コウノメソッド

コウノメソッド

認知症を「治す」ための治療法(薬物療法)に、「コウノメソッド」があります。すでに多くの認知症の人やその家族がこの療法に救われているようです。

コウノメソッド(Kono method)とは何か

コウノメソッドとは、現在名古屋フォレストクリニックの院長で、医学博士、認知症専門医である河野和彦先生が長年の間に積み重ねてきた臨床経験を元にした、認知症の治療法(薬物療法)です。認知症の方でも穏やかな生活を送れるようにすることを一番の目標とする処方術です。

ドクターコウノの認知症ブログ

認知症を「治す」

コウノメソッドで「認知症を治す」という表現をしますが、これは「全くもとの状態に戻す」という意味ではありません。現在、認知症の根治はできないからです。しかし、コウノメソッドによる薬の治療で症状が劇的に改善し、認知症の人でも穏やかな生活を送れるようになる事例が数多くあるのです。

症状が大きく改善する。これを「治る」と表現することに間違いはあるでしょうか?これがコウノメソッドの考え方です。

まず周辺症状をコントロールする

認知症の中核症状は、進行を遅らせることはできても、現在は完全に治すことはできません。しかし周辺症状は、適切な薬の処方でコントロールすることが可能だといいます。

河野先生は、多くの医師が「中核症状の治療」という形にこだわりすぎていると言います。中核症状は完全には治せない、だから多くの医師は「認知症は治らない」と結論づけているのだと言います。

しかし、実際には認知症本人や家族にとっての大きな苦しみは「周辺症状(易怒(怒りやすい)、大声、暴言、暴力、徘徊、独語、妄想、幻覚、過食など)」です。まずこの「周辺症状」を抑えることが認知症本人や家族を救うことになり、これが一番重要だと河野先生は言います。コウノメソッドは、それを第一に考えた治療法なのです。

「中核症状」の治療だけにこだわっていると、結果的に家族を大変な目に合わせる場合がある。これでは認知症の治療とは言えない、と河野先生は訴えます。

間違った診断・処方で認知症が「治らない」「悪化する」

日本には、優れた認知症専門医が極めて少ないと河野先生は言います。

例えば、認知症は時間ともに状態が変化していくようですが、これをつぶさに観察して対応していく技量のある医師が少ないというのです。

最初にアルツハイマー型認知症と診断してアリセプト(ドネペジル)を処方するが、時間とともにアルツハイマーはやがてレビー小体型認知症や混合型認知症など、他の状態に変化する場合が多いようです。

しかし、医師がこの変化についていくことができない、あるいは本来認知症は変化していくものだという知識がない。だからいつまでたってもアリセプトを処方し続ける。そうすると、本人の症状を悪化させたり危険な状態に追い込んでしまうことがあるのです。

介護者や家族が薬を加減する(家庭天秤法)

結局のところ、「認知症本人を常に一番よく見ている介護者や家族が治療を担っていくしかない」と河野先生は説いています。

薬の量・配分を家族が調整する「家庭天秤法」という方法がこれです。

ただでさえ苦労を強いられている家族が「治療の一端を担うべき」と言われると、大変過酷なように聞こえます。

しかし仮に、認知症のことをよくわかっていない、あるいは本人の状態をよくわかっていない医師にかかって症状が悪化したとしたら、家族の負担や苦しみもさらに大きなものになります。

そう考えると、家族が本人の観察や薬の配分を担うのも、それを回避する術かもしれません。

症状が悪化するときは「薬を減らす、やめる」

間違った診断・処方で認知症が「悪化する」場合には、薬を減らすかやめることも必要だと、河野先生は説きます。薬は上手に使えば役に立つが、使い方を誤ると悪化させたり認知症本人を危険な状態に追い込むことがあるといいます。

そういう場合には、薬そのものに問題があるというよりも、処方する医師に問題があるということのようです。

コウノメソッドの薬物療法マニュアルは一般公開されている

コウノメソッドのコンセプト、具体的な薬のマニュアルは一般公開されています。常に更新され続けているため、最新の情報を名古屋フォレストクリニックサイトにて確認し、ご覧ください。
2016年1月現在の最新版はこちらです

コウノメソッドのコンセプトをごく端的に言うと、以下のとおりです。

  • 薬の副作用を出さないために、介護者が薬を加減する(家庭天秤法)
  • 患者と介護者のどちらかしか救えないときは介護者を救う(介護者保護主義)
  • 記憶を良くすることより、穏やかにさせる薬を優先する
  • 安全で高い改善率を示す処方を選ぶ
  • 薬と同じかそれ以上に効果があるサプリメントも併用する

本人の状態を安定させれば、家族は本人に振り回されることも少なく介護できると言います。

大切なのは、「家庭の平和を取り戻すこと」だと河野先生は説きます。認知症の人は介護する人や家族がいないと生活できないので、家族を助ける治療でないと意味がない、というのです。これがコウノメソッドの考え方です。

コウノメソッドの診察を受けるには

コウノメソッドの診察を受けるには、名古屋フォレストクリニックに行く以外に、全国のコウノメソッド実践医に見てもらうという方法があります。

コウノメソッドは「漢方医学」に似ている

コウノメソッドは体のバランスを整えることがコンセプトにあるため、「漢方医学」に考え方が似ていると言われます。余計なエネルギーがあれば(陽のエネルギー)それを抑えて、エネルギーが不足していれば(陰のエネルギー)それを補うことにより、体全体のバランスを整えて健康体(中間証)にする、という考え方です。

局部的に原因を見つけ出してそれを取りのぞこうとする現代医学の考え方とは違う、ということです。

コウノメソッドの書籍

コウノメソッドについての書籍(一部)です。詳しく知りたい方はお読み下さい。

<書籍データ>
認知症は治せる 奇跡が起こる「コウノメソッド」
発売日:2011年12月
著者/編集:河野和彦
出版社:マキノ出版
サイズ:全集・双書
ページ数:220ページ
9784837612353

<書籍データ>
認知症治療28の満足
発売日:2009年11月
著者/編集:河野和彦
出版社:女子栄養大学出版部
サイズ:単行本
ページ数:199ページ
9784789551298