日本各地のデイサービスや特養などの介護施設において、意欲の向上、楽しく頭をリハビリすることなどを狙って「施設内通貨」を導入しているところが増えてきました。認知症の予防にも有効であると言われています。その仕組みや効果などについてご紹介します。
施設内通貨とは
「施設内通貨」というのは、特定の施設の中だけで使うことのできる「通貨」のことです。施設独自の通貨名を付け、紙幣などを発行しているところが多いようです。
施設内通貨を稼ぐ方法
デイサービスなどの利用者には、まず施設に訪れるだけで一定金額の通貨を渡されるところもあるようです。多くの施設で導入されているのは、リハビリのメニューごとに報酬額を決め、そのリハビリを行うことで報酬として通貨が支払われる方法です。また、カジノの時間を導入している施設もあります。
施設内通貨を稼ぐ方法
例えば以下のように、施設内の活動全てに通貨を使用できるようになっているところがほとんどです。施設ごとで様々な工夫がなされていて、本物の通貨と同様に、貯めることもできるようです。
- 施設内の喫茶店での飲食
- エステ、ネイルなどのリラクゼーション
- 絵手紙や陶芸などの趣味活動への参加料
施設内通貨でリハビリへの意欲が増す
ただ決められたリハビリメニューをこなすだけとは違い、「通貨を稼ぐ」という目的ができただけで、リハビリへの意欲が格段に増す人が多いようです。よりたくさん稼ぐことのできるメニューを自分で選んだり、自発的にリハビリを行うようになるそうです。
ある施設では報酬だけでなく、ポイントカードを発行しています。リハビリメニューごとにスタンプを押し、すべてのメニューをクリアすると「リハビリ達成ボーナス」というボーナス報酬が支払われます。通貨を稼ぐだけでなく、達成感を得ることもできるというのはとても効果的だと思われます。
利用者への効果
実際に導入されている施設では、次のような効果が表れています。利用者の声です。
- 施設に行くのが楽しみになった
- できることは自分で取り組む人が増えた
- 紙幣を数えるのが楽しく、計算することによって頭の体操になっている
- 参加したいイベントの為に、計画的に貯めることができるようになった
施設内通貨が脳を刺激する
通貨を稼ぐ・好きなことに使う・目標を持って貯める、という行為が脳の「報酬系」を刺激し、やる気を発揮する「ドーパミン」という神経物質の分泌を促進するそうです。
「報酬系」というのは、脳が、欲求が満たされた時に活性化して、快の感覚を与える神経系です。また、「報酬系」は報酬を得ることを期待して行動している最中も活性化する、という特徴があります。例えば、歩いていて喉がからからに乾いている時でも、「あと少しで自動販売機がある」とわかったとたんに元気がでてくる、ということです。
報酬系は、学習や環境への適応といった場面で重要な役割を果たしているそうです。報酬系が活発になると記憶力が高まり、学習のみならず、高齢者の記憶力維持や認知症の予防にも有効であると言われています。
施設内通貨というのは、このような脳の働きをうまく利用したシステムと言えるでしょう。