認知症の症状が家族に出たとき、あなたはどう対応しますか?[認知症の窓]

お泊りデイ(雑魚寝の老後)

お泊り(おとまり)デイ」という言葉をご存じでしょうか。認知症などで介護を必要とする高齢者とその家族の厳しい現実です。

行政も徐々にその対策を始めた「お泊りデイ」の実態を把握し、自分なりの考えをもつことで、老後を少しでも快適に過ごす対策ができるかもしれません。

「お泊りデイ」とは何か?

通所介護事業所(デイサービスを提供する事業所)などが提供する宿泊サービスが、通称「お泊りデイ」です。本来であれば入浴や食事など日帰りの介護サービスのため、「お泊りデイ」は介護保険対象外、つまり自費負担となります。そのため、数百円から数千円まで料金にはばらつきがあります。

何故お泊りデイが必要とされているのか?

特別養護老人ホーム(特養)の入所待ちの人数は、2014年3月の集計で全国に約52万2千人に上ると厚生労働省が発表しました。特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・高齢者グループホーム・有料老人ホームなど介護保険が適用される施設数が足りず入所できない高齢者、また経済的な理由から入所困難な高齢者の受け皿として「お泊りデイ」は広がりを見せています。

介護を必要とする高齢者はなぜ行き場がないのか?

重度の介護が必要な場合、24時間家族が見守るのは現実的に不可能です。たとえば、認知症による徘徊で電車にはねられた高齢者の遺族に損害賠償が命じられた名古屋地裁の判決は記憶に新しいと思います。この判決に、遺族は切実な声をあげています。

24時間、一瞬の隙もなく家族が見守ることは不可能。それでも徘徊を防げと言われたら、鍵つきの部屋に閉じ込めるしかなくなってしまう」

認知症だけでなく、必要とされる介護の度合いによって自宅介護に限界がある中、特別養護老人ホーム(特養)などに定員で入れない、あるいは経済的に入れない高齢者数が急増しています。そこで、日頃利用して慣れているデイサービスを延長するという形で、「お泊りデイ」が利用されるのです。中には、家族に先立たれたあとに認知症を発症し、年単位で連泊している高齢者もいるのが現実です。

お泊りデイの何が問題となっているのか?

介護保険対象外のお泊りデイは、人員配置や設備などの基準も定められておらず、自治体への届け出義務がないため、運営が事業者まかせになっています。多くの需要も相まって、ここ数年全国でお泊りデイを実施する事業所が増加していますが、人員や設備の基準がないため死亡事故や事業所内でのウィルス感染なども発生しています。

こうした事故の原因として挙げられるのが、劣悪な環境と小数人員での運営です。介護をする側にもされる側にも規制する基準が不明確で無法状態になることもあり得るのです。

お泊りデイ提供側の対応

死亡事故を始めとした劣悪な介護を防ぐべく、2013年にはサービス提供側が「お泊りデイサービス協会(2017年10月現在サイトが不明です)」を設立し、独自に基準を設けて自主規制を行っています。

劣悪なお泊りデイを避けるために

2010年度の日本人の平均寿命は、男性79.55歳・女性86.30歳でしたが、介護なしで生きている期間(健康寿命)は男性70.42歳・女性73.62歳です。平均して男性で約9年、女性では13年間、介護が必要になる計算です。あくまでも平均ではありますが、多くの人が避けて通れない問題です。

まずは公共の介護サービス制度や、お泊りデイの自主基準や自治体基準をよく知ることが重要です(参照:「お泊りデイサービス協会」)。介護サービスのショートステイ(短期入所療養介護)を受けられる可能性がありますので、ケアマネージャに相談して入所先の検討をすることもよいでしょう。(参照:「介護サービス」)

言うまでもありませんが、何よりも介護をできるだけ受けないように予防が重要です。(参照:「認知症の予防

お泊りデイを利用することは悪いことではありませんが、下記のような準備をしておくことをおすすめします。

モバイルバージョンを終了