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症例2[物盗られ妄想]

症例2[物盗られ妄想]

症例2:物盗られ妄想

症例

「物盗られ妄想」の症例として、以下のケースを紹介します。

(ここから「よくわかる認知症ケア 介護が楽になる知恵と工夫」杉山孝博氏著 より 抜粋して引用)

認知症になってから、Tさんの義母はお金に強く執着するようになりました。財布をたんすの引き出しの隅や布団の下に隠すのです。ただ、隠した場所をすぐ忘れて、そのたびに私を「盗った」と責めます。

先日は、孫に入学祝いをやりたいと、私に千円札を5枚よこしたので、指示通りに送りました。その夜のことです。財布がないと騒ぐので、いっしょに探したところ、テレビの後ろから出てきましたが、お札を数えてから「お金が足りない。犯人はあんたに違いない」と、すごい剣幕で怒り出しました。送金料の領収書を見せても納得してくれません。認知症だからとは思っても、やさしい気持ちになれません。

(ここまで「よくわかる認知症ケア 介護が楽になる知恵と工夫」杉山孝博氏著 より 抜粋して引用)

原因

物盗られ妄想は、認知症の初期に多い症状で、特に女性でアルツハイマー型認知症の人に多く見られるようです。認知症の中核症状である記憶障害に、不安や孤立感なども絡んだ結果起きてしまう、周辺症状です。

Tさんの義母は、財布を隠したことや隠した場所を忘れてしまうのですが、自分が忘れたという自覚はないと思われます。

認知症の人には、自分にとって不利なことは認めない傾向(自己有利の法則)があり、誰かが盗ったと言って人のせいにする場合があります。身近で介護してくれる人(家族、ヘルパーさん、施設の職員)を疑うことが多いので、特に介護する家族はやり切れない思いをする症状です。

 

対応

家族の対応としては、以下のようなことが考えられます。ただし、大変辛抱強い対応なので、たとえできないからといってそれは無理もないことです。

誰も盗っていないことをどんなに説明しても、わかってもらえないことが多いので、まずいっしょに探してあげることが大切です。探しているものを見かけたら、認知症の人が自分で見つけたように誘導してあげるのもいいでしょう。

また、気持ちを他のことにそらすように、「お茶でも飲んでから、ゆっくり落ち着いて探しましょう」などと声を掛けてみることもひとつの方法です。

認知症の人が言うことを否定すると、不安を強くしてしまうだけなので、否定しないで話をしっかり聴いて、落ち着かせてあげることが大切だと言われています。

もちろん、いくら認知症であるとわかっていても、泥棒呼ばわりされて冷静でいられるかどうか、自信が持てなくて当然です。介護者(家族)がひとりで抱え込まないように、ケアマネージャーに相談したり、悩みを聞いてもらえる身近な親しい人(親戚、友人)との交流を持てるように心がけることも大切です。

 

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