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コウノメソッドで使用する薬

コウノメソッドで使用する薬

認知症を「治す」ための治療法(薬物療法)に、「コウノメソッド」があります。すでに多くの認知症の人やその家族がこの療法に救われているようです。河野先生の書籍の内容などを元に、その要点を紹介します。


【コウノメソッドで使用されている薬とサプリメント】

河野先生は、認知症の中核症状(記憶や判断、見当識の障害:認知症ではほぼ必ず現れる認知機能に関する症状)よりも、周辺症状(行動・心理症状とも呼ばれています。興奮、暴力、徘徊、妄想等)が介護者の負担を大きくすることを重視し、周辺症状を抑えることを優先して薬の処方を行うようです。

中核薬(中核症状の薬)は微量ずつ調整

認知症の治療薬の中では最も古くから使用されている以下のような薬があります。

  • アリセプト(一般名:塩酸ドネペジル。日本では1,999年発売)
  • レミニール(ガランタミン)
  • リバスタッチ(リバスチグミン)
  • メマリー(メマンチン)

当サイトでは、認知症の薬について詳しく説明しています。

河野先生は、製薬会社から示された規定ではなく、患者の体との「対話」により中核薬の処方量を決めるようにと、コウノメソッドの実践医に助言しています。

中核薬には、患者を興奮させる可能性もあり、介護者の負担を必ずしも軽減させるとは限らないようです。

4つの中核薬にはいずれも副作用が出る可能性があるので、最初は少量から服用し、徐々に増量していくという規定が製薬会社からは示され、増量するほど中核症状が改善するという統計結果も示されているそうです。

しかし、河野先生はこの統計結果には異論を唱え、一定量以上増量すると逆効果になることを指摘しています。

患者に本当に合った量を、微量ずつ調整して処方するべきと唱えます。

抑制系薬剤により陽性症状を抑制する

暴力、興奮、怒りっぽい、徘徊等、本人のエネルギー過剰による周辺症状(陽性症状)を抑制し、介護者の負担を軽減する薬について見ていきましょう。

【グラマリール(チアプリド)】

1987年に発売された抗精神病薬で、高齢者への処方に適している3つの特徴があります。

  1. 体に作用する時間が短く体内に蓄積しない
  2. 肝臓にあまり負担がかからない
  3. 鎮静作用が強くない

何種類もの薬を服用していることが多い高齢者の場合、肝臓で薬を分解する機能が低下している場合もありますが、グラマリールは主に腎臓で分解されて体外へ排出されるため、肝臓への負担が非常に少ないそうです。

また、鎮静作用が強過ぎるとふらついたり転倒したりするリスクが高くなりますが、グラマリールは比較的リスクが低いと言えます。

認知症の周辺症状により興奮したり攻撃的になったりしている状態では、脳の中脳辺縁系という部分でドーパミンが活発になり過ぎているそうです。グラマリールは、ドーパミンの働きを抑えることで興奮等を鎮める働きがあります。

グラマリールは穏やかに作用する薬であるため、副作用も少ないようですが、ドーパミン不足による副作用が出ることが稀にあるそうです。錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう:体が震えたり、そわそわして落ち着かない状態)や高プロラクチン血症(体内のホルモンのバランスが崩れて起きる、性機能障害等)が、副作用として挙げられます。

【抑肝散】

抑肝散は、漢方薬のひとつで、当サイトでも詳しく説明しています。

抑肝散という名前からは、肝臓の機能を抑える作用があるのではないかと考えてしまいそうですが、東洋医学で言う「肝」は西洋医学における肝臓とは異なるもので、抑肝散には感情をコントロールする作用があるとされています。

【ウィンタミン(クロルプロマジン)】

グラマリールと同じ抗精神病薬ですが、興奮を抑える強い鎮静作用があります。1955年に発売されました。

ドーパミンを抑える作用に加えて、セロトニンを抑える作用もあります。興奮が強く自分で服薬できない人には、筋肉注射による投与ができるそうです。

副作用が多いのがウィンタミンの難点で、ふらつきや眠気、便秘や体重の増加が見られるそうです。比較的最近になって発売された抗精神病薬と違って、発熱や不整脈等の重い副作用が出てしまうことも稀にあるそうです。他の薬との併用を行う等、慎重に処方されるべき薬であるようです。

