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事例2[同じことを何度も言う]

事例2[同じことを何度も言う]

介護の仕事をしているSさんに、「同じことを何度も言う」症状についての体験を教えてもらいます。

事例2:同じことを何度も言う

叱りつけたり、頭ごなしに否定しない

私は仕事で多くの認知症のお年寄りと毎日接しています。

それぞれの方の症状や病気の進行具合によって、さまざまな行動を起こします。財布や通帳を盗まれたと大騒ぎしたり、夜間に急に大声をだしたり、またトイレが間に合わず失禁してしまうこともあります。

しかし、いろいろな能力が低下しているとはいっても、自尊心や感情まで失ってしまったわけではありません。ご本人もさまざまな悩みがあり、多くのストレスを抱えて生活をしていることがあります。

まわりにいる人は、その本人の状態をしっかりと把握し、適切な対応とケアをしていく必要があります。そうすることで本人も安心して生活ができるようになります。

介護者や家族にも感情があり、大変難しいことですが、できるだけ子どのもように叱りつけたり、頭ごなしに否定したりしないようにすることが望ましいようです。認知症の方の自尊心を大切にする必要があります。

 

適度に流して話を聞き、適度に相づちを打つ

認知症の症状ではいろいろな症状がありますが、今回は同じことを何度も言うときの私なりの対応・対処法について紹介します。

認知症の方には、5秒前の記憶がなくなってしまう人も多くいます。

例えば今日は何月何日ということを聞いて答えると、すぐにまた今日は何月何日と聞いてきたりします。1度や2度なら問題なく返答できますが、10回、15回と回数が増えるとどうしてもこちらがイライラしてしまいます。日にちのことだけでなくすべての頭に浮かんだ言葉を何度も繰り返します。

このような場合の私なりの対処法は適度に流して話を聞き、そして適度に相づちを打つことです。難しいですが、イライラしてはいけません。心に余裕を持ち、こちらは頑張って話を聞いてあげる必要はありません。

こちらのイライラは必ず相手に伝わります。認知症状のある人は、安心できないとストレスがたまり、より大きな問題を起こします

話題を変えるようにする方法は大変です

私は、適度な相づちをし始めるまえは、話題を変えるようにしていました。例えば、何度か同じ話が続いたらお孫さんの事を聞いてみたり、若い時に何をしていたかなどに話をふったりしていました。これも慣れれば少しうまく出来るようにはなっていたのですが、こちらが質問をし続けないと元の話題に戻ったり今度は孫の話がずっと続いていたりしてしまいました。

話題を変え続けるのは少し大変です。

適度な相づちを私が始めるようになったのには、きっかけがありました。それは認知症状のある方同士が話しているのをのを見たときです。

彼らの話を良く聞いてみると、話の内容がぜんぜんかみ合っていませんでした。しかし、本人同士は安心してそのかみ合っていない話を続けていました。お互いにストレスをためることは一切ありません。短期間での記憶が形成されにくいので、会話をしてもすぐに忘れてしまうようです。

一間無意味なやり取りのように見えますが、適度に相槌を打って会話を続けていくことが、本人たちの安定につながっているように見えたのです。これをきっかけに、私も「同じことを何度も言う」症状に対して同じように接してみています。

どういう方法で気持ちが落ち着くのか、本人の性格によってはこれ以外にも適した方法があるかもしれません。認知症の対応は、その本人が安心する方法、その本人に合った方法を考える必要があります。決して容易ではありませんが。

 

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