるようです。転倒につながるおそれがありますので、注意が必要です。