河野先生は、中核薬の減量または中止をすることが、陽性症状を抑えるためには必ず必要であるとし、中核薬に抑制系薬剤をそのまま追加するのは間違った方法であるとしています。 抑制系薬剤が多過ぎると、過鎮静(意識がはっきりしなくなったり、眠りがちになったりする状態)になってしまうようです。

興奮系薬剤は、陰性症状を解消するために使用する

うつ状態、言葉を発しない、体を動かさない等、本人のエネルギー欠乏による周辺症状(陰性症状)を解消するための薬について、見ていきましょう。

【サアミオン(ニセルゴリン)】

サアミオンは、1988年に発売された「脳循環改善薬」ですが、最近では、脳梗塞を患った人の意欲が向上し、活気が出ることを目的に使用されることもあるそうです。

【シンメトレル(アマンタジン塩酸塩)】

この薬が発売されたのは1975年で、パーキンソン病の治療薬として使用されていました。ドーパミンの量を増加させる働きをします。

一時期、インフルエンザA型の治療にも使われていたことがありました。サアミオン同様、脳梗塞を患った人の意欲向上を目的として、1987年から使用されるようになったそうです。

このように、全く別の複数の病気に効果がある薬は他にもあるようです。 副作用として、発疹、排尿障害、むくみ等があるとのことです。 肝臓ではなく腎臓で分解されて体外へ排出される薬であるため、腎障害が起きることもあるそうですから、もともと腎臓に重い障害がある場合は服用できないそうです。

河野先生が「シンメトレルロケット」と名付けた処方があります。シンメトレルを通常よりも多く服用することで、覚醒アップを目指す方法ですが、興奮する等の副作用が出ることがあるようです。

コウノメソッドで使用を禁止している薬

  • 三環系抗うつ薬:日常生活で、食事、排泄、入浴等の基本的な行動をすることに支障が出るため
  • ボルタレン座薬:急性腎不全を起こすことがあるため
  • 当帰湯:体調が悪化することがあるため
  • レメロン、リフレックス:寝たきりの状態になることがあるため

上記の他にも、トレリーフ、エフピー、ミラペックス、リポバス、カバサール、コデイオ、ディオバン等の使用を禁止しています。

認知症の薬に関する事例

アリセプト(ドネペジル)を中止したら穏やかさを取り戻した(70代、女性)

神経内科でのうつの診断に加え、物忘れや被害妄想も現れたことから、長谷川式スケールのテストを受けてアルツハイマー型認知症との診断を受けました。

医師から処方されたアリセプト5mgをずっと服用していましたが、不穏な状態になることが増えたため、神経内科とは別の医師から処方されていた安定剤がどんどん増量されました。

入居していたグループホームの職員と相談してアリセプトを中止し、穏やかな状態に戻ることができました

アリセプトの処方そのものや量が不適切であった可能性に加え、複数の医師から処方を受けていて、医師相互で処方の内容を共有することもなかったことが、この女性や周りの人を苦しめることに結びついたと考えられそうです。

アリセプト5mgの服用により、自分で座っていることもできなくなった(80代、女性)

精神科医によりアルツハイマー型認知症との診断により、アリセプト5mg、メマリー10mgを1年ほど服用していました。

しかし、自分で姿勢を保って座ることができない上、すぐに意識がもうろうとするため、精神科ではない別の医師がアリセプトを中止してメマリーだけを継続したところ、座ることができるようになり、しっかり目を開けて返事もするようになりました。

アリセプトを中止した医師は、認知症の中核薬が却って有害になる可能性があることも理解していたようです。

今後、別の薬を使うことを検討するとしても、薬の増量規定に従わねばならないことを考えると、この女性が同じ状態に陥ることを懸念し、適量の薬の処方が認められるようになれば、最善の治療が可能となることを痛感しているとのことです。