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リハビリパンツへの切り替えに悩んだ日々

リハビリパンツのきっかけとなった尿取りパット

母が82歳の時、デイサービスからの連絡で初めて失禁を知りました。それでも、その後、1年くらいは普通の下着を使っていました。

デイサービスに行く日はもちろんですが、母を病院へ連れて行く時なども、赤ちゃんと外出する時のように、着替えがパンパンに入ったバックを持ち歩いていました。

早く、リハビリパンツに切り替えていれば、そこまでは必要なかったのですが、リハビリパンツと言っても、要はオムツなので、そのオムツを母が使うということを私が受け止められなかったのです。

リハビリパンツに切りかえるきっかけとなったのは、尿取りパットでした。

デイサービスから、下痢(水様便)をしており、熱が38.8度あるとの連絡を受けました。自宅では変わった様子はまったくありませんでしたが、糖尿病があると体の異常や痛みなどに鈍感になり、本人から体調不良を訴えることが少ないそうです。

きっとこの日も、朝から体調が悪かったはずですが、気づいてあげられませんでした。

デイサービスに迎えに行った時、「下痢をしているので尿取りパッドをしています」と聞きました。そのとき心の中で「お母さんは尿取りパットをすることに抵抗なかったのだろうか・・」と思ったのです。

尿取りパットを初めて見た時、とても大きくオムツのイメージがあったからだと思います。

病院に着いた時、咳や下痢のせいもあり、尿取りパッドはとても重くなっていました。その重みでズボンが下がっていたのです。

着替えとして普通の下着は持っていましたが、それではまた大変なことになると思い、病院から尿取りパットをお借りしました。

初めて母と一緒にトイレに入り、尿取りパットを下着の中でセットしました。幸い、母の抵抗はなく、何とか無事に診察を受けることができたのです。

診察結果、風邪からの下痢とのことで、風邪薬と解熱剤を処方されました。

この時もそうでしたが、母が80歳を過ぎたころから、病院に行くたび、医師から「高齢者の場合、いつ何がきっかけで急変するかわからないと思っていてください。」という言葉を何度も聞いていました。

 

失禁の状況そして母の心境

母の失禁を、自宅ではなかなか気づいてあげられなくて、デイサービスでは、どんな時に気付かれるのかをお尋ねしたところ、白っぽいズボンの時は、濡れているのが目視できることもあるし、基本的にトイレ内に一緒に入り確認しているとのことでした。

デイサービスに行き始めた頃は、スタッフの方がトイレに入って来くるのを拒絶していた母でしたが、この頃は羞恥心がだいぶなくなっていたようです。

その反面、「着替えましょうか」と声をかけると「お茶をこぼした」「座ったところが濡れていたから・・」などと言って、自分が漏らしたのではないと主張していたようです。

また、デイサービスで母がトイレに行こうとした時、全てのトイレが使用中で、間に合わず尿失禁したこともあったそうです。

このことは、母自身もショックだったようで、帰宅後、「最近はトイレが間に合わなくなった・・」と言う声が母の部屋から聞こえてきました。

完全に羞恥心がなくなってしまった後はまだ良かったのですが、この頃の母はつらかっただろうと思います。

自宅で、はじめて尿臭を感じたときのことです。デイサービスの人たちと、同じようにはできませんでした。どんなふうに母に声をかけたら良いのか・・とても悩みました。

私が言えば、きっと反抗すると思うと、結局何も言えず、母が自分で着替えるのを待つことにしました。

ズボンが濡れていないか、そっと確認したのですが、濡れている様子はなかったので既に乾いていたのかもしれません。

 

ケアマネージャーからリハビリパンツをすすめられる

ケアマネージャーに失禁について相談しました。

「高齢者の方は、思ったことをそのまま口にしてしまうことがあります。もし、尿失禁で臭いが強くなったりするとお母さんが嫌な思いをすることになるかもしれません。出来ればリハビリパンツを使用した方が良くないでしょうか」と言ってくださいました。

「リハビリパンツ」=「おむつ」そのことにどうしても抵抗があり、なかなか決断できなかった私でしたが「お母さんの年齢になると、ほとんどの人がリハビリパンツを使用されています。おそらく今、デイサービスで使用されてないお母さんの方が珍しいくらいです」と聞いてやっと納得したのです。

 

リハビリパンツに切り替えることを母にどうやって伝えたらいいか

早速、リハビリパンツを準備しようと思ったのですが、まるで知識がなく、たくさんの商品を見ながらどれが良いのか、サイズさえもわかりませんでした。

普通の下着と同じサイズでいいのか、小さければ抵抗があって嫌がるだろうし、大きければ漏れるだろうし・・。

そのことを連絡帳に記入したところ、デイサービスにあるリハビリパンツでサイズを確認してくださり、おすすめの商品名も教えていただきました。

しかしここで問題発生です。

私から母に普通の下着ではなく、リハビリパンツにすることを伝える勇気がありませんでした。そこで、デイサービスのスタッフの方に母への説明をお願いしたのです。

そして、リハビリパンツを着用した母が帰宅しました。 母に、「リハビリパンツ」と言ってもわからないと思い、「紙パンツ」という表現で話をしました。

抵抗があるかとかなり心配していましたが、母は全くわかっていない様子でした。

「紙パンツの方が安心だね。お母さんくらいの年齢の人は誰でも間にあわないこともあるみたいだし、紙パンツ履いているのは誰もわからないから。」母にそう言うと「そうね。サイズもちょうどいい」と納得していました。

あまりにも、簡単に切り替えができたので驚いていたのですが、実は、そうではなかったのです。

母は、リハビリパンツと普通の下着の違いをまったく理解していませんでした

テープ式のオムツであれば違いがわかったのかもしれませんが、リハビリパンツの形状は普通の下着と何も変わりありません。母は、ただ生地が違う程度に思っていたようです。

このあと、新たな問題が発生します。

 

リハビリパンツを洗濯する母

普通の下着と思っている母は、リハビリパンツを洗濯機で洗ってしまいます

ゼリー状のものがベタベタと洗濯槽全体にはりつき、小さくなった紙が散らばっています。他の洗濯物と一緒に洗っている時は、悲惨な状態です。母が洗濯するたびに、ベトベトになった洗濯物を毎回手洗いしました。

「紙パンツは使い捨てだから洗濯しないでね。捨てていいから。」と説明しても「まだ履けるのにもったいない」と言って聞いてくれません。

他の洗濯ができず、毎回の洗濯槽の掃除も本当に大変でした。

 

リハビリパンツの放置

とても時間がかかりましたが、言い続けたことで、ようやくリハビリパンツは「洗濯してはいけない、捨てるもの」と認識してくれたようでした。

しかし、次は汚れたリハビリパンツの放置がはじまったのです。

母の部屋のゴミ箱の上に、フタをするように洗面道具を乗せているのですが、その洗面道具の上に使用済みのトレーニングパンツを置いていることがたびたびありました。

ちゃんとビニール袋に入れてある時があったので、やっとわかってくれたと思いましたが、中を見ると他の洗濯物も一緒に入れてありました。

部屋の隅、ソファーの端に他の洗濯物と一緒に丸めてあることも多くありました。押し入れやタンスの中でみつけた時は、匂いもすごいことになっていて、さすがに驚きました。

 

トレーニングパンツを前後反対に履く母

リハビリパンツに切り替えた後、失禁回数は減りましたが、まだまだ続いていました。

もう少し厚いタイプに変えた方が良いのか・・・サイズが大きすぎるのだろうか・・・いろいろ考えましたが、母と一緒に自宅のお風呂に入った時、その原因がわかりました。

母がリハビリパンツを履くのを見守っていると、片手で体をささえ、片手でリハビリパンツを持ち、足を入れようとしていました。

うまく履けないようで、フラフラしていたのですが、よく見ると、まったく違うところに足を入れているのです。リハビリパンツの前後をまったく考えず履いていました。反対に履くことで漏れてしまいズボンまで濡れていたのです。

リハビリパンツは、目印として後側にテープがあります。そのテープに「うしろ」と記載されているのですが、文字も小さいので、母はまったく気づかないと思います。それに、そのテープが気になるようで、母は毎回とっていました。

テープがついているのが「うしろ」だからね。テープを目印にして、そのまま履いたらいいよ。前後反対に履くと気持ち悪いでしょう?」そう言うと、母は素直に理解していました。

本当に理解しているのか確認するために、少し時間をあけて「お母さん、テープがついているのは、前と後、どっち?」と聞くと「うしろ」と答えてくれたのです。

これで大丈夫と思いました。しかし、その母の答えは偶然だったようです。

最終的には、リハビリパンツを購入するたびに、極太のマジックで「まえ」「うしろ」と一枚一枚記入しました。この作業は、母が自分でリハビリパンツを履けなくなるその日まで続いたのです。

 

新たな行動

久しぶりに母の部屋にリハビリパンツが干してありました。

何度も洗濯して干していたことがあったので「また洗濯したのか・・・」と思っていたら、それは、汚れたリハビリパンツだったのです。また新しい行動でした。

何もかも、わからなくなってきている母の姿がそこにありました。

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